2025.03.16
2025年3月8日(土)・9日(日)に福岡の中心地である天神地区で行われたサーキットフェス「TENJIN ONTAQ(読み:テンジンオンタク)」は、今年で開催10年目を迎えた。
「LIVEHOUSE CB」「LIVE HOUSE Queblick」「LIVE HOUSE OP`s」「public space 四次元」「Keith Flack」「graf」「The Voodoo Lounge」「public bar Bassic.」の8会場で行われた本イベントは地域の活性化やインディーズバンドの後援など、様々な要素を担う重要なイベントである。
全国から集まった135組のアーティストによる熱いライブに加え「下北沢にて」とのコラボステージが開催されるなど規模感も例年以上に拡大。
本稿では、9日(日)に出演した6組のアーティストを紹介していく。なお数多くのアーティストが本イベントに出演していた都合上、全てのライブを網羅することは叶えられなかったが、今回来られなかった方々に「来年のONTAQに行きたい」と思うようなレポートであれば幸いである。
2020年3月に結成した埼玉県発の4ピースバンド「ペルシカリア」のステージは、LIVEHOUSE CB にて1曲目『黎明』で幕を開けた。
“さよならを言おう 過去に手を振ろう”そう、力強く歌う矢口結生(Vo/Gt)の声は、真っ直ぐ心の奥底に届いてきた。曲が終わり、彼は観客に向け「集まってくれて、目の前にいてくれてどうもありがとうございます!」と感謝を述べ、2曲目『右手』に続く。
「何も無い街からライブをしに来た!つまりどういう事か!今日が大チャンスって事だよ!」と純粋な熱をハートに宿す矢口結生のシャウトは、LIVEHOUSE CB にいる満員の観客に一人残さず届いた様に感じた。
「ペルシカリア」の思いを受け、我々もそれに応える。ペルシカリアにとってこのライブはある意味、戦いの様にも思える。どちらの熱が上回るか、声を枯らしながら叫ぶ彼の声に負けず観客は声を上げ、拳を掲げる様子が目立った。
「絶対また来るから!不器用でも何か一個でも受け取って帰って欲しい!」と叫び、6曲目『優しい人』最後の曲に『タイムオーバー』を披露し、ペルシカリアは全てを出し切った。
彼らの真っ直ぐな思い、混じり気のない純粋な本気に我々は拳で応えた。
2006年結成の4ピースバンド「バックドロップシンデレラ」は開始早々、でんでけあゆみ(Vo)のダイブでライブが始まった。アップテンポな曲が中心の彼らの楽曲は、自然と観客が入り乱れ楽しむ姿が序盤から LIVEHOUSE CB を支配した。
一気に熱を高めた1曲目『台湾フォーチュン』から、2曲目の『2020年はロックを聴かない』に続き、次第にモッシュの輪が広まっていくのを肌で感じた。
“皆の不安 吹き飛ばせるようなまぁ最高なライブを 今こそやらねばならんのに”と歌うでんでけあゆみは、その言葉通りのライブを実現。ファンの期待を裏切らず、その期待の上の上を行く。
満員の観客は、不安を一切感じさせない見事な暴れっぷりで、「バックドロップシンデレラ」に応えようとしている様子が見て取れた。この光景が日本全土に溢れれば、きっと明るい未来が待っている。そう感じさせるほどの絶対的な安心感を感じつつ、3曲目の『フェスだして』に続いた。
(これは余談だが、天井にぶら下がるパフォーマンスにはしっかりとした理由がある。それは天井付近の空気が薄い為らしい)
日本全土にこの光景が広まることを願いつつ、彼らのライブは『さらば青春のパンク』によって締められ、熱狂と大量の汗を持ち帰った。
2015年に結成した名古屋発の3ピースバンド「Maki」から山本響(Vo/Ba)が public bar Bassic. に登場。リハーサルの時点から弾き語りでヒットソングをカバーしたりと観客を楽しませた。
観客との距離が近いこの場所で「みんなお酒飲んでる?無くなったらじゃんじゃん注ぎに行っていいからね!」と挨拶がてら、和やかな雰囲気を作る。彼の演奏は、1曲目『ストレンジ』のレゲエバージョンで始まった。彼の弾くサウンドと芯のある歌声に観客は、お酒を飲みながら思い思いに揺れた。
山本響のアレンジも相まって、いつものライブとは違う楽しさを堪能できた。そんな彼の演奏はまだまだ続き、3曲目に『Lucky』を披露。
4曲目には観客からのキーワードを受け取り、その場限りの即興ソングを歌い、観客を盛り上げ、朗らかに歌う彼の表情には純粋な音楽への愛と、歌う事の楽しさがにじみ出ていた。
最後に『白』を歌い始めたが「やめよう!斜陽やるわ!」と急遽『斜陽』を披露。「この即興性が音楽だと思ってる、残り2分で全て示すから!」と音楽の在り方を示し、山本響の弾き語りは幕を閉じた。
桃色ドロシーのライブは Kieth Flack にて『ライブハウス』で始まった。桃色ドロシーが魅せるパフォーマンスは、単純な経験則では測れない爆発力を持ち、観客に力強いインパクトを植え付けた。
3曲目には『好き嫌い』を披露。好き嫌いをせずに大人になり、同時に世界は無色に見えた痛烈な経験を見事に楽曲として昇華した。”好き嫌いをしてこそ世界は色付き出す”自身の経験を基に紡ぐ言葉たちには何よりの説得力があり、それは我々の心の奥底に眠る衝動を駆り立てた。
その後も『月明かりを進め』『Re;プロローグ』と立て続けに披露。彼女たちが我々に届ける言葉の一つ一つには気づかなかった衝動や、気づこうとしてこなかった本心を思い出させてくれる何かがあると確信した。
最後に『ネバーランド』を披露。この楽曲は、不確定な未来と現実との対比の中で葛藤を続けながらも、明日への希望を見出そうとする強い気持ちが溢れているように感じる。彼女たちが思い描くネバーランドにはきっと様々な色や音が溢れているのだろう。
“大丈夫 その言葉で世界が壊れた” “大丈夫 あの言葉は世界を救った”
この言葉が優しく胸に浸透し、少しだけ私は救われた気がした。そうして桃色ドロシーのステージは笑顔で幕を下ろした。彼女たちの言葉はいずれ日本中に波及し、鮮やかな桃色で色付くだろう。
東京のハイブリッド・シティロックバンド「WHISPER OUT LOUD(読み:ウィスパーアウトラウド)」が、LIVE HOUSE Queblick に堂々の登場。ONTAQ 初出場となる彼らから放たれるオーラは、リハーサルの時点から何かが始まる予感と期待に満ち溢れていた。
1曲目『Magic』から Motokichi(Vo)のクールな歌声と、ハードなギターリフ、メロディックなベースラインで完成度の高いパフォーマンスを披露する。まさにウィスパーとラウドが共存するステージングを魅せつけ、観客を圧巻していく様は、見ていて清々しいほどに爽快だ。
MCでは「今日はONTAQで一番やばい音楽を届けるつもりで東京から来ました。最後までとことんぶちかましていくんで、くらって帰ってください」と語り、後半戦の『Face My Fate』へと続く。
最後の『Memories』でも、多彩な表情や高い音楽性を感じるパフォーマンスを披露しステージを降りた。
2025年4月9日(水)に自主企画 「KEYS IN PURPLE extra show」が渋谷CYCLONEで開催される。その圧倒的なパフォーマンスと爽快な楽曲を見届けにいくのはどうだろうか。
公式:https://linktr.ee/whisperoutloud
2013年に結成し、大阪を中心に活動する4ピースロックバンド「アルコサイト」のライブは、LIVE HOUSE OP`s にて『迎え酒』で始まった。「俺らのロックでベロベロになって帰ってくれー!!」と叫び、観客を沸かせる。
2曲目に『髪を切って』を駆け抜けるように全速力で演奏した。間髪入れずに「ONTAQサイコー!!でもドキドキとワクワクが足りねー!」とシャウトし『TEENNAGE KICKS』を披露。アルコサイトのスタッフが勢いよくダイブし、会場の盛り上がりに拍車をかける。
MCでは「地元にこんなサーキットフェスあるなんてホンマ最高なことやぞ!全国に誇れるわ!すれ違う人みんな笑顔やしホンマ最高やな!」と、かけがえの無い今という歓びをアルコサイトと共有し、その後も立て続けに『スーパームーン』『オリオン』を披露した。
「もしみんなの中に言葉にならない孤独を抱えてる人がいるなら俺たちと一緒に歌おうぜ!俺らでアルコサイト!みんなでかまそうぜ!」と北林英雄(Vo/Gt)が観客に熱い思いを叫び『Life goes on』を熱唱。
熱はさらに高まりを続け、2025年4月22日に発表されるミニアルバム『UNTAMED』に収録されている『Forever Young』を披露した。
最後に『嘘をついて』でトリを見事に締め括る。会場ではアンコールの歓声が鳴り止まず、再度『Forever Young』を熱唱し歓喜と熱狂に満ちた彼らのライブが終了した。
主催:TENJIN ONTAQ 実行委員会
企画/制作/運営:株式会社PROJECT FAMIRY
協力:TOWER RECORDS福岡パルコ店 アミュプラザ博多店 / LOVE FM / 六本松 蔦屋書店
▼ DigOut編集部より
ONTAQの熱気は伝わっただろうか!イベント1日目のライブレポートでは14組のアーティスト様をレポートしています!1日目の記事でも興奮と熱狂が詰まったライブにたくさん潜入してきたので併せてチェックしてみてほしい!