<ConceptPlaylist #6>「バルコニーとカウチ」

<ConceptPlaylist #6>「バルコニーとカウチ」

2025.05.20

DigOut編集部のよしおが選んだ楽曲たちをプレイリストにし、それに合わせて空想の物語を短編小説に昇華しました!

“音楽を通して物語を楽しむ”をモットーに作った「Concept Playlist」

今回のConcept Playlistでのオススメシチュエーションは、天気のいいお昼過ぎのバルコニーですかね…

カウチなんかが置いてあったら最高かなと思います。

何も予定のない休日に、ゆっくりと自宅で過ごしたいあなたのために用意させてもらいました。良い昼下がりをお過ごしくださいませ。

次はConcept Playlist#7でお会いしましょう。

バルコニーとカウチ

イスの上に置いた灰皿と短編小説。

バルコニーのカウチに腰掛け、一服。こんな天気の良い日は気ままにうたた寝。

煙草の煙が空にほどけていくのを眺めながら、ページを捲る指が時折止まる。読み進める気分より、今日の光を浴びていたい気持ちの方が少しだけ勝っていた。

風がシャツの隙間をすり抜け、リネンのカーテンを揺らしていた。

とくに意味のない午後。それがいい。

短編の中の誰かの出会いも、別れも、どこか遠い世界の出来事のように思える。

目を閉じると、陽光がまぶたの裏に赤く広がる。うたた寝という言葉の通り、意識がゆるやかに輪郭を失っていく。

まるで自分自身が、物語の行間に溶け込んでいくようだった。

気がつけば、煙草は灰となり、ページは風に揺れていた。夢か現実か、そんな境界線を行き来する午後。思い出のように曖昧で、温かい時間。

今日もまた、物語を一つ読んだ。

きっと明日には内容を忘れてしまうけれど、この光と風の感触だけは、どこか心の奥、片隅に残り続ける気がした。

この記事を書いた人

執筆
高島よしお
1997年生まれ/東京都出身 趣味は「フィクション」と「散歩」 年間通して映画を平均400本観ます 音楽は平均1200時間聴きます