2025.05.06
DigOut編集部のよしおが選んだ楽曲たちをプレイリストにし、それに合わせて空想の物語を短編小説に昇華しました!
“音楽を通して物語を楽しむ”をモットーに作った「Concept Playlist」
#4の「Concept Playlist」の題名は『Bubble In Tokyo』
オススメのシチュエーションは、“臭いウィスキーを片手に持ちながら”です。
恐らく、「臭いウィスキーってなんだ?」って方が殆どでしょう。簡単に説明しますと“燻製された”スモーキーな味わいが特徴的なウィスキーを指します。
有名な銘柄だとラフロイグ、アードベッグ、ボウモアでしょうか。他にもたくさんの銘柄が存在しますが、バーで常時取り揃えているのはこの三つかと思いますので比較的、口にしやすいかと思います。
そんな“臭いウィスキー”を片手に、このプレイリストを流せば、あら不思議!あなたの自宅、もしくは友人宅が上質なバーに大変身。少し灯りを落としてお酒と音楽に身を委ねてみませんか?
ついでに用意した短い物語も楽しみつつ…では良い夜を。
次はConcept Playlist ♯5でお会いしましょう。
様々な色で輝く都会“銀座”。背広を肩に羽織り女を連れ千鳥足で歩く会社員、反対の道路には煌びやかに光る腕時計をちらつかせた金縁の若者。
厚化粧に鼻につく香水を纏い酔い潰れた女を横目に、ディスコを周った。抱けない女に色目を使い、金を散財する友人たちを置いて、ひとり地下のバーへと足を運ぶ。
店にはマスターが一人に、外国人の若い男女。それと奥のカウンターに座っている女性がいた。
マスターに酒を頼み、内ポケットから煙草を取り出す。マッチを擦ると、白い火が一瞬だけ静寂を破り、また闇に溶けた。
灰皿を出し、マスターが一言「お一人ですか。」
静かに頷いた後、静かに音楽がフェードインする。サックスの音がまるで、遠い昔の約束を思い出させるようだった。
ここで夜を明かそう。しばらくしてそう呟く。
ウイスキーのグラス越しに、奥の女性と一瞬、視線が交わる。何かを語りかけるようでいて、何も求めていない瞳だった。
会話をするわけでもなく、ただ互いに沈黙を受け入れる。その静けさが心地よかった。
窓のないその空間で、時間だけがゆっくりと溶けていく。
やがて時計の針は午前二時を差し、街は少し冷たくなった。
87年、週末の寒い夜。