Live Report
mol-74 presents「9.9 to 10 -YouTube」
2024.09.12
2024年9月9日(月)に東京の『新代田FEVER』で、mol-74主催のワンマンライブ mol-74 presents「9.9 to 10 -YouTube」が行われた。
mol-74のYouTubeチャンネル登録者が10万人突破を記念して行われた今回のライブ。チケットは開演前にSold Outされており、平日にも関わらず多くのファンが彼らの音楽を求めて来場していた。
たった1曲で、ライブハウスからmol-74の世界に変わる。
1曲目は『Replica』
「ハッピーエンドじゃ物足りなくなって」
アニメ『ブルーピリオド』のエンディングテーマに採用されているこの楽曲で幕を開けた。
生きていくなかで見える景色が変わっていく。現状の葛藤と、未来への不安を抱えて生きていく我々を表現しているようだ。
武市(Vo)の綺麗な歌声が壮大に曲の世界を広げていく。2番のAメロでは坂東(Dr)のフロアタムに合わせて、髙橋(Ba)の重量を感じるベースラインがフロアを包む。
「それからさ、明日に夢を見よう」
「剥がれていくレプリカ 今、脈打っていく」
『自分らしさ』をステージに立つ4人から音に乗せたメッセージのように感じた。
たった1曲で、ライブハウスからmol-74の世界に変わる。
”mol-74です。いい夜にしましょう”
暗闇の中で光が見えたように
2曲目は『Renew』
ここからは武市(Vo)がアコースティックギターを持つ。
歌声と歌詞、サウンドの融合に情景が浮かび鳥肌が立つ。例えるのであれば、夜から朝を迎えるように、冬から春がくるように、暗闇の中で光が見えたように。
彼らの音楽は我々の「光」のような存在なのだろう。
シンセサイザーの音色が広がる中で軽快なドラムとベースライン。特に、井上(Gt)の奏でるリバーブのきいたギターソロが印象的だ。
「たった今、はじまった 僕らの光」 ライブハウスの暗闇の中で光る彼らは間違いなく我々にとって光のような存在だった。
目を閉じると雪景色が広がっていた
”YouTubeの登録者数10万人になりました。
記念のライブということで、お互いいい時間にしましょう。
よろしくお願いします。”
曲間でも井上(Gt)の奏でる空間系の音色で世界観を構築していく。
3曲目の『不安定なワルツ』4曲目の『赤い頬』が続く。
特に4曲目の『赤い頬』はサウンドが日常のどこかで漂う冬の音に感じた。
井上(Gt)のギターの音色に取り込まれそうになり、坂東(Dr)のフロアタムで現実に戻される。
9月だというのにどこか寒く感じてしまう。目を閉じると雪景色が広がっていた。
「濁した声と白い息が混じる」
冬を連想した静かな世界観の中で、アウトロの髙橋(Ba)のベースラインで自然と身体が跳ねてしまうとても不思議な空間だった。
この曲は初見で、ライブ後に「赤い頬」というタイトルを知ったのだが、なんという洒落たタイトルなのだろう。冬の寒さで赤くなった頬を連想させる世界観にはため息がでる。
ライブで曲を聴いた後にタイトルを知った自分は「他のリスナーとはまた違った出会い方をしたのだろう」と、帰路の井の頭線で優越感に浸った。
歌の中の人物には、どんな景色が広がっているのだろうか
続くのは『アルカレミア』と『Answers』。
『Answers』ではドラムのスネアが足音のように、未来への希望の物語が進んでゆく。
「あの頃見上げていた未来は星みたいに綺麗で掴めなくて無数の光を放っていた永遠のようだった」
「胸は騒いでいる」
特に耳に残ったこの歌詞はライブハウスに立っていながら、何か映画を見ているような感覚だった。
歌の中の人物には、どんな景色が広がっているのだろうか。 そんなことを考えながらライブレポートを書いている今でも『mol-74』に浸っている。
僕たちを知ってくれる機会となった曲を
”僕たちを知ってくれる機会となった曲を。エイプリル。”
10年以上前に開設したYouTubeで、多くのリスナーがmol-74を知ったきっかけとなった曲と武市(Vo)は言った。タイトルコールの後の盛り上がりで、FEVERに集まったリスナーの中で特別な曲なのだと肌で感じた。
エイプリルを聴いているなかで、武市(Vo)のMCから10年前の自分を重ねた。
「奇跡のように出会って 必然のように別れて」
昔の情景が浮かぶ。
「エイプリル 僕は変わった?」
果たしてどうなのだろうか。あの頃より歳を重ねた今の自分は、相手にはどんな風に映るのだろうか。自分の中で記憶にこびりついている苦い思い出や甘酸っぱい青春がフラッシュバックしていた。
彼らの音楽はここに立っている1人1人を物語の主人公にしてくれる。 エイプリルが奏でられていたあの5分間で、何百もの物語が客席に描かれていたのだろう。
YouTubeチャンネル登録10万人に感謝
”10万人、嬉しいです。皆さんのおかげです”
暖かい拍手が会場を包む。
メンバーも含めて10万人達成したことに対して語り始めた。
今回のライブのギリギリまでメンバーもリスナーも達成するように活動をしていたようだ。
”金の盾はごめん。心折れてます。笑”
武市(Vo)の一言で笑いが起こり、会場を温めてゆく。
初めて会ったのがステージの上ではあるが、会場の空気から普段の人柄が見えた。
普段から大事にしているものや景色を曲に乗せているのだろう。 演奏中の幻想的な世界観と反して、壁を取っ払ったMCがとても印象的で、メンバーとリスナーの間柄はまるで家族のような暖かさがあった。
1番嬉しいのは間違いなく彼らだったのだろう
”お祝いっぽい曲をやります”
武市(Vo)の言葉から『%』と『0.1s』が続いた。
これまでの曲とは変わってハイテンポでポップな曲調で、ステージ上のメンバーの笑顔も増えていた。
9曲目の『0.1s』は爽やかな曲調で軽快なスネアが印象的な曲だ。
mol-74の楽曲は手を引っ張るわけではなく、肩を組んでくれて、話を聞いてくれながら優しい笑顔で一緒に歩いているような感覚になる。
「止まらない一瞬を逃さないように」
ファンの手が上がるなか、メンバー同士で目が合って笑い合っていた光景を見た。
誰よりもmol-74の音楽に向き合い、時には失敗をして、それでも音楽を愛して。
その一瞬を、4人は奏で続けていた。 もしかしたら我々に向けて歌っていたこのフレーズは、mol-74自身が1番実感していたのかもしれない。
mol-74は優しく語りかける
武市(Vo)がエレキギターに持ち替えて始まったのは、10曲目の『Teenager』。
軽快な坂東(Dr)のドラムと、井上(Gt)の爽快なギターリフのイントロが心地いい。
「心が叫ぶ方へ」
生活をしているなかで、「なにか忘れてしまったのではないか」と考えさせられてしまう。
彼らは決めつけたりはしない。ありきたりな答えを押し付けるわけでもない。
ただ、寄り添って「君ってこんな感じじゃなかった?」と優しく語りかけてくる。
人生の全てとまではいかないが、何かのきっかけで、どこかのタイミングで、mol-74が背中を押し続けて生きている人は沢山いるのだろう。
「未来より」
mol-74の楽曲は十人十色の人生にスッと浸透して感動を生んでくれる。 アウトロのバンドの盛り上がりと楽曲のメッセージが胸にリンクしていく感覚があった。
再生の朝に
”次の曲でYouTubeを見てくれる人とはお別れとなるんですけど。”
今回YouTubeでライブを生配信しており、次の曲が配信では最後の曲となるようだ。
YouTube配信最後の曲は『Saisei』だった。
髙橋(Ba)の暖かみのあるベースのアルペジオからなるイントロが幻想的だ。
『Saisei』を聴いて「なんて等身大でポジティブな曲なんだ」と感じた。
不安や悩みがない人間なんていない。
何かで濁すことはできても、不安自体を取り除くことはできない。
だが、それでいいのだろう。
「再生の朝に」
自分自身で無理矢理に決めつけて不安を忘れたフリをするよりも、ゆっくり時間をかけて、受け入れて朝を待つように眠る。
乗り越えて、再生する。そんなことをmol-74が伝えてくれたような気がした。
アウトロに差し掛かると、バンドの迫力がさらに増していく。 髙橋(Ba)のベースのアルペジオだけが響くなかで、次の物語の始まりのようなものを感じた。
2度と出会えないセットリスト
”会場行ってよかったって思ってくれる曲をやろうと思ってます。”
”2度とやらないセットリストになると思う。他のアーティストさんに楽曲提供した曲たちをお届けできたらなと。”
日頃からmol-74のライブに来ているだろうファンからも声が上がった。
『氷菓(CYNHN楽曲提供)』『月夜 (airattic楽曲提供)』 『ことばのこり (Sou楽曲提供)』の3曲を初めてmol-74がセルフカバーを披露した。
『氷菓』が演奏されると横にいたファンが笑顔で頷いているのが印象的だった。
3曲目の『ことばのこり』が終わった後に
”歌詞もグダグダでメンバーも笑ってましたね。”
と武市(Vo)が笑っていたが、普段から歌っているのではないのか?と思うほどの綺麗な歌声だ。
バンドサウンドも完成されており、mol-74の世界観として確立している。 YouTube配信のセットリストの中とはまた違ったファンの柔らかい表情があり、普段では見ることの出来ない秘境の景色を見たような、特別な空間だった。
mol-74の”きっかけ”となった曲
”高校生の時に坂東(Dr)と出会ってバンドを組んだんですよ。
女の子にモテますようにと願いをかけて『スカートチェイサー』と名付けたバンドをやってました”
武市(Vo)と坂東(Dr)は高校生の時に出会い、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのコピーバンドをしていた。
3年生の段階ですでにオリジナル曲を作っていていた様だ。
その時に武市(Vo)が人生で初めて作った曲。
mol-74の”きっかけ”となった曲『足跡のない世界』。
当時、違うバンドをしていた井上(Gt)がmol-74に加入する”きっかけ”となった曲。
高校生が作ったとは思えない楽曲だった。
もちろん現在のメンバーのスキルもあるのだろうが、すでにmol-74の原型が出来上がっている。
『足跡のない世界』を作っていた当時の武市(Vo)は今この景色を想像していたのだろうか。
『足跡のない世界』を聴いたメンバーたちには当時、どのような光景が広がっていたのだろうか。
人生を”音楽”に賭ける”きっかけ”となった曲。
武市(Vo)に対してなにか特別なものを感じ、彼を信じたのだろう。
そして、このFEVERの景色が、4人が信じて活動してきた素晴らしい結果だ。 会場は大盛り上がりで、拍手が広がった。
リライトして
”フロアに3人くらいしかいない記憶が蘇りました。”
武市(Vo)は笑いながら客席を和ませる。
”mol-74の歴史みたいなものを知ってほしいなって、僕らが初めてコピーした曲もやっていいですか?”
聴き覚えのあるイントロが流れる。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『リライト』だ。
この曲からmol-74は始まったのだ。
アジカンファンの高校生が、コピーバンドをする。至って普通の出来事が、彼らを生み出した。
そこから才能が開花して、10万人の登録者を抱えるバンドとなっている。
楽しそうに笑顔で演奏する4人を見て、当時の彼らを想像した。
自分には想像できないほどの苦難がmol-74にはあったのだろう。
ここまで活動が続けられたのは、楽曲の素晴らしさもあるのだろうが、それを超えて4人の関係値が大きいのだろう。
”音楽”というビジネスのパートナーの前に、大切な友人なのだ。 ステージで『リライト』を笑顔で演奏している姿は、いい意味でmol-74には見えなかった。
記念の最後は新曲初披露
最後に現在はYouTubeで公開していない楽曲『八月の映画』が披露された。
ノスタルジックでどこか寂しさが残るナンバーだ。
最後の曲である『八月の映画』を聴いているなかで、まるで友達の実家に遊びに来たような感覚になっていた。
初めてライブに参加した自分でさえ1曲目を懐かしく感じ、mol-74の痕跡を実感していた。
初めて会った気がしないような、昔からmol-74を知っていたような、そんな距離感だ。
演奏を終えてステージから出ていくメンバーに向けて拍手が鳴り止まない。
アンコールを願うファンからの拍手にmol-74は答えた。
ライブ当日の9月9日は井上(Gt)の誕生日だったようで、誕生日ケーキのサプライズがあった。
「ハッピーバースデー」とライブハウス全員が祝福する。本当に暖かい空間だ。
アンコールでは、9月18日に2ヶ月連続デジタルリリースの第1弾となる『脈拍』が披露された。
タイトルと歌詞と楽曲が混ざり合い、mol-74の世界観を存分に体感できる楽曲だ。 ぜひ、チェックして欲しい。
mol-74のライブとは
今回mol-74の歴史を知り、今現在の彼らを見ることができた。
初めて参加したのだが、置いていかれることはなく、スッと世界観にのめり込むことができた。ステージの先は違う世界のようで、そこには様々な物語があった。
特に印象に残ったのは、ファンの表情だ。
じっとステージを見つめ、自分らしく楽曲に没頭していた。
mol-74に手を上げて答える表情は柔らかく、笑顔が多かった。
ライブハウスからの帰路は、本を読み終えたような、映画を観終わった後のような、旅行から帰ってきたような満足感だった。 ぜひ、mol-74の特別な世界観をライブハウスでも体感してほしい。
カメラマン:上原 俊
衣装:CURLY
DigOutライブレポート:渡邉 哲哉
セットリスト
2024.9.9 mon. mol-74 新代田FEVER
mol-74 presents「9.9 to 10-YouTube」
YouTube 無料配信パート
M1. Replica
M2. Renew
M3. 不安定なワルツ
M4. 赤い頬
M5. アルカレミア
M6. Answers
M7. エイプリル
M8. %
M9. 0.1s
M10. Teenager
M11. Saisei
会場限定パート
M12. 氷菓(CYNHN提供楽曲)
M13. 月夜(airattic 提供楽曲)
M14. ことばのこり(Sou提供楽曲)
M15. 足跡のない世界
M16. リライト(ASIANKUNG-FUGENERATIONコピー)
M17. 八月の映画
M18. 脈拍(2024.9.18 Release new single)
mol-74 2ヶ月連続デジタルリリース 1曲目
「脈拍」
・作詞:髙橋涼馬
・作曲 / 編曲:mol-74
2024年9月18日(水) デジタルリリース
Pre-add / Pre-save はコチラ
https://lnk.to/mol-74_myakuhaku_paps
mol-74「Φ」release tour 東名阪ファイナル
・10/25 (金) 名古屋:JAMMIN’
・11/1 (金) 大阪:Music Club JANUS
・11/8 (金 東京:Zepp Shinjuku
チケット代
一般 ¥4,500 (税込/D別)
学割 (枚数限定): ¥3,900 (税込/D別) ※当日学生証のご提示が必要です
チケット 一般発売:https://eplus.jp/mol-74/