<ライブレポート>SHINJUKU LOFT 50th CIRCUIT 2026

<ライブレポート>SHINJUKU LOFT 50th CIRCUIT 2026

2026.10.10

1976年のオープン以来、数多くのアーティストと音楽を見つめ続けてきた新宿LOFTの50周年を記念したサーキットイベント「SHINJUKU LOFT 50th CIRCUIT 2026」が10月3日(土)に開催された。

新宿の街に点在するライブハウスを舞台に、世代もジャンルも異なるアーティストが集結。会場ごとに異なる熱気が生まれ、フロアではそれぞれの音楽を求めて足を運んだオーディエンスが、思い思いにライブを楽しんだ。

50年という長い歴史を積み重ねてきた新宿LOFTが、これからの音楽シーンへとバトンをつなぐような一日。現在進行形の音楽と、ライブハウスならではの熱量が交差した、そんな一日を振り返る。

文:サイトウマサヒロ

愛しておくれ

(Photo by 麗)

新宿SAMURAIで『下北沢にて』とのコラボステージの幕を開けたのは、「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」より『甘き死よ、来たれ』をBGMに登場した愛しておくれだ。中山卓哉(Vo/Gt)が短く挨拶を済ませると、『ユー・アー・ノット・アローン』からいきなりトップスピードへ。<強く手を握ってくれよ>という歌詞に呼応して拳が突き上がり、ステージとフロアの境界を飛び越えて言葉がまっすぐ届いていく。

歌われる“君”は紛れもなくここにいる一人一人。苦しみや苛立ちはみんなで分かち合いながら、等身大の優しさがそれぞれのそばに寄り添う。「眠れない夜の歌」と紹介された『わたしを夢からつれだして』では、痛快なバンドサウンドのパンチを失わないまま、感傷的なコード進行によって、真昼間のSAMURAIに束の間の夜を連れてきた。

コールアンドレスポンスから始まった『チェリッシュ』の途中で、中山はギターを置いて身を乗り出す。そして突きつけられたマイクに、オーディエンスも声を重ねた。誰かを励ますために差し出されていた愛が、いつのまにやら交換されている。彼らはきっと、誰かに愛してもらうためにこそ、全力で人を愛し続けるのだ。

NEO BURNING FIRES

「何歳になっても伸び続けられるからね。雑草みたいに伸び続けていきましょう」。50周年のLOFTとほぼ同い年だという来門(Vo)がそう語った通り、NEO BURNING FIRESの音楽愛と炎は決して燃え尽きることがないのだと思い知らされるステージだった。

まずはダビーなセッションから最新シングル『BURNING UPPER SWING WAVE』に流れ込むと、DJ BANBI、河辺真(Ba)、Ruu(Dr)によるギターレスのアンサンブルは徐々に加速。その上を来門が歯切れ良いフロウで駆け抜け、拳を掲げさせていく。

『PRIDE OF WEED』ではドラムンベースの疾走感に乗ってハンドウェーブを巻き起こし、『Rice And Butter』には陽性のメロディが映えるなど、多様な要素が人力グルーヴのブレない軸を浮かび上がらせる。

ライブ後半には静かに青い炎をたぎらせるように、『New Year Party 2025』『AWAKENING』で都会的なムードも醸した。曲間にはこの日が誕生日だったRuuを祝い、フロアで身体を揺らすLOFT店長・やなモン。氏(彼らが所属するレーベル・やなモン製作所のヘッドでもある)と言葉を交わす。気負いがないからこそ、ラストの『Ignition』で叫ばれた「音楽は俺の命の結晶なんだよ」という言葉には真実味があった。

NEW BABYLON

リハーサルからBeastie Boys『Sabotage』を鳴らし、濃厚なグルーヴを生み出していたNEW BABYLON。ACBのステージに静寂の中で登場すると、一発の快音とインパクト抜群のスラップベースから「Ignition」へ。彼らにバトンを渡したNEO BURNING FIRESの最終曲と偶然にも(?)同タイトルの楽曲だが、この2組のミクスチャーアクトの間には、エネルギーの放出回路に決定的な差異があった。

というのも、JAYPAY(Vo)のラップは濃密で硬質。溢れ出す思考をそのまま言葉に変換するように、ラップを矢継ぎ早に繰り出す。そして思いが臨界点に達するたび、Shunta Satoh(Gt)やYuki Izumimoto(Ba)のソロが炸裂して、ほとばしる熱を身体へと伝導するのだ。

『Magic』ではJAYPAYがフロアへ降り、一人一人と目を合わせながらスピットする。ステージに立つ者も観客も、鏡合わせみたいに、等しく一人の人間なのだ。4人で紡ぐキャッチーなサビが、その距離をさらに縮めていった。

静寂までも巧みにコントロールする『Bloody Swamp』でいよいよ緊張感は爆発寸前に。『A KID』にて“踊れ”の一言がカタルシスを導くと、最後はJimi Hendrix『Fire』を高速ミクスチャーへと塗り替えてフルスロットルで駆け抜けた。

音速ライン

(photo by 内藤まみ)

転換中のサウンドチェックにて、ゆったりとしたバンドサウンドに乗せ、藤井敬之(Vo/Gt)が“LOFTが50周年”という即興ソングを歌う。そしてそのままステージを降りることなく、日常へと音楽を滑り込ませるように、『Our Song』から音速ラインのライブは始まった。

かねてからLOFTを“実家”と呼ぶなど、この市松模様のステージとは縁が深い。その歌声からして肩の力が抜けているが、だからといってただリラックスしてるだけではなくて、ここが特別な舞台だということも当然自覚していたのだと思う。「せっかくなんで懐かしい曲を」と告げた『冬の空』に、後方まで埋まったフロアから歓声が上がる。

「マネージャーと奥さんに白髪染めを禁止されてる」なんてエピソードで老いを自虐する場面もあったが、新旧を往復するこの日のセットリストは、彼が書くメロディと言葉がエバーグリーンであることを証明していた。

終盤にはスペシャルゲストとして初代ドラマー・菅原健生が登場し、『逢いたい』でフィニッシュ。客席からも合唱が巻き起こる。そんな“続いてきたバンド”だからこそ生み出せる特別な景色が、彼らを見守ってきた老舗を、そして何より彼ら自身の歩みを祝福していた。

SAKANAMON

(photo by 柴田恵理)

「どうもいらっしゃいませこんにちは、SAKANAMONです!」。軽快な挨拶とともにコードを鳴らし、涼しい顔で確信に満ちた歌声を発する藤森元生(Vo/Gt)。一方手元では、ネックやピックガードが摩擦で発火するんじゃないかという勢いでギターを弾き倒している。スリーピースの削ぎ落とされた音像の中、最小限のアイデアとユーモアが、最大限の効果を生む。冒頭の『カタハマリズム』『光の中へ』には、そんな“SAKANAMON節”がひけらかされることなく随所に練り込まれていた。

『ARTSTAR』では、Zepp Shinjukuの中天に浮かぶミラーボールの光が、無数の星々を瞬かせた。LOFTへの初出演時は数人の友人しか客がいなかったと笑う彼らは今、新宿最大級のライブホールを堂々と音で満たしている。『猫の尻尾』は、藤森が歌とギターを対話させながら静かに始まり、やがて3人で一つの身体を形作るような合奏が、繊細な感情のうねりを増幅させつつ広がっていった。

「100周年の時も呼んでもらえるように。皆さんも生きていてください」。そう語って迎えた『妄想DRIVER』では、メリハリの効いたアレンジとナチュラルハーモニクスの倍音が、ステージに神々しいムードすら立ち上らせていく。小さな祈りはやがて絶対的な孤独を帯び、その場所へ近づこうと、客席からいくつもの手が伸びていた。

TiDE

(photo by Кöchirou)

サーキットもいよいよ終盤に差し掛かる頃、新宿Marbleの『スペースシャワー列伝』コラボステージに登場したのは、『MUSIC AWARDS JAPAN 2026』2部門への選出や『SWEET LOVE SHOWER 2026』への出演でも注目を集める新鋭・TiDEだ。

早速『色めき』で、歌舞伎町の喧騒を開放的なスケールへと塗り替えていく。シティポップからの影響を感じさせるサウンドと、井上大悟(Vo/Gt)の太く温かな歌声に身を委ねれば、自分のものなのかすら分からない懐かしい景色が蘇ってくる。小宮紹滉(Ba)の5弦が腹を押す感覚も心地良い。

『Window』では小島祥平(Dr)が人力のトラップビートを刻みながら、しょにー(Gt)がラップを繰り出す場面も。さらに『Day Trip』では、同ステージに出演していた夢句(やさしいみらい)が登場し、“祝いたいだろ? 新宿LOFTの50周年”とバースを蹴り上げるなど、持ち時間の中で彼らの音世界は縦横無尽に拡張されていく。

締めくくりに鳴らされたのは、その名も『祝祭』。ラテンの情熱的なリズムがシンガロングへと接続された頃には、涼やかに始まったステージはすっかり熱を帯びていた。

cinema staff

(photo by 柴田恵理)

解散発表後、初となる東京でのライブ。複雑な思いを抱えてステージを見つめていた者も少なくなかっただろう。そんな視線を真正面から受け止めるように、cinema staffは岩をも砕く一閃から『白い砂漠のマーチ』を放った。複雑に拍子を切り替えても、そこから射し込む光の純度は微塵も失われない。

『drama』では飯田瑞規(Vo/Gt)と三島想平(Ba)がハーモニーを重ね、その間で辻友貴(Gt)が頭を振り乱しギターを掻き鳴らす。久野洋平(Dr)のスネアロールが緊張感を一気に高めて『great escape』の幕を開けると、一面に拳が上がる。彼らは四者それぞれの個性を生温い同調へ落とし込むことなく、尖った四角形のまま強度を増してきたバンドなのだ。そんな4人の演奏に込められた感情の機微を増幅させ、楽曲展開にシンクロして世界の色を更新する照明のオペレーションがとにかく素晴らしく、数々の現場で築き上げてきたのであろう、チームとしてのクリエイティブの強固さを実感した。

「何かを届けられると思ってるし、何かを残せると思ってる。そんな出会いを拾い集めて俺たちはやってきた」と飯田は語る。限られた時間の終わりに向けて募った焦燥感がそうさせたかのごとく、『西南西の虹』は音源を遥かに上回るスピードで疾走。辻が最前列へ身を預け、飯田は「歌って!!」と一人一人に投げかける。今ここで交わったことを確かめ合うように、ステージとフロアは互いの全体重を預け合っていた。

各種リンク

⁠SHINJUKU LOFT 50th CIRCUIT 2026 特設サイト:https://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft/50th

公式X:https://x.com/loft_50th