Live Report
ORCALAND “HERO IS COMING”@新代田FEVER
2024.05.02
ORCALAND
トリはもちろん、本日の主役である『ORCALAND』だ。東京下北沢で結成された4人組バンド。今年で結成から5周年を迎える。
2023年は1月から12ヶ月連続で下北沢のライブハウスを回るライブイベント『ジントリ』を成功させ、2024年2月に2ndミニアルバムをリリース、同年3月から全国ツアーを開催するなど、今最も精力的に活動している注目バンドの1つだ。
HERO IS COMING (BACK)
“東京に!ヒーローが!帰ってきたぞおおおお!!”
力強いマイクパフォーマンスとともに登場した彼らが最初に披露したのは『テレキャスター・ヒーロー』。アルバムタイトルの『HERO’S HIGH』やツアータイトルの『HERO IS COMING』など、直近のORCALANDにとってのテーマとも言える曲だ。
どこかダサく青臭い、まっすぐな歌詞がかっこいいアップテンポなロックナンバー。ギターキッズがそのまま大人になったような、どこか懐かしさも覚えるような1曲。そんなヒーローに憧れて自分も楽器を手に取った人や、そのヒーローに救われてきた人はたくさんいるだろう。
今日(も)シモテに立つギターヒーローは、テレキャスター・シンラインを携えた村田。歌詞に合わせたパフォーマンスとともに、最高のソロで観客を魅了する。
これは個人的な好みの話になるが、”テレキャスター・ヒーロー”が”シンライン”を持っているとはいうのはとても良い。シブいと言うか、心をくすぐるものがある。コールドプレイのジョニーがよく使っているのを見て憧れたものだ。
あとはテレキャスターだと赤いテレキャスも好きだ。アヴリルがSmileのMVで持っているのを見て最高にクールだと感じた思い出が印象強く残っている。
閑話休題。長く短い旅を経て東京に凱旋したヒーロー達は、1曲目からその実力を遺憾なく発揮し、フロアを熱気で包みこんだ。
新代田 NIGHT FEVER
“今日この場所に一番似合う曲があるんですけど!”
この前フリだけで次の曲がわかる。『HERO’S HIGH』のリードトラック、『関係NIGHT FEVER』だ。
いつまでも耳に残るフレーズに、底抜けに明るいトラック。小さな悩みなんてどうでも良く思えてくるような、とにかく聴く人を楽しませるために作られたような曲だ。
誰もがスマホを持ち、インターネットの向こう側からの悪意に触れる可能性が高い時代。そんな現代にあって「人の悪意に飲まれたり、自分の悪意を増幅させてしまうよりも、気にせず楽しんだ方が良いよね」なんて当たり前のことに気づかせてくれる。
公式YoutubeチャンネルではMVも公開されている。未視聴の方はぜひとも見てほしい。
良い意味でチープな雰囲気の映像で、ただただひたすらにバカみたいに楽しそうなバンドメンバー達が印象的だ。
フロアを埋めるファン達は当然視聴済みなのだろう。MVよろしく、両手を振って楽しんでいる姿が多く目についた。
集大成であり、スタート
“最高じゃん。ずっとこれが良いわ”
3曲目に『ダンシングゾンビの決意』を披露した後のMCで大塚はそう語った。ツアーで全国を回ったが、やはりホームの東京は格別なのだと言う。
本番が始まる前、リハーサルを終えたあとにもORCALANDに話を聞いていた。その中でメンバー全員が声を揃えて語っていたのが「今回のツアーは嫌な気持ちになることがなかった」ということだった。
これはツアーが嫌だとか、音楽が嫌だとか、そういう話ではない。ただ、音楽活動を続けていく中で、イベント内容への不満だったり、自分達への不安だったり、メンバー同士での考え方の食い違いだったり、そういう当たり前の小さな不快感というのはどうしても付きまとうものだと思う。今回はそういう不快感がなかったと言うのだ。
もちろん、メンバーが「何も考えなくなった」とか「不快感に慣れた」というのとも違うだろう。メンバー全員で考え、全員で話し、全員で演奏する中で、メンバー全員が目指す方向性が固まったのだ。
音楽でも仕事でも、ともに歩む仲間の方向性が一致したときの快感はとてつもない。そんな最高の状態でツアーを行い、ここまでの6公演を成し遂げてきたのだ。
このMCで大塚が語った「最高じゃん」という言葉は、我々が想像する以上の感情が溢れたものなのかもしれない。
“俺達、ファイナル、ただで終わるつもりはないんで”
「昨日の自分を越えるため走る」
4曲目に披露したのは『リフレイン』。昨年7月にデジタルリリースされたシングル曲で、『HERO’S HIGH』にも収録されている。
直前のMCで「ずっとこれが良い」と言っていたのに、「昨日の自分を越えるため走る」と歌うのだから面白い。
誰だって、今の状況が”良い状況”なら現状維持に甘えたくなるものだ。だが彼らはこれからもずっと「昨日の自分を越えるため走る」のだろう。今までもそうしてきたように。それこそが彼らの強さなのだと思う。
“今のままが良い”という気持ちも、”より高みを目指したい”という気持ちも、どちらも本物の感情だろう。矛盾する気持ちが同居するのが人間の面白いところだ。そして、それを恥ずかしがらずに表現できる人たちに、人々は惹かれるのだろう。
5曲目に『ラブソングなんかにしてやんないわ』を披露。ややアップテンポな、かっこいいラブソングだ。テレキャスター・ヒーローでもある村田が作詞したというこの曲は、サビの歌いだしが独特なフレーズで耳に残りやすい。”流行りの歌”を”安っぽい恋愛”と断じるような強がった心情も美しいと感じる。これも一聴の価値ありなので、聴いたことがない人はぜひ聴いて欲しい。
「あなたとこの先も色んな景色を見たいです」
5周年という節目で自分達のテーマとも言えるタイトルのアルバムを出せたこと。そして、そういうタイトルでツアーができたこと。それらは偶然ではなかったと大塚は短く語る。その言葉を聴いて、他のメンバーも観客も小さく頷く。
続く曲は『Journey』。2019年から始まった彼らの冒険、彼らの旅を綴った曲だ。まだ何もない、何者でもない彼らの心情が、彼らの夢が、憧れが、言葉の多くない歌詞に詰まっている。
彼らはこれから先も長い旅を続けていくだろう。ファンと一緒に。昨日の自分を越えるため、未だ聴いた事無い音を一緒に感じるために。
その後は『ワンシーン』と『最近のこと』とミディアムバラードを2曲続け、フロアをしっかりと”聴かせる”パフォーマンスを見せた。
「いつの間にか誰かのヒーローに、もうなってた」
ツアー初日、MCで「俺達がヒーローになるためのツアー」と語ったと言う大塚。テンションが上がって出てしまった意図しない台詞だったが、「自分達もヒーローなんだとみんなに教えられるツアーだった」と言葉を続ける。
全国を回る中で「ORCALANDがここに来てくれたからこそ、自分たちもライブに来た」と言ってくれるファンとも出会ったと言う。
“ヒーローっていのは、なるものじゃなくて、誰かがその人のことをそう思った瞬間からヒーローなんだなって、このツアーを回って思いました”
「誰かのヒーローにならなきゃ」
そういう気持ちでがむしゃらに走ってきたORCALANDは、すでに誰かのヒーローになれていた。このツアーはそういう物語だった。
「誰かを救うことがあまりない」と語ったシナリオアートも、「誰一人置いていかない」という想いを共有したMercy Woodpeckerも、そして、”ただの音楽好き”を”ORCALAND”としてステージに立たせてくれている観客のみんなも、誰もが誰かのヒーローになっている。
最終ブロックは『POLARIS』と『まだまだ飲み足りない!』でフロアを沸かす。
熱が冷めないまま、アンコールでは『やってらんねぇ』を観客と一緒に熱唱して、3時間近く続いたヒーローショーは惜しまれつつも幕を閉じた。
『ギャルズ2024』開催決定!!
全国各地を沸かし続けてきたORCALANDだが、アンコール前に嬉しい告知が解禁された。
夏の定例イベントとなっている『ギャルズ』が今年も開催されることが決定したのだ。
『ギャルズ』は男性ボーカルと女性ボーカルをミックスする形式の対バンイベントで、今年で3回目の開催となる。
チケットの最速先行抽選も始まっているので、ぜひ公式サイトをチェックして欲しい。
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ORCALAND presents “ギャルズ2024″開催決定!!