2026.03.01
永遠が、絶対がないのなら、先延ばしにしたその日がくるまで、僕は何ができるのだろう。2026年2月18日(水)、フロム大阪のスリーピースバンド・the paddlesが、神奈川・F.A.D YOKOHAMAにて開催した『いつか君と別れてしまうならツアー』6本目。
2025年12月にリリースした3rd EP『結婚とかできないなら』を携え、全14公演(うち追加2公演)を執り行う同ツアーの折り返しとなったこの日、the paddlesは大阪の先輩であるreGretGirlをゲストに迎え、こんな問いのアンサーへ手を伸ばしていた。
文=横堀つばさ
撮影=オガワタクヤ

この日が2026年1発目のライブとなったreGretGirlは、「一緒に行こうな!一緒に恋しようぜ」と『純ラブ』でキックオフ。オクターブを飛び回る十九川宗裕(Ba)のベースラインと四つ打ちを下敷きとする前田将司(Dr)のソフトなビートでハンドワイパーを発生させつつ、<「それ俺も好きなやつだ」>なんて会話調で放たれるリリックが、もどかしい2人の距離を可視化していく。
時折上ずったり、擦れたりする平部雅洋(Vo/Gt)の歌声は、<何も言わずに その手を引き止めれば ここにいてくれますか><もう爆発しそうなくせに 「好きだ」と言えない>と情けなくて臆病な心を体現するよう。
しかし、現在のreGretGirlは、「1個だけ言えんのは、ここにいる全員がKAWAII!」と投入した『KAWAII』や「もっと皆と近くなりたい!」とフロアのど真ん中で<知らんけど>コールを要求した『知らんけど』からも窺い知れるように、汚くもかけがえのない性愛と生傷を保管するだけではなく、生きること全てをキュートに笑い飛ばし、肯定しているのだろう。
つまり、幾度も平部が口にした「愛し合って帰りましょう!」という言葉は、弱さも醜さをも認め合い、補い合おうとするアティチュードと同値だった。
であるならば、「この曲を聴いている間は、胸が温かくなるもんものを思い想い浮かべてくれ」と、大きな式場の重たい扉を開け放つひとコマを喚起するホーリーなストリングスが際立つ『エバーソング』を終え、平部が語ったこんなMCはそうした態度の象徴だと言えよう。
「ここにいる全員が集まる今日は、今日しかないねんな。だから、大袈裟に言います。俺らがお前らの希望でいれるようにしっかり歌うわ!」
欠けてしまったパーツを強引に埋めるわけじゃない。ただ長所だけを大事にするんじゃない。「そうか、そうか、そういうこともあるよな」と頷いて話を聞くみたいに、「涙したって良いんだ」と言い聞かせるように、『ホワイトアウト』が鳴らされる。
最後のキスがいつだったかも、最後のハグがいつだったかも分からないままに終わってしまった恋の歌。<「私、好きな人ができたの」>の大熱唱は、一瞬で頭をチカチカさせた苦い記憶を分かち合う光景に違いないはず。
ピリオドを打った『soak』まで、あらゆる恋慕と生活を抱きしめた3人。「嫌なことがあったら、またreGretGirlの胸に飛び込みに来てくれよ」と交わした誓いの通り、オーディエンスと共に涙し、共に笑う大きな背中がそこにあった。

素直でいること。素直であろうとすること。それがこのツアーに込められた思いなのだと、痛切に理解させられる60分超だった。
そのメッセージは、「the paddlesとreGretGirlの対バンを楽しみにしてたヤツ、どんだけおんねん!」と開幕を彩った『ちぎれるほど愛していいですか』から、ありありと示されていたもの。なんせ、キュッと締め上げられる柄須賀皇司(Vo/Gt)の語尾処理や大きな拍間で叩かれる渡邊剣人(Dr)のビート、ファンのクラップを導く華やかなアンサンブルは、<ちぎれるほど愛していいですか?><もう死ぬほど愛していいですか?>と重たすぎるかもしれない愛情を受け取ってもらうために用意したラッピングなのだ。

もちろん、真っ直ぐに対峙する対象は大好きなあの子だけじゃないわけで、「reGretGirlを呼びつけた理由は、あの人たちよりも格好良いライブをするため!」と宣戦布告を叩きつけた『倦怠モラトリアム』では<虎視眈々と狙う>とバンドのファイティングポーズにも見える1節を織り込み、断続的に加えられる松嶋航大(Ba)のコーラスワークが温和なムードを加速させる『赤いアネモネ』では本心を花言葉に仮託しつつも<君のことがほんとに好きで 今すぐ会いたいと馬鹿みたいに思ってるよ>と惜しげもなくラブを注いでいく。

ライブも折り返しを過ぎた頃、「いつか君と別れてしまうなら。もし本当に別れがあるとするならば、我慢してしまうよりも自分の気持ちを素直に伝えられたら良いなと思う。別れてしまったなら、その人にかけられる言葉はないから。どうせ別れてしまうんだったら、その瞬間がくるまえに自分の怒りも喜びも全部伝えるべきなんです」と話せば水色のライトが差し込み、柄須賀が歌い出す。
『予測変換から消えても』だ。<もっと嫌いなとこも 素直に嫌いだと言えたら>と“もし”の世界線を想像していくこの歌は、後悔する前に、恋人というワードの前に元が付いてしまう前に、届けたかった気持ちを吐き出していくナンバー。<僕は忘れないから>で咆える瞬間、少しだけスローになるテンポや裏返る歌唱は、瞬間の感傷を思うままにぶちまけていたことを裏付けていた。
と、ここまでの舞台だけだったなら、あくまでもこれまでのthe paddlesの延長線上だっただろう。なぜなら、2曲目に披露された『花』に顕著なように、赤裸々な思いを紡ぎ、恥ずかしげもなくぶつけていくスタイルは、過去の作品群にも流れているものだから。しかし、このツアーの3人は素直でいることだけでは終わらなかった。
その成長が太く記されたのが、静寂のフロアに柄須賀のブレスが駆け抜けた『ブルーベリーデイズ』。<「会いたい」とか言えないから その代わりに「飲みたい」とか 違う言葉で誘ってるの 気付けよ>と照れ隠しと遠回りばかりの様子をしたためていく同ナンバーの終盤、柄須賀は「皆のことを無下に扱ったり、嫌いだと思うヤツに割いている時間はないよ。そんな時間があるなら、今頭に浮かんでいる人に素直になってよ!」と叫ぶ。
湧き出てきたこんな言葉から、そして続くMCで「the paddlesの前では喜怒哀楽を全部出してほしい。素直な皆が見れたら嬉しいです。でも。叶うなら、皆には幸せであって欲しいと思います」と願った佇まいから読み取れる通り、彼らは恋やバンドに奔走する人生を取り繕わずに音へ乗せることで、誰かを丸裸にできる楽団へ成長を遂げたのではないか。

こう考えると、『会いたいと願うのなら』と『25歳』という3人の歌声が重なり合う音楽賛歌でラストを飾った理由も明確。いつだってあなたの本音を引き出せる場所であるために、the paddlesはロックバンドを辞めやしない。そんなステートメントを彼らは打ち立てたのである。
こうしてピリオドが打たれた『いつか君と別れてしまうならツアー』6本目。ライブ冒頭、柄須賀が「このバンドで歌い続けることが生きがいなんだ、と分かるツアーです」と口にしていたように、この14本はthe paddlesにとって、永遠がない人生において何を守り続けていたいのかという命題と対峙する旅路になっているよう。その答えは、素直に君と向き合うこと。ピュアな心を傷つける有象無象から、あなたを守ること。離別が怖いからこそ、the paddlesはありのままを今日も届けていくのだ。

the paddles
『いつか君と別れてしまうならツアー』
3月1日(日)
石川 金沢vanvan V4
OPEN/START 17:30/18:00
※対バン:プッシュプルポット
3月6日(金)
愛知 名古屋RAD HALL
OPEN/START 18:30/19:00
※ワンマン
3月8日(日)
大阪 心斎橋CLUB JANUS
OPEN/START 17:15/18:00
※ワンマン
SOLD OUT!!
3月15日(日)
東京 渋谷WWW X
OPEN/START 17:00/18:00
※ワンマン
<追加ワンマン>

3月30日(月)
大阪 梅田CLUB QUATTRO
OPEN/START 17:30/18:30
※ワンマン
SOLD OUT!!

4/19(日)
北海道 札幌VyPass.
OPEN/START 11:30/12:00
※ワンマン
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