2025.12.25
PompadollS 1st One Man Tour「Courtesy Call」ファイナル公演が2025年12月18日(木)恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。
大阪・梅田Shangri-La、名古屋CLUB UPSETを経て辿り着いたツアー最終日。会場にはPompadollSのタオルを肩にかけたファンの姿が多く見られ、開演前からこの夜を待ちわびてきた熱量が静かに、しかし確かに満ちていた。
SEが流れた瞬間、そこは現実から切り離された彼女たちの“城”へと変わる。
正統進化型邦楽ロック・PompadollSが、今この瞬間に立っている現在地と、その先に続く未来をはっきりと示した夜。
本記事では、ツアーファイナルとして鳴らされた音、交わされた視線、そしてLIQUIDROOMに刻まれた確かな証明を記している。

ステージセットは驚くほど整然としていた。誰か一人が突出することなく、全員が等しく視界に入り、等しく音を放つ配置。五十嵐五十(Vo/Gt)を中心に、青木廉太郎(Gt)、サイカワタル(Ba)、但馬馨(Dr)、小松里菜(Key)という5人の輪郭が、最初からくっきりと浮かび上がる。PompadollSというバンドの思想が、そのままステージに可視化されているようだった。
1曲目に『命知ラズ』を披露。艶を帯びた五十嵐の声が、空間にすっと染み込む。その最中ギターが全面に押し出され、青木のフレーズが楽曲を牽引する。ファイナルという言葉に相応しい、迷いのない入りだ。
続く『みにくいアヒルの子』では、ボーカルの声の伸びがより際立つ。高音域でも力任せにならず、自然に、しかし強く届く声。この五十嵐の放つ説得力はバンドを、ツアーを重ねてきた時間そのものだった。
『ホワイトジャーニー』では、序盤の盛り上がりを一切落とさずに突入。観客の手が一斉に上がり、フロアとステージの境界が溶けていく。キーを上げたまま強弱と抑揚を自在に操る五十嵐の歌唱は、簡単に真似できるものではないだろう。バンド全体のサウンドも、ファイナルというバフも重なり“出し切っている”といった感触があり、音圧と解像度が両立されていた。

MCでは五十嵐が「どうよ!?LIQUIDROOM!デカくない?(笑)ここでワンマンなんて多くのバンドマンの憧れですから、もちろん私たちの夢の一つでもあったので嬉しいし光栄です!本当にみなさまありがとうございます!」と感謝を伝え、続けて「本番前に色々な撮影や取材が入ってて、緊張しすぎて自分が何を話してるのかわからない状況で…後日出る映像とかで私が変な挙動をしててもスクショしたりして拡散しないでください…(笑)」と、人間味溢れるMCで笑いを誘う。
MC終わりの1発目『海底孤城』を披露。軽やかでありながら、確かな重さを持つサウンド。小松の奏でる音が跳ねるように鳴り、楽曲に独特の浮遊感を与える。鍵盤がバンドの色彩を決定づけていることを、改めて実感させられる瞬間だった。
続く『窮鼠、猫を噛む』では、小松にピンスポットが当たり曲が始まる。そこから但馬(Dr)のビートが入り、サイカ(Ba)、青木(Gt)と重なっていく流れが実に渋い。
「小さなネズミがLIQUIDに来ました」という五十嵐の一言が、このツアーを走り抜けてきたバンドの姿と重なり、会場に温度を与えた。
『悪食』では、“正統進化型邦楽ロック”としてのPompadollSが、ここでも揺るぎないことを示す一幕となる。各メンバーにしっかりと見せ場が用意され、5人それぞれの存在感が際立つ構成は見事と言う他ない。
曲が終わるとMCを挟み、言葉は多くなくとも、ここまで積み上げてきた信頼関係が、すでにフロアと共有された。
後半戦の幕開けに『魔法のランプ』を披露。五十嵐がギターを掻きむしるように鳴らしながら、徐々にテンションを引き上げていく。『怪物』のイントロでは、少しの恐怖を孕んだキーボードの音色が鳴り、圧迫感のある空気を作る。しかし、それが一気に解放される瞬間のカタルシスが、この曲の真骨頂とも言えるだろう。フロア全体で歌われるサビが、LIQUIDROOMを大きく、大きく揺らした。
『ねむり姫』では、景色が一変する。夢の中にいるようでいて、感覚は不思議と鮮明だ。音が一枚ずつ重なり、広がっていく様は、PompadollSの叙情性を象徴している。
ワントーン落として静かに始まった『ヒューマンエラー』は、コーラスが重なり、後半に向けてペースアップしていく構成が、感情の高まりと完全にシンクロする。ここでの展開力は、ライブバンドとしての成熟を強く感じさせた。


曲が終わり、PompadollSから名古屋クアトロ、大阪梅田クアトロ、そしてZEPP SHINJUKUでのツアー開催が発表され、フロアから大きな歓声が上がる。終わりではなく、続いていく物語が提示された瞬間となった。
ツアー開催が発表された後に披露された『ラブソング』では、「今日しか鳴らせないラブソングを、みんなで鳴らしましょう!」という五十嵐の言葉とともに、照明がピンクに染まる。五十嵐はギターを置き、マイクを手にステージを周りながら一人ひとりに向けラブソングを届ける。観客は手を振り、会場全体が柔らかな一体感で包まれた。
『Vanished Vanity』では、一転して緊張感が走る。イントロでジャズの香りを漂わせたかと思えば、次の瞬間には全力のロックを叩き込む。今にも各所でダイブが起きそうなフロアの熱が、この曲の爆発力を物語っていた。
続く『ロールシャッハの数奇な夢』では、ベースソロからスタート。サイカの存在感が前面に出る。鋭くも美しいロックナンバーのように聴こえ、音が研ぎ澄まされていく感覚が、観客の意識を一点に集中させる。
ラストは『スポットライト・ジャンキー』を盛大に披露。自らの魅力を最大限で披露するようにギターとベースが、赤と青のスポットの切り替わりに合わせ交互にソロを魅せる。そこからキーボードとドラムソロへと流れ、間をしっかり取って楽曲が始まる。この構成そのものが、PompadollSというバンドのライブ力を証明していた。


LIQUIDROOM全体から贈られる歓声と拍手を背にPompadollSはステージを降りるが、その歓声と拍手にはもう一つの意味を持っている。バラバラに響いていた拍手と歓声は次第に一つの塊となり、PompadollSのアンコールを願う音になった。
鳴り止まないアンコールに応え、衣装チェンジしたPompadollSが登場。アンコール前に、メンバーそれぞれ今回のツアーの感想を述べ、グッズTシャツの紹介も行われる。
満を辞してアンコールが始まろうとする最中、観客席からの声で、五十嵐がグッズTシャツを逆に着ていることが判明。五十嵐の「もーやだー!!」と、愛らしく叫ぶ声に会場中から歓声と笑いが響き渡る。そんな場面も、この日の温度を象徴するような一幕となった。
そしてアンコールにPompadollSの始まりの曲でもある『日の東、月の西』を披露。
PompadollSは、この夜、正統進化型邦楽ロックという言葉を確固たる結果で示し、次の進化に歩を進めた。

<セットリスト>
1.命知ラズ
2.みにくいアヒルの子
3.ホワイトジャーニー
4.海底孤城
5.窮鼠、猫を噛む
6.悪食
7.魔法のランプ
8.怪物
9.ねむり姫
10.ヒューマンエラー
11.ラブソング
12.Vanished Vanity
13.ロールシャッハの数奇な夢
14.スポットライト・ジャンキー
<アンコール>
1. 日の東、月の西

来春ツアーのオフィシャル最終選考受付中
3/29(日)名古屋クアトロ
4/11(土)大阪梅田クアトロ
6/6(土)ZEPP SHINJUKU
公式HP:https://pompadolls.bitfan.id/
Instagram:https://www.instagram.com/pompadolls_band