2025.12.15
2025年12月6日(土)下北沢を舞台にした「下北沢にて」が、今年で第16回目の開催を迎えた。下北沢一帯がライブハウスを巡る人々で賑わうなか、長い一日の締めくくりとしてシャングリラのトリを務めた「THEラブ人間」
12月の澄んだ気配が街を包むなか、下北沢シャングリラにはどこか懐かしい匂いと期待が満ちていた。
お笑い芸人・蛙亭とニッポンの社長がフロアを温め、笑いの余韻がまだ漂うステージに満を持して登場した彼らが、音楽と愛で、このイベントの心臓を脈打たせるために帰ってきた。
本記事では、この街(下北沢)と共に育ち、生活の匂いを抱きしめてきたTHEラブ人間の笑いと熱気と愛が交錯した瞬間を記している。

2009年に下北沢にて結成されたラブソングのみを歌う音楽集団THEラブ人間は「下北沢にて」をオーガナイズし始め、様々な場所で愛を歌い続けてきた。
そんな彼らのステージ1曲目は『ディズニーランドの喫煙所』にて始まる。開始早々に場内の空気が“幸福の匂い”に変わり、曲が持つ独特の多幸感が、今日の編成によってさらにふくよかに膨らんでいく。
軽やかなリズムに乗せて、金田康平(Vo/Gt)の声が柔らかく跳ね、観客一人ひとりの胸に灯りをつけていく。谷崎航大(Vn)のバイオリンは小さな風のように舞い、ツネ・モリサワ(Key)の鍵盤が空間を包む。メンバーも観客も自然と笑顔になっていくのがわかる。
“幸せを運ぶ音楽隊”という言葉がそのままステージに実体化したような、そんな始まりだった。
続く『アンカーソング』では、バンドとしての“地続きの強さ”が浮き彫りになる。金田の声は少し熱を帯び、富田貴之(Dr)のドラムは力強く楽曲の背骨を打ち、マツザカタクミ(Ba)のベースが低音で包み込み、中野ミホ(Vo/Gt)のギターとコーラスが灯火のように曲へと寄り添う。
曲の持つ“前へ進むしかない気持ち”が、シャングリラの空気ごと前へと押し出していく。


MCでは、金田が陽気にメンバー紹介し「下北沢にて!これで終わり!本当に長丁場おつかれ!!ありがとうー!!」と、感謝を伝え、続けて「バックドロップシンデレラがトリみたいなライブをしてたけど(笑)バックドロップシンデレラ結成20周年おめでとう!彼らのライブで疲れた人いっぱいいると思いますけど、トリは俺らなので(笑)よろしくお願いします!」といい『虹色のスニーカーで』を披露し、色彩が一気に鮮やかになる。
軽やかに始まり、金田と中野の心地よい掛け合いに観客たちも自然と体を揺らす。音がひとつ鳴るたびに“人生にはまだ何かできる気がする”という小さな希望が胸に射し込んでくるようで、フロアには目に見えない光が溢れていたように感じた。
次に披露された『晴子と龍平』では、谷崎のバイオリンが身体に染み渡るように奏でられ、物語を導くように旋律を紡ぐ。優しく、確かな感情を宿した音が、金田と中野の歌と絡み合い、曲が持つ“人の人生をほんの少し照らすようなあたたかさ”をさらに引き上げていく。観客は呼吸を飲み、ただその音の行方を追いかけていた。
続く『コント』では、富田の重く響くドラムイントロから始まり、金田が「下北沢にてまだまだ行けますか!?」と観客に聞き、観客は手拍子と歓声で答え、金田が続けて「最高だぜー!!」と締め、高らかな谷崎のバイオリンで陽気に繋げる。
曲が終わりモリサワが「去年15回目を迎えて今年で16回目の開催なんですけど、今年のテーマが“知ってる街で知らない気持ちに出会う”と掲げていて、長く続けると慣れてきたり、当たり前に思ってしまう所があったり…もちろんそんな風には思ってないんですけど、気付かぬところで、みたいな。こんな気持ちが自分にもあったんだとか、色んなことに気付けたのが、今年の下北沢にてだったなと思います。いつも来てくれてる方、初めて来てくださった方、本当に皆さんありがとうございます!」と感謝を伝える。
続けて「出てくれた全172組のアーティストの皆さんも本当にありがとうございます!そして、ライブハウス、商店街の皆様一人ひとりの力を借りて、バンドも、このイベントも続けてこれました。本当にありがとうございます!」といい、金田が「協力してくれた最高のスタッフのみんなにも拍手をください!みんな音楽は好きかい?」と、観客に問いかけ、続いた『砂男』
泥臭くとも、真摯に音楽と向き合うように金田の声が響く。そんな金田の一つひとつの言葉が重力を持ち、曲の世界がじわじわと浸食してくる。気づけばフロア全体が曲に引きずり込まれていた。


そして『これはもう青春じゃないか』を披露。
イントロが鳴った瞬間、空気が跳ね、観客の手が上がり、声が揃い、フロアは一気に“青春そのもの”に。サビの大合唱は、ただのシンガロングじゃない。過去も今も未来も全部を抱きしめるような、巨大な共鳴となり、THEラブ人間というバンドが15年以上積み重ねてきた時間のすべてが、この瞬間に集まっていた。
本編ラストの『ズタボロの君へ』では、歌が観客に寄り添うように響き、バンドの柔らかいアンサンブルとは対照的に、強く信頼させてくれるような音の厚みを観せてくれた。その様子に、フロアは個々の人生を思い出すように聴き入る。
他人事のように思えてしまう昨今、ズタボロの君のため、自分のためにズタボロのままでもいいと思わせてくれるTHEラブ人間。痛みを抱えた人に手を差し出すようなこの曲が、今日の本編を締めくくるのは必然のように思えた。


本編が終わり、観客一同拍手で彼らを見送るが、その拍手は鳴り止まない。THEラブ人間を讃えながらもアンコールを切望する拍手に応え、照明が再び灯り、赤いハッピを羽織ったメンバーが戻ってくる。
金田が「いやー楽しかったー!本当にみんなありがとう!マジでそれに尽きる!ほんと一瞬で終わっちゃったよ。俺はすごいギターが好きで、ロックが好きで、何よりバンドが好きです。みんなバンドをやってくれてありがとう!夜遅くまでいてくれて本当にありがとう!」と、下北沢にてに出演したアーティスト、いや表現者と、来場した全ての観客に感謝を伝える。
続けて「今年作った新曲が1曲あるんだけど、最後にその新曲をやって終わりたいと思います!俺たちの最新のページ、俺の兄貴に捧げます。」と、伝え『brother』を披露。
笑いから始まり、涙の気配を残して終わる夜。「下北沢にて」らしい、日々の生活とそれぞれの人生がそのまま音になったような時間となった。


<セットリスト>
1.ディズニーランドの喫煙所
2.アンカーソング
3.虹色のスニーカーで
4.晴子と龍平
5.コント
6.砂男
7.これはもう青春じゃないか
8.ズタボロの君へ
<アンコール>
1.brother
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