2025.10.26
10月15日(木)Shibuya eggmanにて行われたSeskimo pre.「Always with you – 下剋上編 -」
この日は、“あなたと一緒に歌いたい。”をコンセプトに活動する「Seskimo」が、敬愛する先輩である「KAKASHI」と「まなつ」に真正面から挑む“下剋上”の一夜となった。
タイトルの“Always with you”が掲げるのは、ただの友情や対バンという言葉だけではなく、愛と感謝を音にし、そして“同じ場所に立てる存在であること”を証明する意志のようにも感じられた。
その想いを胸に、Seskimoが掲げた“下剋上”という旗がShibuya eggmanの夜に高々と突き立てられた。本記事ではこの日の様子を記している。

東京町田からPURE POP PUNKバンド「まなつ」の、いたやボーイ(Ba/Vo)が「Always with you 下剋上編だそうです。下剋上される側…先行まなつ始めます!!」と、一言。Seskimo、そして観客に向け、1曲目『僕たちの答え』を叩きつける。
開始直後から全速力でフロアにぶつかっていき、アリー(Gt)のギターが鋭く走り、いたやボーイの声が会場をこれでもかと突き抜けて刺さり、ほたて(Dr)の打ちつけるビートが会場を震わせた。
最初の一音から観客を完全に惹きつけ、音が鳴るたびに熱が増していくまなつの“地力”を体感。積み重ねてきた経験と練度が、そのまま音になっていた。
2曲目『Turn It Up!』では、フロアが大きく波打つ。疾走感の中に遊び心があり、ステージ上では笑顔もこぼれる。それでもサウンドは鋭く、余裕の中に確かな覚悟が見えた。
続く『不完全道徳論』では、彼ららしい真っ直ぐながらも哲学的な歌詞が突き刺さる。生きる矛盾を抱えたまま、それでも前に進む姿を描くように全員が全力で演奏する。
曲が終わり、いたやボーイが口を開く。「下剋上の意味、知ってる?漫画とかで見て適当につけてない?(笑)まあ、仲いいんですよ、仲がいいからこそかかってきなさいよって感じです!」と、笑い交じりに放たれたその言葉には、“可愛がってやるけど容赦はしない”そんな先輩の矜持が、フロアに響いた。
7曲目はSeskimoの楽曲でもある『あなたと』を披露。
「あなたと歌ってるんだぜ!SeskimoもKAKASHIもあなたがいないと成り立たないんだぜ!一緒に歌おう!」と、いたやボーイが叫ぶとフロアがざわめいた。先輩が後輩の曲を、真っ向からカバーする。その行為自体が愛の証だ。
原曲への敬意を残しながらも、まなつ流に再構築された『あなたと』は、情熱的で温かい。Seskimoのメンバーも思わず笑顔を見せ、真正面からぶつかり合える関係性がステージ上で音となっていた。
ラストに『旗揚げ』を披露。まなつの音楽は、挑戦する全ての人に向けられたエールのようだった。再びギアを上げ、いたやボーイがフロアに飛び出す。観客に囲まれながら、顔を上げて歌う姿に、まなつというバンドの真髄が詰まっていた。
“音で想いを伝える”その言葉を体現するような演奏。ステージとフロアの境界が、文字通り完全に消えた。最後まで全力で駆け抜け、音が止んだ瞬間、観客からは大きな拍手と歓声。Seskimoの“下剋上”を受け止め、真正面から音で返したまなつ。
その姿はまさに“立ちはだかる壁”であり、“憧れ”そのものだった。この夜、まなつは優しさと強さで音楽の絆を証明してみせた。
公式HP:https://manatsu.jimdofree.com/

2011年に群馬県で結成された3ピースバンド「KAKASHI」が堂々とステージに現れ「俺たちに下剋上を叩きつけるとはいい度胸だ!最大級の愛と感謝とゲンコツを食らわせる!」と、堀越颯太(Vo/Gt)がSeskimoと観客に宣言。その一言で会場がぶち上がる。挑発でも威嚇でもない。充分すぎるSeskimoに向けた“愛の拳”だ。
1曲目『I Know you』
中屋敷智裕(Ba)の低音がうねり、堀越の鋭く切り込むギターリフがフロアを貫く。“これでいいのだ”、いや、“これがいいのだ”。初っ端から観客を圧倒する音の塊。リズムの精度、音の密度、そして全員の一体感。その完成度はまるで一枚の壁のように分厚く、若いバンドには到底出せない“年輪”を感じさせた。
『fuse』、『やめろよ』では、畳み掛けるように響く関佑介(Dr)のドラムと、熱量の高い堀越の声が絡み合い、フロアを一気に沸かせる。
4曲目『EFB』から中盤戦へ突入。息を合わせたリズム隊の重厚なグルーヴが会場を支配し、ギターの鋭いトーンがその隙間を切り裂く。どの曲にも“完成された構築美”があり、荒々しさの中に緻密な設計を感じる。
MCでは堀越が「Seskimoとは初めましてです。初めましてのバンドに喧嘩を売るようなバンドです(笑)」と笑いながら話し、中屋敷がすかさず「辻斬りだよあんなの(笑)いきなり切り掛かってくんだもん」と併せ、続けて堀越が「僕たち切り捨てられに来たってこと?やられても文句言えないってことだよね…んまぁ!やられないんですけどね!(笑)」と自信たっぷりに答える。そこにはSeskimoからの下剋上を受けて立つ懐の深さが感じられた。
そんな軽快なトークの後に持ってきた曲は『friends』
心なしか愛の感じられるセトリとなっており、胸が熱くなる流れとなり、続けて『first』、『グッドバイ』、『Day to Day』を披露。力強くビートが鳴り、毎日の中にこそ日々の愛おしさを見出せるのだと、彼らの音楽を聴いて思える。歌詞に思わず笑顔が溢れてしまう。日々を重ねること、仲間と音を鳴らし続けること。それがKAKASHIというバンドの根っこにある“優しさ”であり“強さ”だった。
曲が終わり堀越が「結成して12〜13年。これだけやってると俺って人間にできること、メンバーがそれぞれできる最大限の事ってわかってくるんですよ。だから力を合わせるんですよ。世界中の誰よりも俺って人間と向き合い続けてきたから分かんの。まだまだやれるって」その言葉と共に11曲目『違うんじゃないか』を披露。
そしてラストスパート『本当の事』、『ドブネズミ』では、会場が爆発したような熱気に包まれる。ゆすけの刻むビートが脈打つように鳴り響き、堀越のギターが火花のように散る。
その瞬間、誰もが感じていた。“本当の下剋上”とは、挑み続ける者と、受け止める者がいて初めて成立するのだと。KAKASHIはこの夜、音で証明してみせた。
公式HP:https://kakashi.aremond.com/

“あなたと一緒に歌いたい。”をコンセプトに活動するスリーピースロックバンド「Seskimo」は、ダニエル・ビダルの『オー・シャンゼリゼ (Les Champs Elysees)』の陽気な音楽と共に登場した。
1曲目『Bible』のイントロが鳴り響き、フロアが一斉に沸く。藤本真由/マユマユ(Gt/Vo)が、ギターを掻き鳴らし、さいとうだいち/でんでん(Ba/Cho)のベースが空気を震わせる。まるでこの瞬間のために全てを注ぎ込むような表情。“先輩たちの背中を越える”という覚悟が、そのまま音になっていた。
2曲目『愛を探しに』では、疾走感のあるリズムと瑞々しいメロディがShibuya eggmanを包み込む。どこか切なさを帯びながらも、まっすぐ前を見据えるような歌声。ステージを駆けるさいとうのベースと、観客の手拍子がシンクロしていく。
MCでは、藤本が笑いながら口を開いた「怖かったなー…(笑)下剋上編じゃん?恐る恐る会場入りして挨拶してたら、“NO WAR”って書いてあるTシャツを着た颯太さんがいてほっこりしました(笑)」といい、笑いと暖かい空気で会場を包む。
そんな空気の中『秘密』を披露し、Seskimoの本領が発揮される。明るく広がっていく多幸感の中に、繊細なボーカルのニュアンスとリズムの呼吸。どれを取ってもSeskimoらしさが光る。
藤本が一言「まだ夏じゃない?あの時のこと全部回収しよう」と残し『ネバーグリーン』が始まり、フロア全体が手拍子で一体となり、メロディが光の波のように広がっていく。
続いて、ライブ当日にリリースされた新曲『優しいだけ』では、歌詞のフレーズが観客の心を柔らかく包み込んだ。誰もが静かに聴き入り、会場に生まれた沈黙さえも音楽の一部のようだった。その流れのまま『ナイター』へ。肌寒い夜空の下を駆けるような少しの甘酸っぱさを感じさせるサウンドに、観客が身体を揺らして応える。
藤本がマイクを握り直し語った「今日ここにきてくれている人は心臓が飛び出るくらいのドキドキを体感するのが大好きな人が集まっていると思ってます。残りの時間、あなたとそれを越えるだけ!」といい『Sing』を披露。歌うことへの情熱、あなたと歌うことで証明できると信じて疑わない藤本の本音が見える。
10曲目の『ずっと』でも、Seskimoらしい優しさと熱が同居する。歌うこと、続けること、信じること。そのすべてがこの2曲に凝縮されており、生きることとイコールで、歌うことがが結びついているように感じられる。そんなメッセージが、確かにこの瞬間に宿っていた。

曲が終わり、藤本が「雨は止んだ!うん!」といい、続けて「まなつとKAKASHIを見たのは2018年。まだ音楽始めてなくてさ、あの時の感覚を1から10まで覚えてるわけではないけど、何かある度にまなつとKAKASHIを聴いてた。その2つのバンドが今、ワシらのバックドロップの前に立っているということ。下剋上編、先輩たちに食らいつく!って思いともう一つ、そんな2つのバンドと同じステージに立つということを想像もしてなかった自分を倒しにきました。」その言葉の一つひとつには覚悟と感謝が滲んでいた。
そして、12曲目『なきよし』へ。柔らかく、でも確かな芯をもった歌声。まるで“ありがとう”を音にしたような温かい時間が流れる。
ラストナンバー『告白』
イントロが鳴った瞬間、観客が息を呑む。歌詞の一つひとつに感情が乗り、ステージ上のメンバーと観客が互いを見つめ合い、この日を迎えるために積み重ねてきた日々を噛み締めていたように思える一瞬となった。
音が止まったあと、長い拍手が鳴り響き、アンコールを求める声が相次ぎ、再び登場したSeskimo。
藤本が絞り出すように話す「まなつがカバーしてくれた大事な歌!あなたと歌って、またドキドキして、憧れを越えよう!」といい、アンコールに『あなたと』を披露。
まなつ、KAKASHI、そしてSeskimo。3バンド3様の音が混ざり合い、大きな輪となった。
“Always with you – 下剋上編 -”という旗のもとで生まれた絆と火花。Seskimoはこの夜、確かに“下”から“上”へと手を伸ばし、自分たちの手で過去を回収し、未来を掴み取った。
会場を後にすると、雨降りだった渋谷は、藤本の宣言通り止んでおり、暖かい気持ちと共に帰路についた。

<セットリスト>
1.Bible
2.愛を探しに
3.Cry Cry Cry
4.秘密
5.ネバーグリーン
6.優しいだけ
7.ナイター
8.光る海
9.Sing
10.ずっと
11.さよならブルース
12.なきよし
13.告白
<アンコール>
1.あなたと

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