2025.08.05
2025年7月28日(月)に開催された『変わる日々で、変わらず鳴らす。』は、下北沢 近松の8周年を祝して開催されたイベントとなり、9回目の開催となる。
今回出演したアーティストは近松とCUTMANSの声掛けにより集まった「三五正」「BARK SWANP」「Paper moon Endroll」「Mr.マングース」という総勢5組の豪華な面々が出揃った。
本記事では主催であるCUTMANSのライブを取り上げ、目まぐるしく過ぎていく日々の中、変わらず鳴らし続ける彼らの姿を繊細に、且つ情熱的にレポートしている。
ツアー情報を解禁し、今まさに最前線で音を鳴らし続けるCUTMANSのライブレポートを読んでいただき、是非、10月から敢行予定の彼らの全国ツアーに駆けつけてほしい。
乾いた空気に湿気が滲む夜となった『変わる日々で、変わらず鳴らす。』8周年という近松の節目のトリに「CUTMANS」が登場。
変わっていく日々の中、過ぎていく時間の中、CUTMANSの登場により熱が静かに満ちていく。“変わる”ものと“変わらない”ものが交差するこの空間で、CUTMANSはまるで時代の影に火をつけるように、音を放っていった。
幕が開けるや否や、空気の密度が変わる。1曲目の『Neighborhood』では、微細な緊張と熱がぶつかり合い、寺澤光希(Vo/Gt)のギターが、まるで街灯の下に落ちる影のように鳴り始める。
この曲が持つのは“過去”と“現在地”の両方の意味を持っているように感じた。近すぎる街並み、過去、無数の名前と顔。彼の声はその隙間を縫うようにまっすぐだった。
音像はシンプルでありながら鋭く、長澤琉基(Gt/Cho)のリフが記憶を撫でるように絡みつく。生活の中でこぼれた欠片たちに形が与えられていく感覚を覚えた。
2曲目『飛翔』では、カタルシスが垂直に駆け上がる。ベースの木村 良(Ba)が支えるボトムが、もはや“重力”として機能し、そこから解き放たれるようにドラムの岸本 崇(Dr/Cho)が、乾いた大地を裂くようなビートを打つ。
生きることは痛みを抱えて跳ぶことだと、このバンドは知っている。飛翔は“希望”ではなく、むしろ、“逃げたい”という無意識の衝動のようだった。そうして跳ねた音の先に、どこにも辿り着かない美しさがあったように思える。
MCでは寺澤光希が「近松8周年おめでとうございます。“変わる日々で、変わらず鳴らす。”これってとても難しいことだと思うんですよね。周りの環境や人は常に変わっていく。矛盾なんだけど、その中で人や場所を大事にしていくには変わり続けないといけないと思ってる。俺たちにとって、あなたと変わらない距離で歩き続けるためにあるタイトルだと思う。俺たちの、あなたの日々の歌を歌います」と言い、10月25日から始まるツアータイトルにもなっている『生活』を披露。
この夜の軸はここだったように思う。“変わる日々”というイベントのテーマを引き受けるように、CUTMANSは“変わらない日々”を音にした。静かで、反復的で、少しだけ歪んだ日常。その日々の中で溺れそうになりながらも、誰かのために呼吸を選び、歩き続ける。そのまなざしが音に乗っていたように感じられる。
生活の中で、つい意識せず過ごしてしまっている日々を立ち返るかのように映し出した3曲目の『生活』は、聴く側である我々に馴染み、溶けていくことだろう。10月から始まるツアーでも披露するはずなので、是非ともライブで噛み締め味わってほしい。
寺澤光希が「普通なんて平均値に過ぎない!」と残し、4曲目『ずれ』を披露。ギターが鋭く空間を切り裂き、リズムが不安定な心拍を模倣する。ずれる感情、ずれたままの世界、修正不能な過去の存在。
どこか破綻しているようで、それでも成立してしまう日常はわかりやすい光ではなく、細く、薄い明かりのようなものに見える。観客の多くが、立ったまま微動だにしなかったのは、その瞬間の“ずれ”を逃したくなかったからだと思える。
『GOOD HOMIES』は一転、直線的なリズムで空気を切り替えた。けれどもそれは単なる“明るさ”ではない“大切なもの”とはなにか、“大切なもの”とは何かを手探りでも泥に塗れようとも、痛みを経由して出てきた言葉と音が、どこか空虚を孕みながらも前を向こうとしていた。だからこそ、拳を上げる観客の動きもどこか控えめで、慎重だったように思える。
「CUTMANS」の音は安易な共感で応えることはできない。けれども、聴いた誰かの背中をそっと押す。その距離感が、極めて誠実であり、心地よい。
最後の楽曲『優しくなれたら』は、まるで心臓の鼓動そのものだった。“優しさ”は、持っているか否かではなく、“持とうとしたかどうか”で測られる、そんな気がした。
寺澤光希が言葉をかみ締めるように歌う姿からは、音楽に全てを預ける決意が滲んでいたように思える。
“優しさ”をテーマにしながら、どこまでも苦しい。にじむコード進行、泣いているようなハイハット。生きることに不器用な人間たちへ、CUTMANSはこの夜、最大限の“優しさ”を与えてくれた。
そして、鳴り止まぬ拍手に応え、CUTMANSが再び登場。寺澤光希が口を開き「どうでしたか?僕たちの音楽、暗かったでしょう?(笑)普段アンコールやらないんですけど、折角アンコールをいただいたので最後に景気良くいこうと思います!」と明るく話し、アンコールに『夜汽車』を披露。
灯りの減ったステージに、暗がりを裂くような爽やかなイントロが走る。夜汽車は、旅の歌ではない。CUTMANSのそれは“逃避”でも“郷愁”でもなく、もっと混濁した“選ばざる選択”のようなものだった。
観客の間に重く漂う沈黙は、沈黙ではなく“聴く”という行為そのものだった。音を通じて語られる無言の祈りのような数分間。たとえ希望に辿り着けなくても、列車は走る。
「燃やすよりも削るように生きている」CUTMANSにはこの言葉がよく似合う。この夜、近松が記録したのは祝祭ではなく、音楽という形を借りた“告白”だったのかもしれない。
変わる日々の中で、変わらずに鳴らされる音。その意味を、この夜CUTMANSは示した。深い夜の底で響いたその音は、きっとこれからも誰かの足元をそっと支えていく。
<セットリスト>
1.Neighborhood
2.飛翔
3.生活
4.ずれ
5.GOOD HOMIES
6.優しくなれたら
<アンコール>
1.夜汽車
◼︎ライブ情報
<ツアー日程>
10/25(土)千葉Sound Stream sakura
11/26(水)大阪 福島2nd LINE
12/14(日)群馬 GUNMA SUNBURST
1/18(日)福島 郡山PEAK ACTION
1/28(水)愛知 名古屋ell.SIZE
2/15(日)東京 shibuya eggman(ワンマン)
<ワンマン解禁>
2026/02/15(Sun)shibuya eggman
CUTMANS 5周年
ツアーファイナルワンマンライブ “生活”
op / st 1900/1930
-来場チケット- ¥3000
-大学生学割チケット- ¥2000
-高校生学割チケット- ¥1000
【Livepocket/手売り】*並列入場
(要学生証提示)
チケット:https://t.livepocket.jp/e/dua87
公式X:https://x.com/CUTMANS_band
公式Instagram:https://www.instagram.com/cutmans_band
公式YouTube:https://www.youtube.com/@cutmans2266
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@cutmans_band