<ライブレポート>NEWWW vol.30ーーWepeg/烏兎 -uto-/眞名子新

<ライブレポート>NEWWW vol.30ーーWepeg/烏兎 -uto-/眞名子新

WWWが手がける新世代のアーティストを紹介するライブ・シリーズ『NEWWW』が5月27日(火)にWWWで開催された。

記念すべき第30回目の出演アーティストは「Wepeg」「烏兎 -uto-」「眞名子新

三者三様の世界が溶け合い、未来へ向けて確かな余韻を残した。

それぞれの魅力が色濃く現れた、新世代の表現者たちが交差する夜を本記事でお届けする。

ギラつくロックと優しさを内包した「Wepeg」

Soutarou Shimizu

2022年に東京で結成された3人組音楽グループ「Wepeg」は、トップバッターとして登場し、この夜、未来のロックの形を提示した。

英語詞で統一された楽曲は、ロックの荒々しさとオルタナの繊細さを併せ持った音作りを実現。そして何より、観客の胸をやさしく突き刺すようなボーカルrinoの声。

そのすべてが、この日のWWWに確かな熱を灯していた。

幕開けは、5月21日にリリースされたばかりの最新シングル『vtmnts』が、鮮やかに夜を切り裂く。

Alvvaysの『Adult Diversion』を彷彿とさせるようなテンションの高いサウンドに、ギラギラとしたギターリフが絡みつき、観客の耳と身体をじわじわと巻き込んでいく。

まさに、イントロ一発で空気が変わる瞬間だった。

続く『Boys (don’t look back and run!)』では、さらにギアを上げる。ロック色の強さが際立ち、質の高いオルタナティブ・ロックのうねりがフロアを揺らす。

音の鋭さと、それを乗りこなすボーカルの柔らかさが生むバランスが、Wepegというバンドの個性を際立たせていた。

その熱を継いで披露された『Statement ii』

曲が進むごとに、空間の温度が上がっていく。ラスト、Teppei Yamaguchi(Ba)が放ったシャウトが会場を貫いた瞬間、観客の中にあった感情が爆ぜる。静かに燃えていた火が、一気に火柱になるようなエネルギーの爆発。誰もが、その声に心を預けていた。

MCではrino(Vo)が「2〜3年前かな?JohnnivanがWWWに出たのを見てから、ずっと目標にしていた場所なので、今回出演できて嬉しいです。呼んでくださった方も本当にありがとうございます。皆さん楽しんでいってください!」

その言葉は、等身大で、でも確かにこの夜を特別なものにしていた。

そこから続く『Comb Song』は、空気をやわらかく撫でるような楽曲だ。木の下で静かに耳を傾けたくなる一曲で、どこかあたたかい風が吹いている錯覚すら覚える。少しの哀愁と、少しの優しさ。感情の輪郭がくっきりと浮かび上がる、繊細な楽曲だった。

『Summerhits』は、『vtmnts』とともにリリースされたばかりの新曲。その名のとおり“夏の一過性の熱狂”をテーマにしているようで、どこか切ない。熱さというより、静かに体温を上げていくような湿度のある楽曲だ。盛り上がりすぎない、けれど確実に染み込んでいくような、稀有なサマーチューンのように感じた。

そして『Vamos Football』では、曲名から受ける軽快さとは裏腹に、どこか破滅的なニュアンスが漂っていた。人生のどうしようもなさを、コミカルに、でも確かに本音で歌い上げていた。

ギラついた幕開けから始まり、温もりと余韻で終わるそのセットリストの構成は、バンドの音楽的センスの高さと、ライブ全体に対する美意識すらも感じさせた。

この夜、Wepegはたしかに、渋谷WWWという舞台で夢をひとつ叶えた。そして、その音は誰かの夢をまた生むのだと思う。

NEWWWという“今”が、未来を照らした一夜となった。

Wepeg 公式HP https://www.tengokukunyang.com/

詩情と遊び心が同居する「烏兎 -uto-」

Soutarou Shimizu

2023年、東京都にて結成した「烏兎 -uto」-は、北海道帯広出身の幼馴染、窪田ひかり(Pf)、ベイ佐藤(Vo)による2人組ユニットだ。

バンドセットで登場した烏兎 -uto-は静かに、そして穏やかに演奏を始めた。まるで遠くからそっと差し出された手のように、観客の感覚を包み込んでいく。

ピアノの旋律がゆっくりと空気を染め上げたその瞬間から烏兎-uto-の物語が始まった。

1曲目は『なんでもいいよ』MVも公開されているこの楽曲は、烏兎の持つやわらかさと、音楽的な洗練が一つに溶け合った一曲だ。ベイ佐藤(Vo)の声は優しく、そして透き通っていた。

その歌声に導かれるように、窪田ひかり(Pf)が奏でるピアノの音がくっきりと輪郭を持って響き、サックスが甘く揺れる。温度としてはぬるま湯のように心地よく、それでいてどこか踊らずにはいられないグルーヴがある。

1曲目にして観客の身体が自然に揺れ、心がほぐれていく様子が見て取れた。

曲が終わると、ベイ佐藤が明るい声でバンドメンバーを紹介する。その姿からは、演者としての誇りというより、仲間と音を鳴らせる喜びが滲んでいた。

続いて披露されたのは『旅する人へ』リズミカルに刻まれるビートと、小刻みに揺れるメロディが心地よい。自然と足元でステップを踏みたくなるような、軽やかさがある。

まるで、初夏の路地裏で陽だまりを探しながら歩いているような感覚だ。

MCでは、ベイ佐藤が笑顔で語る。「こんばんは〜烏兎です!楽しくてね、笑みが溢れてしまうんですよね笑」

その言葉通り、ベイ佐藤の表情は終始ほころんでいた。MCは続き、この春の出来事に触れる。

「4月23日に1st EP『Blessings of the Sun』をリリースしました。翌週には『Goes On』のMVも公開され、ラジオにもたくさん呼んでもらって。ほんとに嬉しいことがたくさんありました!」その声には、少し驚きながらも確かな自信を得ていく若き表現者の感慨が滲んでいた。

さらに、「北海道のドラマ『ススキノ・インターン』の主題歌も担当させてもらいました!」と、故郷への想いとともに話し、こう締めくくる。

「今からやりまーす!」客席からは自然と拍手が沸き起こった。そして披露された『ハミング』は、まさにその流れにぴったりの一曲。柔らかく明るいコードに乗せて、心の奥に眠る“軽やかさ”をそっと呼び覚ますようなナンバーだ。

聴いているうちに、不安や焦りといった負の感情がふっと遠ざかっていく。明るい気持ちになれる音楽とは、こういうものなのだろう。

ラストに演奏されたのは『Goes On』

MVでも既にその世界観が味わえるのだが、ライブで聴くとその説得力は一段と増す。

ピアノとサックスが絡み合い、優しくも力強いフレーズが浮かび上がる。タイトルの通り、“それでも進んでいく”という気持ちが音に宿り、まるで背中を押されるようだった。

悲しみや迷いを抱えたままでも、それを肯定してくれるような音楽。そんな烏兎-uto-の音は、目の前の世界をすこしだけ、でも確かに、やさしく変えてくれる。

全体を通して印象的だったのは、烏兎-uto-の音楽が持つ“呼吸”のようなリズムだ。

烏兎 -uto-は、ただ“鳴らす”のではなく、“届ける”ということを忘れないバンドなのだろうと思えた。その誠実さと、伸びやかで詩的なサウンドが、この日のNEWWWというイベントに、確かな“やわらかさ”を添えてくれた。

烏兎-uto- 公式HP https://lit.link/utojp

深い郷愁と物語を音にした「眞名子新」

Soutarou Shimizu

最後に登場したのは、シンガーソングライター「眞名子新」

柔らかくも芯のある声と、情景を描く言葉の力。そしてバンドセットと登場した堂々たる佇まいは、まさに“トリ”にふさわしい存在感を放っていた。

1曲目は『ライリーストーン』冒頭から早いテンポで一気に駆け抜けるこの楽曲は、勢いだけで押すのではなく、その中にどこかカントリーの香りを感じさせる。

広がる空、乾いた地面、そんな景色が一瞬で立ち上がる。

眞名子新の歌は、軽やかさの中にも抑揚があり、音の波に乗るように、しかし語りかけるように観客の心へと届いていく。

続く『ラジオ』は、深夜の静けさを知る人々にとっての共感の塊のような楽曲だ。

「ラジオを聞いてるなんて時代遅れかい?」と問いかける歌詞に、筆者も思わず頷く。現代にあってなお、ひとりきりの夜にラジオが灯してくれるあの“心の灯火”を、眞名子新は見事に音楽へと昇華していた。

言葉を尽くさずとも伝わる“気配”のような温度。それを音楽で描ける才能が、そこにあった。

『月の兵士』では、歌い出しから語りかけるような歌声が印象的だった。まるで物語を聞かされているかのように、会場の空気はふっと静まり、優しく心の奥へと染み入っていく。

曲が進むにつれて、声に熱がこもり、聴き手の胸の内をひそかに揺さぶる。感情の機微をこんなにも丁寧にすくい上げることができるアーティストは、そう多くない。

4曲目『一駅』の曲間では口笛が静かに響く。郊外のプラットホームに佇むひとりの旅人の姿が、ふと浮かんだ。

情景がすっと脳裏に描き出される楽曲であり、日常の一コマが、切なくも美しく結晶化していたように感じた。

ここで眞名子新は改めて挨拶をした「改めまして眞名子新です!よろしくお願いします!」と、笑顔で語り「5月14日に1stフルアルバム『野原では海の話を』をリリースしました」と告げ、そのアルバムから『出自』を披露すると宣言。

静かにアコースティックギターを弾き始めた。

『出自』は、ハーモニカの音色が郷愁を誘う一曲だ。自分自身に問いかけるような歌詞が続き、聴く者に優しく“原点”を思い出させる。都会の喧騒を一瞬忘れさせるような、素朴でいて深い響きがあり、自分という存在の根っこに優しく触れるこの楽曲は、懐かしさと共に、明日への希望もそっと添えてくれる。

そして最後に、アルバムの表題曲である『野原では海の話を』を披露。フォークとカントリーを見事に融合させたこの楽曲は、自然の風景と人間の想像力が音楽の中で交差する、眞名子新の真骨頂のように感じられる。

まるで広い野原に寝転びながら、遠く見えない海の話を誰かと語っているような、静かで壮大な対話が、音楽の中に確かに息づいていた。

曲が終わっても鳴り止まない拍手。アンコールを求める手拍子が一体となり、彼をステージへと呼び戻す。

「あざす!予定してなかったので(笑)みなさんのおかげです!ありがとう!」と照れくさそうに再登場すると、彼はギターを構え、アルバムのラストに収録された『海の一粒』を弾き語る。

この楽曲は、アルバムの締めくくりにふさわしい、静謐な祈りのような一曲。波の音のように寄せては返すギター、砂にそっと残る足跡のような歌声。最後の最後に、ひとしずくの“想い”を落として、ライブは幕を閉じた。

眞名子新は、派手な演出で感情を煽るタイプのアーティストではない。だからこそ、静かに灯るランプのような温もりが、そこにはあったように思える。

眞名子新が残してくれたやさしい残響が、我々に確かな意味を与えてくれた夜となった。

眞名子新 公式HP https://linktr.ee/manakoarata

NEWWW vol.31

日程:2025/7/30 (水)

時間:OPEN 18:30 / START 19:30

会場:Shibuya WWW

料金:¥1,000 (税込 / スタンディング / ドリンク代別)

出演:cephalo、SleepInside、与謝野 (safmusic & 浅井杜人)

チケット:e+ (https://eplus.jp/newww-vol31/)

Livepocket  (https://t.livepocket.jp/e/newww_vol31)

公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/018954.php

INFO:WWW 03-5458-7685

WWW/WWW X 各種リンク

公式HP:https://www-shibuya.jp/

X:https://x.com/WWW_shibuya

Instagram:https://www.instagram.com/www_shibuya

この記事を書いた人

執筆
高島よしお
1997年生まれ/東京都出身 趣味は「フィクション」と「散歩」 年間通して映画を平均400本観ます 音楽は平均1200時間聴きます