DeNeelは今、変わりつつある。いや、とはいえ進路を折り曲げたわけではないのだから、より自由度を高めて可能性を広げている、と記した方が正しいだろうか。今年1月にミニアルバム『BRAIN WASH』をリリースし、東名阪ワンマンツアーを経てライブの熱量はさらに上昇。そんな彼らの現在のポジティブなバイブスが、5月13日に配信開始された最新シングル「HONEY」に詰め込まれている。都市に落とされる仄暗い影を表現してきた彼らが、徹頭徹尾踊れるポップチューンをいま放った背景と、その制作の舞台裏に迫った。
文:サイトウマサヒロ
昔の自分にバカにされても今を楽しみたい
ーーDeNeelは今年に入ってからミニアルバム『BRAIN WASH』をリリース、東名阪でのワンマンツアーを開催しましたよね。バンドとしての手応えはいかがでしたか?
中野エイト(Vo):初めてワンマンをやったのが2024年の1月なんですけれど、それから着実に規模を広げられてるし、僕たちの音楽が届いている人数が増えてきてるなっていうのを肌で感じられたツアーでした。ライブの趣向もめっちゃ変わって。
龍野リョウ (Ba):『BRAIN WASH』のリード曲「クレイジーレイジー」がダンサブルな曲で、その影響が「HONEY」にも強く表れてると思うんですよね。ワンマンツアーでダブルアンコールが起こったんですけど、本編で一番盛り上がった曲をやろうっていうことで、「クレイジーレイジー」を2回演奏して。ダンスの要素は俺らのベースにあるし、お客さんもそれが好きなんだなっていうのがツアーを通してわかりました。
中野エイト(Vo):ある時期から「ライブは楽しいものだ」っていう考え方に切り替わって、それによってリョウヤの書く曲も変わっていったっていうか。今までタオルを回したりジャンプしたりするような曲ってあまり多くなかったんですよ。しっとり聴かせる曲も多かったし、ダンサブルだとしてもミドルテンポでちょっと身体を揺らす感じで。その時はひとつのショーとして、劇や映画を観せる感覚で作り上げたかったから、ある意味でお客さんとの間に仕切りがあって。だけど、バンドが成長する中で、裸でぶつかり合うような状態が合うようになってきた。段々、ライブで盛り上がるポイントが増えてきたと思いますね。
日野ユウキ(Dr):お客さんが楽しめる曲が増えるにつれて、僕も一緒に楽しむというか、まず自分が楽しむっていうスタンスに変わってきました。
中野エイト(Vo):(日野は)よく笑うようになった(笑)。
ーーめちゃくちゃ良いことじゃないですか(笑)!
中野エイト(Vo):今のウチらのライブを、バンドを始めたての自分たちが見たらどう思うかな? 俺は、多分ちょっと鼻で笑う気がする。ポップなことやりやがって、ジャンプとかさせやがって、みたいな。「曲、聴いてよ!!」とか言ってると思う(笑)。
龍野リョウ (Ba):わかる。
浦野リョウヤ(Gt):俺もそう思う。
中野エイト(Vo):でもそんな自分に、音楽をもっと自由に楽しんだらええやんって言ってあげたい。
ーーライブに対するスタンスが変わるきっかけはあったんですか?
浦野リョウヤ(Gt):バンドを始めた当初は、お客さんが拳を上げたりすることもなかったし、僕自身も「なんで拳上げるの?」って思ってたんですよ。それが「Hz」や「Vision」を出した辺りから少しずつ、煽ったりしなくてもやってくれるようになってきて、「あ、確かに楽しいかも」ってわかるようになって。その頃からライブを意識するようになっていった感覚がありますね。
ーーそのようにバンドが徐々にオープンマインドになっていく中で、最新曲「HONEY」はどのように制作が始まっていったのでしょう?
浦野リョウヤ(Gt):始まったのはツアー中ですね。こんな曲があったら良いんじゃないかっていう感じで、合間に作り始めて。
龍野リョウ (Ba):録ったのはいつやったっけ?
浦野リョウヤ(Gt):3月。ツアーが終わってすぐ録って。
ーーツアーの勢いのまま、相当なスピード感で完成まで持っていった?
浦野リョウヤ(Gt):頑張りました(笑)。いつもより早いですね。
ーーということはやはり、ライブを意識して制作に臨んだのでしょうか? わかりやすくクラップの音が入っていたりしますし。
浦野リョウヤ(Gt):そうですね。みんなが笑顔で楽しめるような曲がいいなと思って、今までにないくらいポップに仕上がりました。自由にノってもらいたいなと思いつつ、アクションしてほしいところはしっかり示したり、反応を思い浮かべながら制作しましたね。
ーーDeNeelがポップな方向に舵を切るのは、ライブをもっと楽しく、っていう狙いだけではなくて、これからより多くのリスナーに楽曲を届けていこうという意識の表れのような気もしています。
浦野リョウヤ(Gt):仰る通り、暗くてカッコいい、アングラ感がある曲が大好きではあるんですけれど、ポップな曲も僕らには必要だと感じてます。
中野エイト(Vo):ただ、意図的に方向性を変えたいとは思ってないですね。これからも色々なことをやっていけたらいいなって考えてるくらいです。DeNeelがDeNeelであったらいいと僕は思ってるので。どんなジャンルをやったとしても、僕らがやったら僕らのサウンドになるから、昔からスタンスはあまり変わってない。
ーーそう思えるのってすごく大きなことですよね。ただダークな曲をやるのがDeNeelらしさだっていうよりも、もっと深いところにアイデンティティを持っているからこそ、こうして自信を持って新たな方向性に踏み切れるわけで。
中野エイト(Vo):僕は本当にリョウヤが作る曲が好きやし、その時に作りたい曲をやり続けられたらそれでええんちゃうかなって。これからまた暗い曲を出すかもしれへんし、優しい曲を出すかもしれへんし、その都度イメージを塗り替えていきたいと思ってる。その中の一つが「クレイジーレイジー」や「HONEY」だと思ってます。
ーーどんなことをやっても滲み出る「DeNeelらしさ」って、どんなところだと思いますか?
浦野リョウヤ(Gt):ちょっとした懐かしさ、ですかね。僕が聴いてきたのが古い曲が多かったりするので、それが表れてるんじゃないかと。
ーーまさに、バンドのコンセプトである「OSAKA REVIVAL POP」ですね。
浦野リョウヤ(Gt):そうですね。今回の「HONEY」は、特にそれを上手く体現できたと思います。
「HONEY」に宿るレトロ感、アイドル感、親近感
ーー「HONEY」について、もっと詳しく聞かせてください。楽曲のコンセプトは「日常の『だるい朝』を音楽という劇薬で黄金色に塗り替える」とのことですが、これは制作当初から意識していたこと?
中野エイト(Vo):はい。曲のデモが届いて僕が歌詞を書き始める前に、リョウヤに「どんな曲にしたい?」って訊くことがあって。今回は「応援歌を作りたい」って言われたので、朝一にテンションを上げるための歌詞を書いていきました。
ーーリリースはGW明けの誰もが現実を憂鬱に感じるタイミングでしたが、これは狙ってたんですか?
中野エイト(Vo):いや、全然。たまたまです(笑)。
ーーそうなんですね。めちゃくちゃ計算高いリリース計画とプロモーション戦略だと思ってました(笑)。サウンド面では、これまでDeNeelの楽曲では聴き馴染みのなかったようなバンド外の音色も積極的に盛り込まれているように感じました。
浦野リョウヤ(Gt):元々、オーケストラヒットというクイズの出題音みたいな音を使ってみたいと思ってたんですよ。むしろ、この音が合うような曲を作りたいなっていうのが出発点の一つでもあって。
龍野リョウ (Ba):懐かしい感じがするよな。
浦野リョウヤ(Gt):シンセベースの音もEarth, Wind & Fire的な雰囲気を意識しつつ、ファンクに寄せすぎないバランスで作りました。打ち込みが多いですけど、バンドらしさを残すようにアレンジしていて。シンセドラムを被せつつも、基本のグルーヴは生ドラムで組み立ててます。
ーーリッチなアレンジの中でも、しっかりバンドがグルーヴを牽引しているのが印象的でした。リズム隊の日野さん、龍野さんはどんなことを意識していましたか?
日野ユウキ(Dr):シンセドラムの特徴的なフィルが入ってるんですけど、それを活かした上で生ドラムの良さをどう重ねていくかは結構考えたかもしれないです。
龍野リョウ (Ba):ノリを出しつつ、シンセベースのフレーズから乖離しすぎないように演奏するのが難しかったですね。まったく一緒だったら、自分がいる意味もなくなっちゃうので。アウトロでは崩しつつ、頭から終盤まではあのラインを壊さずに弾こうっていうのが、個人的な一つのテーマでした。一回リョウヤに「全然できへんから、シンセベースを消してほしい」って頼んだ記憶もあるんですけど(笑)。
浦野リョウヤ(Gt):「一旦、あのシンセベースありきでやってみてほしい」って返して。僕はデモで完成させ過ぎちゃうと、それが固定概念として刷り込まれちゃうので、最近はあんまり作り込まないようにしてたんです。だけど、今回は自分の気分を上げるためにも入れたくなっちゃって。
龍野リョウ (Ba):その塩梅が難しかったですね。
ーー浦野さんのギタープレイは、それこそファンクっぽいカッティングがありつつ、リフやソロは前に出てガッツリ弾いていて。ソロはどことなくフュージョンっぽさも感じました。
浦野リョウヤ(Gt):僕としては、今までのDeNeelの楽曲と離れないように、ロックなイメージで弾きました。フュージョンは聴くので、意識はしてなかったけど影響は出てるかもしれないですね。
ーー中野さんは、ボーカルで意識したことはありますか?
中野エイト(Vo):キーが高い曲なので、つい強く歌っちゃいそうになるんですけど、この曲はなるべく優しく歌いたかったので、そのバランスが難しかったり。口数も多いから、呼吸する位置もムズかったです。そもそも明るい曲を歌うことに慣れてる方じゃないので、どういう声色が合うかを調整するのも大変でした。
ーーポジティブなムードが漂う箇所で言えば、終盤のコーラスが加わっていくセクションは、どことなく一昔前のJ-POPっぽいですよね。
浦野リョウヤ(Gt):最後にみんなで一緒に歌ってハッピーになれるような、ザックリとしたイメージはありました。
ーー個人的には、SMAPとか、平成の男性アイドルグループを思い出したりしました。歌って踊れる感じ。
浦野リョウヤ(Gt):ああ、確かにアイドル感は意識したところもあるので、当たってるかもしれないです。
中野エイト(Vo):やってみますか、4人で(笑)。
ーーぜひトライしてください(笑)。歌詞に関してはいかがでしょう? ここまでリアルな生活感が漂うリリックって、DeNeelには無かったんじゃないかなと。
中野エイト(Vo):この曲の歌詞は、親近感を大切にしたくて。届く先を考えて、生活にできるだけ近いものにしました。
ーー活動を重ねる中で、リスナーに届く言葉を書こうっていう意識は強くなっていますか?
中野エイト(Vo):ずっとそうです。ずっと届けようと思って書いてます。どうしても自分の感情が入ってくるものだけど、自分が何かを乗り越えた時の感情とか挫折した時の感情って、他の人にも当てはまるものだと思ってるので。そういう場面に出くわした人たちの支えになったりとか、「コイツでもまだ頑張ってるんだな」って感じてもらえたらいいなと思ってます。
ーーなるほど。「HONEY」の歌詞はこれまでの楽曲と比べて、言葉の余白をあえて詰めているような印象を受けました。
中野エイト(Vo):内面を描いた曲だったら余白は多い方が良くて、外的要因に強く働きかける曲は、目に見えるものがちゃんと書かれてる方が良いっていう風に書き分けてて。元々は内側のもの、精神にかかわるものを大事にしてたしそれが書きたかったんですけど、今はミックスされてきて、より具体的な物事や動作を書きたくなってきてるのかもしれないです。
ーーその一方で、「傷跡だっていつかはあなたの詩になる」「雨が降っててもいつの日か雨降る過去を愛せるさ」と、ポップになりきれない日々を肯定するような包容力もあるのが素晴らしいです。
中野エイト(Vo):多分、僕自身がそんなに明るい人間じゃないからですね。「振り切って」って周りから言われたとしてもポップにはなりきれない人間なので、こういう歌詞に「なってしまった」っていう感じです。あと、曲をもらっていっぱい聴きながら書くんですけど、コードが感傷的になったら歌詞もそれに合わせたりするので。
熱狂と楽しさの二刀流で勝負する対バンツアーへ
ーーそういった一筋縄ではいかないニュアンスは、アートワークでも表現されていますよね。
浦野リョウヤ(Gt):風刺画的なジャケットにしていただきました。パッと見はポップなんですけど、ナイフがパンに突き刺さってたり、そこからジャムが血のように流れていたり、絆創膏が貼られたりしていて。傷口からジャムが出てきた結果美味しく仕上がったとも捉えられて、歌詞に沿ったすごく良いジャケットになりました。
ーーアートワークも浦野さんがディレクションしていたりするんですか?
浦野リョウヤ(Gt):グッズをデザインしたり、昔はちょっとジャケットを描いたりもしてたんですけど、最近はあんまりやってないですね。でも相談されることは多くて。今回も、コラージュにしたいっていう提案はしました。
ーービジュアル面での新鮮さで言うと、MVもポップな仕上がりになっていて。
浦野リョウヤ(Gt):急に明るくしすぎても「なんだこれ?」みたいになっちゃうので、監督さんとメンバーで相談しながら、良いところを探っていきました。ダンサーの方々も参加してくれたので、こっちも「良いよ! ナイス!」とか掛け声を掛けて。
日野ユウキ(Dr):ヤジを飛ばしながら撮影しました(笑)。楽しかった。
中野エイト(Vo):俺がソファに座ってる時に周りで物を持っているのはメンバーの腕なんですけど、みんな乳酸が溜まってしんどそうだった。
浦野リョウヤ(Gt):振り返ると撮影もレコーディングも楽しい曲でしたね。最後にみんなで合唱して歌ったり。
中野エイト(Vo):確かに、楽しい曲やったら自然と撮影もレコーディングも楽しくなるもんなんかな。
ーー改めてこの「HONEY」という楽曲は、今後のDeNeelのスタンダードになるような楽曲なのか、それともあくまでいま現在のモードを示した楽曲なのかと問われたら、どっちだと答えますか?
浦野リョウヤ(Gt):どっちやろ。その間ぐらいの曲かもしれないですね。みんなで楽しみたいという気持ちは強くなっているので、今後こういう曲が増える可能性は大きいですけど、今までのスタイルも貫きながら、DeNeelらしさを表現できたらいいなと思いますね。これからも純粋に色んな音楽を楽しんでほしいです。
ーー7月には東京・大阪での対バンツアー『UNDER DOG』が開催されますね。
中野エイト(Vo):とにかく僕たちがツーマンをやってみたいバンドを誘える場所を作りたいっていうのが開催のきっかけでした。『UNDER DOG』は直訳すると「負け犬」という意味なんですけど、「このバンドとツーマンやって、俺ら勝てるんかな?」って不安になるような相手に、あえて立ち向かっていこうという意思表示を込めたタイトルです。
ーー対バン相手はそれぞれまったく異なる個性を持つバンドですよね。まず、大阪は3markets[ ]。
中野エイト(Vo):スリマは、現場の支配力、巻き込む力が長け過ぎてるなと思ってて。対バンして自分も影響を受けたし、尊敬しているバンドの一つなので、今回呼ばせてもらった感じですね。関係値もあるんですけど、ツーマンは意外としたことがなかったので、このタイミングで。
ーーそして東京は、DeNeelよりも若い世代であるDoonaと。
浦野リョウヤ(Gt):サーキットで出番が前後になった時に初めてライブを観て、全員で「ヤバい!」ってなって。
中野エイト(Vo):お客さんもホンマにすごかったよね。僕らのライブは楽しさと熱狂のバランスを保って、二つの剣で戦っていこうって思ってるんですけど、そういう意味ではスリマが楽しさに、Doonaが熱狂に長けてるイメージがあるんですよ。
ーーそれぞれとの対バンで、DeNeelの二面性が引き出されることになりそうですよね。東京と大阪で違う見せ方をしても面白そう。
中野エイト(Vo):怖いけどやってみますか? 楽しさだけで勝負して3markets[ ]に勝てるのか、熱狂だけで勝負してDoonaに勝てるのか。
浦野リョウヤ(Gt):やりましょうか。とか言って、めちゃくちゃバランスの良いライブをしたりして。
ーー最後に一つ聞かせてください。今回の「HONEY」を聴いても、対バンのバリエーションを見ても、DeNeelはこれからシーンを越えてより幅広いリスナーに届くポテンシャルをまだまだ秘めているバンドだと感じます。そこで、今後こういうフィールドに出ていきたいという願望はありますか?
龍野リョウ (Ba):デカフェスでしょ。
中野エイト(Vo):ずっと言い続けてるからね。今年こそは、って。
龍野リョウ (Ba):絶対ですね。今、ステップアップしていかないとダメだと思ってるので。
日野ユウキ(Dr):ゆくゆくはメインステージに。
中野エイト(Vo):あとはチャートに乗りたい。一位取りたいね。数字大好きなんで。YouTubeの再生数とかずっと見てるんで(笑)。
告知
【DeNeel presents『UNDER DOG』】
<大阪>
2026年7月2日(木)
@ Yogibo HOLY MOUNTAIN
w / 3markets[ ]
<東京>
2026年7月10日(金)
@ 渋谷近未来会館
w / Doona
チケット
¥3,800 (税込/D代別)
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イープラス https://eplus.jp/deneel-underdog2026/
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