Column

【前編】ドラム初心者・中級者へ プロドラマー『関優梨子』に聞く上達のコツ 

2024.11.15

プロドラマー『関優梨子』

18歳からドラムを始め、バンド活動を経験した後にフリーランスに転身。

わずか数年で『カンザキイオリ』など国内外の様々なアーティストのサポートやレコーディングに参加し、現在は『KANA-BOON』のサポートメンバーとしてツアーに帯同するなど、まさに第一線で活動する注目のドラマーだ。

今回の記事ではドラムを始めたきっかけや、アマチュアからプロになるまでの練習方法から、初心者・中級者ドラマーに向けて上達する方法やプロならではのドラムとの向き合い方を聞いてみた。 

吹奏楽部からドラム未経験で音楽の専門学校へ

――ドラムを始めたきっかけは?

初めて吹奏楽部の演奏会を見に行った時のドラマーの女性がカッコよくて、その影響で中学校から吹奏楽部で打楽器を始めて、高校も吹奏楽部に入って打楽器をやり続けていました。

高校を卒業したら就職か進学か悩んでいたところで音楽の専門学校のドラムコースの存在を知って専門学校に入学しました。本当になりゆき(笑)

――では、ドラム未経験で専門学校入学した?

そうですね。吹奏楽部時代に少し触れていた程度で、ほぼ未経験で入学しました。なのでドラム歴は短い方だと思います。

とにかく基礎練習の毎日を過ごす

――専門学生の頃にやっていた練習方法は?

とにかく熱心に毎日毎日基礎を練習していましたね。これは吹奏楽部の経験もあったと思います。

学校の授業以外でもスネアだけのレッスンに通っていたり、バスドラ、スネア、ハットなどなど1つ1つをとにかく正確に叩けるように研究と練習を繰り返していました。

――その練習方法はプロになるために考えながら練習していた?

いや、どちらかというと「自分の知っている練習しかできなかった」というのが正しいですね。

まず『ドラムセットの練習』のやり方が分からなかったので、最初は吹奏楽でやっていたBPM=60 から、4,8,3,16,6,32分音符を行ったり来たりする『チェンジアップ』と呼ばれる練習をよくやっていました。

師匠との出会いで確信に変わった

――プロになろうと思ったきっかけはありますか?

始めた頃からずっとその時その時の課題に取り組んでいただけなので、今でもプロの自覚はあまりないかも(笑) 「プロになりました」って宣言したり、資格が必要なものでもないので。

ただ、ドラムをしていて大きな転機があったのが、師匠である『村石雅行』さんとの出会いでした。21歳の頃、村石さんにドラムを見てもらった時に基礎力の高さを褒めてもらって「今まで経験したものがドラムで使えるんだな」と師匠が裏付けしてくれた感じです。

『スキマスイッチ』のツアーサポートなど、様々なアーティストのドラムを叩いている日本を代表するドラマー『村石雅行』さんのドラム道場に入門。そこでドラムの全てを学んだようだ。

ルーツミュージックを聴いて理解すること

――ドラムをやっていて「上達したな」と思ったきっかけやタイミングはありましたか?

ある著名のプロドラマーの方にアドバイスを貰った時に「もっとルーツミュージックを聴いた方がいいかな」とアドバイスをいただいてから、自分なりに試行錯誤していたタイミングでルーツミュージックをカバーするバンドに誘われて活動しました。

2年ほどルーツミュージックに触れて全世界にYouTubeを発信したり、そのバンドの企画でニューヨークでライブをしたり、色々な経験をさせてもらったことがスキルアップやドラムへの考え方に大きく繋がったと思います。

――ルーツミュージックをカバーした経験から変わったことは?

昔のバンドの音源を聴くと、ドラムの音色がルーツや年代によって現代とは全く違うので、理解することでドラムの音の出し方のレパートリーが増えました。

その経験から曲や人に合わせて音色を変えてアーティストに提供する意識に変わりました。

プロドラマーになるための練習方法とは?

――現在の練習方法やルーティンはありますか?

今は昔と比べて毎日練習するというよりも、サポートしているアーティストの曲を覚えたり、レコーディングのためにドラムフレーズを考えたりする方が多いですね。

なので最近はクリエイトの方に時間を使っています。ルーティンとしてはライブ前にパットを置いて16分音符のアクセント移動の練習をやっています。ライブ前の腕ならしみたいな感覚かな。

――自身がバスドラの音量を指摘された時に意識したことはありますか?

マインドとしては手で出来ることは足で出来ないといけないと思っていて、大体のドラマーは手の練習時間が多い気がして、普段から使っていない足は手の倍以上に練習をしないといけない。なので、伸び悩んでいる人は足の練習が足りないと思います。

――「ドラムの練習」ではなく「ドラムセットの練習」という考え方がプロらしいなと思いました。

元々はマーチングバンドの楽器がまとまった形なので、本来は全て手で扱う楽器なんですよね。なので足も手と同じように出来ないといけないと思います。

――プロになるには譜面って読めた方がいいのでしょうか?

プロのなかにも譜面が読めない人は沢山いるので、読めないといけない訳ではないと思うけど、スタジオミュージシャンを目指すなら必要ですね。現場で譜面をかけた方が対応しやすいので、読めて損はないかなと思っています。

スティックの正しい持ち方がとても大切

――個別レッスンも行なっているみたいですが、初心者や中級者のドラマーでよく見る「修正点」はありますか?

音楽を楽しむためにドラムをしている人もいるので賛否あると思うんですけど、スティックの持ち方がアバウトな人が多いですね。

お箸の持ち方がおかしいと小さい豆が掴めないのと一緒で「落ちなければオッケー」と安易な考えで持っていると上達が遅れます。クセがついて修正に時間が掛かるので、レッスンでは生徒さんのスティックの持ち方は必ずチェックしています。

プロになるために大切なこととは

――ライブ中に意識していることや大切にしているものはありますか?

ずっとヴォーカルを意識してますね。ヴォーカルが1番真ん中でお客さんと戦っていると思うんです。なのでライブ中はずっと目で追いかけていてます。

ライブでもヴォーカルの様子を見てアドリブで対応できるように曲と曲の合間で小さい声でコミュニケーションを取ったりしてます。

――最後に初心者や中級者のドラマーへ上達するアドバイスをください。

言われたことを忠実にやることですね。レッスンを受けている人なら出された課題をちゃんとやること。そして自分なりに模索することです。

何事にも疑問を持って「なんでこの人はこう言ったんだろう」「私はこう思う」と自分で考えて、自分で選択することです。

独学の人は尊敬する人を見つけるということですね。師匠がいる環境の方が成長のスピードは絶対に早いと思います。プロの経験や考え方を間近で感じられて経験ができるのでレッスンに通うことはおすすめです!

プロフィール

関 優梨子 プロドラマー

東京都杉並区生まれ。中高の吹奏楽部でパーカッションを担当し、18歳から本格的にドラムを学び始め、『村石雅行』『Ralph Rolle』に師事。

現在はフリーランスのドラマーとして、『KANA-BOON』『カンザキイオリ』など様々なアーティストのサポートを国内外問わず行なっている。

YAMAHA音楽講師資格所持。個人でもドラム教室を開講しており、生徒数は20名を超える。

各種SNS

HP:

https://yuriko-seki-drums.jimdofree.com/

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twitter.com/yurikoseki_drum

Instagram:

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www.youtube.com/@yurikoseki_drum

ライター:渡邉 哲哉