2026.02.09
電車内、制服を着崩し、単語帳を握りしめる学生。マーカーの引かれたボロボロの参考書を見つめるスーツ姿の社会人。「いくつになっても学びは尽きない」なんて言葉は、どうやら真実らしく、どこまで行こうとも勉強の2文字を見て見ぬふりはできないようだ。
そこで本記事では「勉強に集中できるBGM」として作成した全15曲を束ねたプレイリストから5曲をご紹介。穏やかな音像で目の前の作業に没入させながらも、ふと耳を傾けた時、確かに激励を飛ばしてくれる楽曲をセレクトした。
文:横堀つばさ
新体制1発目のシングルとして、雨のパレードが2019年4月にリリースしたナンバー。共同プロデューサーに蔦谷好位置を迎え入れることによって取り込んだ新鮮な空気に乗って、広大な大地をパワフルに蹴り上げるトライバルなビートと解放的なメロディーが飛翔していく中、<Ahead, Ahead, Ahead, Ahead>とシンプルな1句が繰り返し提示されていく。
当時「ピンチはチャンスじゃないですけど、こういう時だからこそ描けることがあるのかな」と口にしている通り、蔦谷と推敲を重ねて最終稿へ至ったというリリックは、3人になった雨のパレードの決意に満ちており、震える足を握り拳でぶっ叩くための凱歌に自ずと成長していった。
2023年に発表されたEP『Human Being』や2024年に産声を上げた6thアルバム『Strata』は、日々毛が生え変わり、細胞もリプレイスされていく人間の肉体性を担保しつつ、音楽的探究を推し進めた1枚だったが、こうした原点回帰が実現可能なのは、第2章の始まりと称した『Ahead Ahead』でお茶の間を視界に捉えたミュージックを志向したからこそ。現在の彼らの下敷きであると同時に、靜かに聴き手をモチベートしてくれる1曲である。
「仕事や働き方は、それぞれの表現や生き方そのものだと思った」。2026年1月に結成10周年を迎えた台湾出身の日本語で歌うロックバンド・ゲシュタルト乙女のMikan(Vo/Gt)はこう話していた。
ここでいう仕事とは、スーツに身を包み、革靴を鳴らして、満員電車にすし詰めにされる月曜日から金曜日までと必ずしも同値ではない。言葉巧みにスラスラと思いを伝えられる人がいれば、脳内でパチパチとそろばんを弾ける人がいるように、彼らは各々の得意領域において自身を隅から隅まで表し抜くことを仕事と呼んでいるのである。そして、その人生観は2024年8月にドロップされたEP『仕事』のタイトル曲であるこの歌にそのまま注入されている。
特筆すべきは、緩やかな四つ打ちで編まれるサビを導く<「仕事」を抜け出そう>の1ラインだろうか。飾り気のない、しかし間違いない艶めかしさを備えた歌声で<一周回った電車路線は何度走っても>と退廃的なムードを滲ませ、<最初の道をちゃんと確かめれたら>とプリミティブな情熱を見直した先で至る、鍵カッコ付きの“仕事”からの脱却。ぼんやりと義務感に引っ張られてタスクをこなすのではなく、豊かな人生をその手で掴み取れと2人は語りかけているのだろう。
紙の上を鉛筆が走る。炭素の粒が白へ吸い付く。強い筆圧でパリパリと鳴くノート。凝り固まった筋肉を剥がすように、小さく声を漏らして伸びてみる。少しばかりお尻が痛くて、腰をトントンと2度叩く。
2019年結成の3人組・幽体コミュニケーションズが2025年5月にリリースした1stアルバム『文明の欠伸』にパッケージされたこの曲は、こんな光景をありありと出現させる。
足音がやけに響くねずみ色の絨毯と少し褪せた本の香りを想起させるアコースティックな音色で記されるのは、気づけばレストランが入れ替わるような街の片隅で送る生活のこと。
穏やかな営みと対照的に、<「戦争、戦争」と心の中で呟いてみる>と惨い世界を記憶の外へ追いやらないようにするからこそ、句点を打つ<明日は図書館に行くのだ>の1行は平和を噛み締めるみたいなフィールを宿しているわけで、paya(Vo/Gt)が同ナンバーを「毎回泣きそうになります」「重要な位置を占めている曲ですね」と語っているのも納得だ。自習室や図書館に籠ることも増える勉強のお供に、瑞々しい発見をもたらしてくれるナンバー。
<How do I walk this line now?>から始まった旅が、少しずつ明るさを纏っていくピアノの音や段々とホーリーな性格を強めていくゴスペル的なコーラスワークと共に<’Cause the truth I feel>と結ばれていく。
あらゆる芸術からの刺激に慣れ、にっちもさっちも行かなくなった毎日において、どうにか光を見失わないようにと綴った同曲には、「10年に1回あるかないかぐらいの大きな悩みを抱えるタイミングだった」「日々アンバランスで倒れそうな状態で生きていた」という長塚健斗(Vo)がメンバーと話し合いを重ねることで辿り着いた「WONKこそが自分の居場所だ」なんて実感が充満しているようだ。
問いにぶつかり、無知を知り、最終到達地点とのギャップに焦る日々だろうと、何度も壁に激突すれば欠くことのできない信念が見えてくるはず。人生の岐路に立ち、アンサーを見失った時、灯台さながらの道標となってくれる4thフルアルバム『Shades of』の開幕曲。
ヒーローとヴィランがそれぞれの正義と理想を獲得するためにぶつかり合い、分かち合えない感情を分かち合うアニメーションのオープニングとして添えられた1曲が、アコースティックバージョンとして再び生を受けた作品。
彼らの楽曲がお手本のような格言まみれであることも、4人の背中にはその言葉たちの重量と責任を背負う者としての矜持が刻み込まれていることも今に始まったことではないけれど、イントロのひりついたリフや歌声の裏で蠢くベースラインが後景化し、ポップス然としたコーラスワークが随所に配置されるようになったことで、一語一語が一層太く描写されていく。
ことさら『ひたむき』は<もう一歩 あと一歩 間に合えって 繰り返す><ただ一歩 でも一歩 明日へ って繰り返す>と昨日よりも今日、今日よりも明日がベストだと言い切れるように両足に力を入れ直すナンバーなわけで、ひとつひとつを噛み締めるこのアレンジメントの効果は絶大。
渋谷龍太(Vo)はひたむきというワードに対して「いろいろなことを見据えた上での姿勢という気がしているから、意志を感じる言葉」と語っているが、SUPER BEAVERの口から放たれるこの4文字は、資格に向けて、合格にむけて、あるいは成長に向けて、机へと向かうあなたの姿をダイレクトに言い表しているはずだ。