DigOutでは1月頭に「TikTokで2025年に流行った曲まとめ」と題し、2025年に見つけた作品を振り返ったが、もちろん2026年も新しいバンドたちとの出会いが待っているはず。
そこで本記事では「2026年にバズりそうなアーティスト」として、今年更なる飛躍を遂げること間違いなしのバンドを、もっと多くの人に出会ってほしい音楽を一挙にご紹介。
2020年代も後半戦へと差し掛かった今、次なるシーンを開拓するのは誰か。その筆頭株になり得る可能性を秘めた全6組との邂逅をここに。
文:横堀つばさ
Cloudy『無責任な肯定を』
2026年1月に渋谷WWWでの振替公演を成功に収め、2026年11月に渋谷CLUB QUATTROでのワンマンを決めた、2023年7月始動の4人組・Cloudy。
そんな彼らが2025年夏の「RO JACK」優勝特典として世へ放った『無責任な肯定を』は、過去のディスコグラフィーよりも軽量でバウンシーなビートと、紙やすりがごときザラつきを含有した小柴タケト(Vo/Gt)の歌唱がコントラストを生む1曲である。
とはいえ、そこには決して迎合する姿勢はなく、<全員を愛すなんて正し過ぎて気味が悪い><ロックが真の意味での必需品に なることなんて無いのさ>とテンプレの美辞麗句を拒んでいく。
しかし、ロックバンドに対する妄信にも似たパッションを氾濫させる『曇り空の下より』や『さめない夢』からも読み取れる通り、Cloudyはおずおずと狭い部屋で掻き鳴らしたギターが理屈をブッ飛ばして人生の転機になってしまうのだと知っている。
100人の100点になれなくたって、たった1人の10000点になりたい。小さな手を目一杯まで広げて放つ肯定の宛先は、間違いなくあなただ。
Recca『感情のすべて』
消えない衝動を、飽くなき情景を、薄れない友情を追い求め、府中Flightから全国を巡り続けているスリーピースバンドがReccaだ。
「タワレコメンアワード2025」にも選出された、1stミニアルバム『Emotional Words』の終盤を担う『感情のすべて』では、雄大なビート上で喉を焼くみたいに咆えられる白井紘雅(Gt/Vo)のボーカルとシンガロングの2旋律が絡み合う中<「千年先も僕ら 友達でいようよ」>と何よりも尊い約束が全員の歌唱で交わされていく。
1stデモに収録された『lien』や1stシングル『Starry Night』にも見られる2本のメロディーを並行されるペン使いはReccaの武器とも言えるのだが、そのバックグラウンドにあるのは「ただ全員で歌いたい」と「両の手をくれ」と叫ぶ思いであり、死してなお「この歌よ、残れ」という願い。
ライブハウスで鳴らされる彼らの楽曲は、孤独な夜に書き綴った言葉たちを、僕たちの歌へ変身させる力を備えている。
AKAMONE『本音を言えば』
2024年の始動後、「十代白書2025」でグランプリを獲得、「マイナビ閃光ライオット2025」でマイナビYell Song賞を受賞したのが、大阪豊中を拠点とする3人組・AKAMONEである。
野元純太(Gt/Vo)による限界の一歩先まで踏み込む慟哭にも似たハイトーンや、<「幸せだったよ」>(『本音を言えば』)なんてクリティカルな1行を静寂で縁取る緻密な譜割り、<僕がさ、作りたい 歌詞ノートに残るのは 君の名前ばかりね>(『この恋のことだけはずっと忘れないでいようと思う』)と綴っている通り、愛していた人の喪失を根源とするパーソナルな、しかし恋をした全ての人へ染み入る普遍的なリリック。
そのいずれもがバンドの背骨を築いていることに疑う余地はないが、何よりもシンボリックなのは東里優月(Dr/Cho)と板橋帆乃香(Ba/Cho)がコーラスに加わることで生じるハーモニーだろう。
6カ月連続リリースの第3弾として投下された『本音を言えば』の終盤にハッキリと表れているように、質感の異なる3人の歌唱は、清さと虚しさと愛しさをないまぜにしていく。
すなお『まあるい奇跡』
丸いではなく、まあるい。潤んだではなく、うるうる。煌めくではなく、キラっ。絵本を想起させるほどの柔らかさと穏やかさを宿し、バンド名に違わぬ素朴な音楽を奏でているのが、2025年9月に2ndミニアルバム『Sparkle pop』をドロップした3人組・すなおだ。
するりと吹き抜ける潮風や、足をくすぐるビーチサンダルに挟まった砂の感覚を連れてくる爽やかでフォーキーな音色を土台に、大畑カズキ(Vo/Gt)のどこかレトロな情感を含んだ歌声がじんわりと染み入っていく。
インタビューにて「僕のばあちゃんが表拍で手拍子できる曲を大事にしている」という旨を明かしているように、<まあるい奇跡を止めないで>(『まあるい奇跡』)の1行は長音かつ上行系の飾らないメロディー。
しかし、それでも単調にならないのは、軽妙なギターとリズムが砂浜のガラスみたいに光っているから。「あぁ、人生って悪くない」。衒いのない彼らの楽曲は、心を解放し、スッと肩の荷を下ろしてくれる。
Good Grief『GRAYSCALE』
SiM『DEAD POP FESTiVAL 2026』への出演を一例に、See You SmileやUNMASK aLIVEらと共に、国内ポップパンクシーンから名乗りを上げるのみならず、As It IsやMillingtonとの共演、All HypeやBelmontといった国外アーティストとも共振を見せている4人組。
ポップパンクが身上とする晴れやかなビートを下地にしつつ、ハイパーポップ的なエレクトロニカルな音作りを垂らした楽曲群の神髄は、Yasu(Vo)が「ちゃんと自分の人生を記録していきたいと思っています」「俺は、自分が思ったこと、自分の世界を、ちゃんと表現できるリリシストでありたい」と口にしていることからも窺える、肌で感じた全てを取り込み、苦悩も葛藤をも曝け出す言葉たちだろう。
<I’m gone and defeated Mistakes keep repeating>(『GRAYSCALE』)となかなか成長できない敗北感も、<バイバイ もう泣くなよ>(『GOOD TIMES』)と涙ばかりの日々を超えるための覚悟も抱え込んだGood Griefのミュージックは、絶望と希望が混ざり合いながら訪れる365日そのもの。彼らはその一筋縄ではいかないマーブル模様を「SAD POP PUNK」と呼ぶ。
SAIHATE『stay』
身体中に迸る血液がそのまま湧出するド直球のギターロック。スパーンと抜けるドラミングが地平を拓き、朝露の香りを漂わせる広大なオルタナティブミュージック。そして、年間100本近くの舞台へと立つ、ライブハウス叩き上げの4ピースバンド。2022年に産声を上げたSAIHATEを因数分解するなら、この3つの要素が肝要になるはず。
とはいえ、どのポイントから出発しても最終地点は同じで、荒々しい呼吸とぶっとい歌唱で<狂ったように生きていこうぜ 命尽きるまで>とストラグルする毎日を扇動する『響け』然り、五月雨に振るアンサンブルに乗せて<この場所でもう一度巡り合おう 歌を歌おう>と変わり切れないちっぽけな自分を提示する『stay』然り、回り道をしながらも懸命に明日へ手を伸ばす態度が刻印されている。
いつだってフルスイングせんとする4人は、ともすれば、夢見がちで、歯の浮くような理想を掲げているように見えるかもしれない。
しかし、取材にてメンバーそれぞれが「このバンドが人生だ」という旨を語っていることを考えれば、その生き様に嘘はなし。夢を見ろ。今を生きろ。SAIHATEはそう告げている。

