2026.10.30
負けず嫌いだけど弱虫で、自信家だけど卑屈な自分を、歌なら包み込むことができる。それがこの日、シンガーソングライター・みずほと1時間ほど話してわかった、彼女が音楽に向き合う理由だった。過去も今も、影も光も、全部が本音だから、ひっくるめて曲に閉じ込める。それが、幼い頃からミュージシャンを志し、中学時代にバンドでメジャーデビューを経験した彼女の現在のスタイルだ。
今年2月にリリースされた初のフルアルバム『CIRCUS』は、そんな彼女の軌跡を辿りながら、変化と進化を体感できる一作に。同作と同じタイトルを冠したキャリア二度目のワンマンライブから約9ヶ月を経て、次なる舞台となる3rdワンマン『アツ⤴︎』が控える。そこで今回は、これまでの歩みや創作の裏にある思いについて、じっくり語ってもらった。
文:サイトウマサヒロ

ーー初めて音楽に心を動かされたのは、いつ頃、どんな時でしたか?
最初はお兄ちゃんの影響で3歳からピアノを始めて。その後、お父さんが趣味でギターを演奏する様子を見ていたこともあって、8歳から小学校の幼馴染とバンド活動をやってました。で、それと同じくらいの時期に、お父さんと長渕剛さんのライブを観に行ったんです。そこで「シンガーソングライターってこういう人のことなんだ!」って知って、一人で音楽をやってる人のカッコ良さに気付くきっかけになりました。
とにかくお客さんの熱気が凄かったし、ステージの演出にも圧倒されたし。何より、汗をかきながら全身で歌う姿を観て、音楽と生きている人なんだなって感じて。ギターを弾いたり、部屋にこもって歌を歌ったりするようになったのは、長渕さんからの影響が大きいですね。その時にはもう、音楽だけを頑張りたいなと思ってました。
ーーバンド活動を始めたのも同時期ですし、将来のビジョンが早い段階で見えていたんですね。
小学校の担任の先生もギターを趣味でやってた方で、教室にアコースティックギターが3本くらい置いてあって、「興味がある子は休み時間に触ってもいいよ」みたいな感じで。そこで集まった子達で組んだのが最初のバンドでした。当時はSCANDALさんをひたすらコピーしてましたね。ただ、当時は歌が好きじゃなかったからリードギターだけをやってて、エレキギターに夢中になっていきました。
ーーそれから、人前で歌うようになったきっかけは?
小学校にあった音楽サークルで「コンテストがあるから興味がある子たちで出てみよう」っていう話になって、その時に先生やお父さんに「やってみたらいいじゃん」って勧められて、押されるがままボーカルで応募したんです。そしたら最終のライブ審査まで進むことができたんですけど、周りの同世代の子たちの歌がすごく上手で……そこで変に負けず嫌いなところが出て、「私も歌、上手くなりたいかも」って火がつきました。
元々、自分の声があんまり好きじゃなかったんです。だけど、ピアノをやってたから音感には自信があって。だからこそ、どうやったら歌を好きになれるのか、とにかく色んな人の歌声を聴いて真似っこしながら考えてました。特にYUIさん、絢香さん、いきものがかりさんはずっと聴いてましたね。
ーーそして中学時代には、7人組ガールズバンド・KANIKAPILAのメンバーとしてメジャーデビューも経験しています。当時はどんなことを考えながら音楽活動に取り組んでいたのでしょうか?
本当に環境に恵まれすぎていて、自分でも何が何だかわからない状態の中で色々なことを経験させてもらっていたと思います。どこに立ちたいか、何をやりたいかっていう展望は今振り返るとあまり明確じゃなくて、目の前の頑張らなきゃいけないことをとにかくクリアして、そこから生まれる目標をみんなで形にしていこう、っていう感じでした。
ずっとSCANDALさんが憧れだったので、SCANDALさんみたいな曲を作って、ライブもいっぱいやって、テレビにも出て……みたいなことを夢見ていましたけど、自分がどれだけ凄いことをやっているのかもわからないまま、与えられた環境の中で結果を残すことにガムシャラでした。
ーー幼少期からの話を聞いていても、音楽に囲まれて順風満帆に進んできた印象があって。その環境から得たものも大きいけど、スピード感に追いつくのに必死でもあったと。
下積みが何年もあってやっとメジャーデビューを掴む、みたいなストーリーではなかったので、今になってようやく、当時の自分は何も知らなかったんだなって。アニメの主題歌もやらせていただきましたけど、簡単なことじゃないんだっていうのは、大人になってわかりました。

ーーバンドでの活動を終えてから、ソロのシンガーソングライターとしてのキャリアを歩み始めた理由は?
バンドをやっている時から、一人でステージに立ってみたいという思いはずっとあって、曲作りは並行してやっていたんです。なので、バンドが活動休止することが決まった時に、自然に一人でやっていこうという決断に至りました。私は音楽しか頑張れないっていうか……もう音楽しかないし、自分の表現ができる場はステージしかない。それ以外のことはあまり思い浮かばなかったし、バンドはこの(KANIKAPILAの)メンバーとしかやれないと思ってたので。
ーーちなみに、学校ではどんな風に過ごしていたんですか?
中学校まではめちゃくちゃ明るくて活発で、目立ちたがり屋だったと思います。で、中学3年生でメジャーデビューをしたこともあって、高校は地元じゃなく、友達が誰もいない市内の高校に進んだんですよ。そこで私の性格が180度変わって。
ーーというと?
控えめになりましたね。あまり友達も作らなかったし、目立たなくていいかなって。全然一人でいることも苦じゃなくなって、中学から高校にかけて正反対の人になったと思います。
ーーそれって、もしかすると活動の変化とも関係してるのかもしれない。実際、バンド時代とソロになってからでは音楽に対する向き合い方は違いますか?
はい。ソロになってからは、決定権もその責任も全部自分にあるわけだし、何かを間違えたらその軌道修正をするのも自分。作る音楽に関しても、一人でやるからには全部にこだわりたいし、妥協はしたくない。バンドをやっていた頃以上に、音楽のことを考えながら生きるようになったと思います。
ーー鳴らしたい音や歌いたい言葉も自然に変わってきた?
そうですね。自分がどんなことを歌っていくべきかを考えた時に、何も取り繕っていない、等身大でありのままの自分を歌いたいなと思ったんです。高校時代から一人が好きだったけど、それでも寂しさは感じるし。みんなが感じる孤独や、言葉にしたいけどできないことを歌う人になろうと思いながら曲を作るようになりました。
ーー頂いたアーティスト資料に書かれていた「言えなかった、本音を歌う」というコンセプトは、その思いから生まれたんですね。
私自身、人に本音を吐き出せなかったり、伝えたいことと違うことを言っちゃったり、とにかく言葉で何かを届けるのが苦手なんです。だからこそ、それを音楽に乗せて伝えようと思って、「本音を歌う」を掲げるようになりました。
ーー最初に作ったオリジナル曲は「ミライ」だそうですね。
17歳で、まだバンドをやっていた頃に作りました。昔からたくさんの大人と関わってきて、思っていることややりたいことが言えなくてモヤモヤしていた時に、自分の中に積み重なったものを一つひとつ曲に昇華していこうと思って書いた曲ですね。
ーー「ミライ」をはじめとする繊細なバラードだけではなく、「前科者」のような鋭いロックチューンもあって、みずほさんにとっての“本音”とはそっと打ち明けるだけのものではないんだろうなと思います。
それまではずっと「ミライ」のような曲を作っていて、少し違う曲調に挑戦したいと思ってできたのが「前科者」なんですよ。ただ、その叫びみたいなものを歌うためには、自分の経験だけじゃ足りないかもと思って。絶対に自分では経験しないような色んな映画をめっちゃたくさん観て……不倫の映画とか、犯罪の映画とか(笑)。そこから自分の考えとリンクするものを集めていって完成させました。
ーーということは、必ずしもすべての曲が実体験から生まれたわけではないんですね。
そうです。どこかからインスピレーションを受けて作った曲もあります。
ーーだけどそこにはちゃんと自分の本音と重なる部分があると。楽曲のアイデアが浮かぶのはどんな瞬間ですか?
とにかく私は凄い負けず嫌いで、なんでも一番でいたいっていう変なプライドがあって(笑)。だから、人と比べて自分ができていないなと感じたり、負けてるなと思った時に、曲ができますね。プラスより、マイナスの感情に浸ってる時にアイデアが出てきます。
ーー歌詞を書く上でこだわっていることや意識していることはありますか?
必ず主人公がいて、その人が歩んでいくストーリーを一曲の中で作ることは常に意識しています。あとは、あまり難しい言葉を使いたくなくて。わかりやすく、だけどありきたりじゃない表現を、ずっと模索しながら作ってます。
ーー現在はライブハウスでの活動に加えて、路上ライブも精力的に行っていますよね。SNSで遠くの人にも手軽に音楽を届けられる時代ですが、実際に目の前にいる人に向けて歌うことには、どんな魅力や意味を感じていますか?
やっぱり、リアルに人の心が動いていることがよく分かりますよね。特にストリートでやっていると、ずっと下を向いて歩いていた人が私の前で立ち止まって、イヤホンを取って向かい合ってくれたりする。初めて私の歌を聴いてくれた通りがかりの人が泣いてくれたり、ちびっ子たちが寄ってきてくれたり。そういう反応を見て、「ちゃんと届けられてるんだ」って実感しながら歌うのがすごく好きなんです。もちろん電波に乗って出会ってくれるのも嬉しいけど、実際にその人が見せてくれる表情やかけてくれる言葉が私にとっては大きくて大切なものなので、その出会いを一番大事にして積み重ねていきたいなと思いながら続けています。
ーーそうしてみずほさんの楽曲を聴いてくれる人の存在は、曲作りや活動にも影響を与えていますか?
やっぱりたくさんの人と出会うほど自分の原動力になりますね。躓いた時には、当たり前のように絶対にその人たちのことが思い浮かぶし、自分の歌を必要としてくれる人がこんなにいるんだから立ち止まれないなと思う。
ーーその一方で、リアルとデジタルの垣根を越えた活動を展開しているのがみずほさんの特徴でもあって。SNSの発信に関して、気を付けていることなどはありますか?
SNSには、実際に足を運ぶきっかけになればいいなと思って、ライブ映像をポンポン載せてます。SNSでバズる曲を作ろうという意識を持てば良くも悪くも広がる可能性が増えるんだろうなと感じてはいるんですけど、私のアーティスト像としては違うなって思うから、そこは曲げたくないですね。大きいステージに立ちたいとか、ドラマの主題歌を歌ってみたいとか、そういう夢はあるけど、まずは私が作る音楽に共感してもらって、その結果として私というアーティストが広がっていってほしいと思います。

ーー今年2月にリリースされたアルバム『CIRCUS』についても聞かせてください。初のフルアルバムとなっていますが、どんな一枚を目指して制作を進めたのでしょうか?
歌いたいことはブレずに根本にありつつ、色んな私を知ってもらえる一枚にしたくて、まずは『CIRCUS』というタイトルを決めました。サーカスって、光と闇が共存している空間だと思っていて。人間の明るい部分と闇の部分を一枚の中に詰め込めるように、楽曲を選んでいきました。
ーーこれまで制作してきた楽曲をひと繋ぎにまとめてみたことで、新たな発見はありましたか?
昔の方が闇が強かったのかな、っていう。マイナー調の曲が多かったんですけど、東京に出てきて、それこそストリートを含めて色んな人に出会ったり、愛の温かさに触れる機会を得たことで、光の部分を描けるようになったことに気付きました。
ーーこの数年間の活動で得たポジティブな変化が感じられる一作になったんですね。ちなみに、最も闇な曲と、逆に最も光な曲を選ぶとしたら?
多分、闇は「モノクロの世界」かな。光は「イマジネーション」だと思います。「モノクロの世界」は、イメージで言うと本当に真っ暗な部屋の隅っこにいる主人公の心を描いている。でも「イマジネーション」は、そんな闇さえも引き連れて冒険しにいこうよっていう明るさがあって、それは対照的だなと思いました。
ーーみずほさんが、活動を続けていく中で自分の影の部分を受け入れられるようになったことが表れているのかもしれませんね。
昔は、あまり自分を肯定することがなかったんですよね。何が起こっても、自分ができないから、足りてないからだって思ってきたから、自分を肯定しながら日々を過ごすっていう意識自体がなくって。だけど大人になるにつれて良い出会いがあったから、弱い自分もそれはそれでいいって受け入れられるようになったのかなと思います。
ーーその他に、特に思い入れのある楽曲はありますか?
印象的なのは「ミライ」と「CIRCUS」かもしれないです。それこそ「ミライ」はずっと温めてきた楽曲だし、それを全部生の楽器でレコーディングして歌うことで、曲が育っていったことを実感できて、親のような気持ちになったりしました。「CIRCUS」は、今の私の作曲方法がギュッと詰まったような曲になっていて。私、転調が大好きで、転調しないと気が済まない頭になってるんです(笑)。「CIRCUS」でもとにかく転調しまくってるのが私節なんだろうなと思うし、個性的な曲になったなと思います。
ーーかつては自分の声が好きじゃなかったと語ってらっしゃいましたが、今、みずほさんはご自身の声をどんな風に捉えていますか?
飛行機雲みたいだな、って思ってます。とにかく真っ直ぐで、なかなか消えない。その中にちゃんとした強さがあるんじゃないかなって。

ーー今後の活動についてもいくつか質問させてください。まず、11月28日には3度目となるワンマンライブ『アツ⤴︎』が開催されますね。このタイトルにはどんな思いを込めたのでしょうか?
初めてのワンマンは新たな一ページを作りたいという思いで『New Page』、2回目はアルバムのタイトルをそのまま取って『CIRCUS』と名付けたんですけれど、その『CIRCUS』で皆さんがすごい熱で包んでくれたので、その温度をそのまま次に繋いで一年を終えたいなと思って……出てきた言葉が『アツ⤴︎』でした(笑)。
ーー『CIRCUS』も『アツ⤴︎』もそうですけれど、パーソナルな本音を綴った歌を歌いつつ、お客さんを楽しませるエンターテイナー精神みたいなものもネーミングに滲んでいますよね。
歌を歌ってる私と、それを引っ張って物語を進める私がいるとしたら、後者がタイトルを決めてる感じですね。ワンマンライブは特に自分だけの時間なので、一つの映画を見終わった後に残るようなものを作り上げたいなと思ってます。歌詞の内容や曲調だけではなく、MCや演出も含めた一つのショーとして見せられる場だと思うので。
ーー内側を見つめて書いた曲を、外に届けていく、その両方のエネルギーが共存していることってとても大事だと思います。そうして自分の歌がみんなの歌になっていく過程にも、音楽を続ける喜びがありそうですね。
私の作った歌が誰かの一日に寄り添ったり、何かが変わるきっかけになったり、そうやって我が子が大きくなっていくような感覚は確かにあって。楽曲から何かを感じ取ってくれた方々が一つの場所に集まって一緒にライブを作り上げていくのが楽しみです。
ーーこれまでの2回のワンマンライブを経て、今回はどんなステージを見せようと考えていますか?
今回は映像演出にこだわりたくて。会場に大きいLEDモニターがあるので、今まではできなかったような、一段上のライブにチャレンジしようと準備しています。
ワンマンはバンド編成ですべてが生のリアルなサウンドなので、ちょっとしたスリルや、弾き語りだけではできない楽曲の広がり方もあると思うし、歌をさらに良い形で皆さんに届けられる自信もあるので、ワクワクしてます。
ーー最後に、今後の活動のビジョンを教えてください。この先、どんな音楽を作って、どんなアーティストになっていきたいと考えていますか?
今までは自分の生活を切り取った音楽をたくさん作ってきたけど、これからは自分以外の人と向き合って生まれる歌を歌ってみたいなと思っていて。たとえば、過去にはあんまり恋愛の歌を書いてこなかったんですけど、今だからこそわかる愛情とか心の動きも描いてみたい。
ーー何か具体的な目標はありますか?
一番大きいのは、映画の主題歌を歌うことですね。自分でも映画やドラマを観ていて最後に音楽が流れるとすごく感動するし、それを自分の歌でも実現させたいです。


みずほ BAND SET
3nd ONE MAN LIVE 2026 – アツ⤴︎ –
📅2026.11.28(土)
📍ANTHEM AKIBA
🕰️OPEN 18:00 / START 19:00
🎫前売りチケット2種
各ライブ会場にて販売
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