<ライブレポート>南風とクジラ「道に化なりそうtour〜下北編〜」

<ライブレポート>南風とクジラ「道に化なりそうtour〜下北編〜」

2025年5月17日(土)下北沢近松にて開催された「道に化なりそうtour〜下北編〜」

南風とクジラの4th mini album『道化師の切り札』のリリースツアーとして「melt into the cream」「茶封筒」「純情マゼラン」を迎え行われた。

下北沢のアスファルトは雨に濡れていたが、会場に響いた音楽は鬱屈とした曇り空を振り払うほどに熱く、爽快で、そして美しかった。

音と音の重なりが夜を染め上げていった様子を本記事でレポートしていく。

アンニュイだが鋭さを持った「melt into the cream」

photo by (高島よしお)

トップバッターで登場したのは昨年(2024年)尾貞(Gt) と、ふう(Ba)が加入し、4人編成となった「melt into the cream」

神秘的とすら思えるほどのクールさと、熱量が同居する彼らのステージは、開演早々に観客の視線を引き寄せた。

憂いを帯びてはいるが、力強く歌う鶴園(Vo/Gt)のボーカルが、ステージ、そして全ての音を引っ張る。ベースラインが低く深く響き、ドラムが空間を切り裂く。

MCでは鶴園が「南風とクジラが毎年、近松でやる時に出させてもらってます。ありがとうございます。南風とクジラおかえり〜」と、感謝と挨拶を述べ、鼓動を揺らすドラムとギターが再度心地よく響く。

光と影のコントラストがmelt into the creamのステージでは両の眼に鮮明に映り、聴き手の感情を波のように揺らしながら音が続いていく。

終盤には一層強いビートとメロディ、そしてシャウトが重なり、ラストに向かって空間の密度が増していく感覚に包まれた。

彼らの音そのものが視覚を伴って迫る。そんな芯の強い彼らの演奏は、アンニュイな雰囲気の中に鋭く燃えるような意志を感じさせた。

melt into the cream 公式HP:https://lit.link/meltintothecream

余白の上で踊る「茶封筒」

photo by (高島よしお)

2番手の「茶封筒」は、会場に独特のグルーヴと体温を運んでくれた。

1曲目に披露したのは『高島ゴンザレス』

ベースの歪みが我々の期待を煽り、堂々と“茶封筒の芸術(音楽)”がリングイン。

どこか懐かしく、けれど新しい感覚があり、フォークの優しさにロックの鋭さが添えられている彼らのパフォーマンスは、聴く者をまるごと受け止めてくれるような包容力をもちつつも、観客を踊らせる余裕も感じる。

そんな余裕と包容力を感じる音には、まるで街角で交わされる何気ない会話、いや、明日には忘れているような、心地よい“独り言”のようにも聴こえた。

MCでは「南風とクジラ、リリースおめでとうございます!一旦、小麦粉(水)飲みます。メロンパンのシステムを採用してますので、ライブが終わる頃にパンになってます。外はカリッとして、中はふわっとした人間になりたいと思います。」と、らすてぃー(Vo/Gt)が観客の笑いを誘う。

茶封筒の鳴らす音楽の音数は決して多くない。しかしそれぞれの音が空間を丁寧に染め上げ、観客ひとりひとりの胸にそっと降り積もっていく。

穏やかな空気が支配する彼らのステージは、音と音の間に確かな余白が存在し、その隙間に余韻が残る、そんなステージとなった。

茶封筒 公式HP:https://lit.link/chabutobdna

「純情マゼラン」の渇きは祭りの前兆

photo by (高島よしお)

続いて登場した「純情マゼラン」は、空気を一変させる爆発力で観客を一気に巻き込んだ。

ライブハウスと酒をこよなく愛する純情マゼランは、演奏も見た目もどこか“掴めない”存在だが、その自由さこそが最大の武器のように感じる。

ステージに立った瞬間から漂う、なにかが起きそうな空気。それはきっと純情マゼランが繰り出す祭りの前兆なのだろう。

1曲目『ゾンビネル』では、ギターが鳴り出すと同時に、音が鋭く飛び出し、モリカホ(Vo/Key)の歌声が、その隙間を縫って突き刺さる。

曲ごとにまったく違う景色を見せてくれる純情マゼランのライブは、シリアスと陽気の狭間を行き来するような緩急が、観る者を惹きつけていく。

エレクトリックでサイケデリック味を感じる音楽性も迫力に満ちているが、稲妻アキ(Vo/Gt)と、モリカホの2人が、ステージ上で生みだすエネルギーがそのまま観客へと流れ込んでいく様子は圧巻。

後半に進むにつれ熱を帯び、怒涛のアンサンブルで会場を包んだ。洗練された見事なプレイが終わり、大きな拍手と歓声が飛び交う。

計算では作れない“現場の熱”を、純情マゼランは確かに鳴らしていた。

純情マゼラン 公式HP:https://jyunjyoumazeran.com

現代歌謡エンターテイメント「南風とクジラ」

photo by (高島よしお)

南風とクジラの音楽劇が幕を開け、見藤慶吾(Vo/Gt)のギターが一閃。1曲目に『火焔太鼓』で、ステージが南風とクジラの独壇場に早変わり。

流れるように続いた『千両役者のヌーベル・キュイジーヌ』では、観客の身体は軽やかに弾ける。

3曲目の『ショート・ショート・ストロベリー』では、ジャズの息遣いを感じさせる小粋なイントロが昭和の劇場のように妖しく表現されていた。

楽器のひとつひとつに物語を紡ぐような、聴き心地の良いドラムとギターに、観客の心と足元が自然と躍り出し『ドロハマキ・チョッキリ』のイントロでは、跳ねるようなドラムが響き、サーカスの開始前に、胸を踊らせる少年のような気持ちとなった。

まるでジェットコースターのように振り回されたが、なぜだか清々しく感じられ、下北沢を濡らし続けていた雨雲の影はいつしか遠い彼方に吹き飛んでいた。

ここで“南風とショッピング”の時間がやってくる。進行は高橋直也(Dr)、アシスタントは虎林里奈(Ba)。

商品は、サブスクにはない幻のボーナストラック『朝ですよ♪』が収録された、4th mini album『道化師の切り札』のCD。

『朝ですよ♪』の曲解説を任された虎林里奈は一言「カワイイ」とだけ発言。この楽曲は虎林里奈がメインボーカルを務めた、まさに幻の一曲だ。

最後に高橋直也が爽やかな声色で「おはようからおやすみまで虎林里奈にお任せください!」と締め、後半戦に進んだ。

現代歌謡の真髄を魅せつけた「南風とクジラ」

photo by (高島よしお)

『春よ、ちょっとこっち来い』では、出会いと別れの季節を、痛々しいほどリアルに描写し最後に「青春を歌って咽び泣く春」と歌い、激情の春を締め括った。

『燦然街のニャロメ達へ』では、手拍子が絶えずステージと客席の境界が徐々に溶け、ひとつの“街”のように音で共鳴していく。

本編最後では、情熱を滲ませるようにして閉幕。余韻が漂うまま、会場は一度、静寂を迎えるが、拍手は鳴り止まない。

期待の拍手が重なった先に、再び彼らが姿を見せ、虎林里奈が「お時間は大丈夫でしょうか?」と、問いかけ、アンコール『広島のすゝめ』を披露。

地元広島の名産を歌い、地元の魅力を伝授してくれたアンコールとなった。

南風とクジラが観せてくれたエンターテイメントはこれからも続く。

現代歌謡の真髄を味わいたい方は是非、足を運び体感していただきたい。

セットリスト

1.オープニング

2.火焔太鼓

3.千両役者のヌーベル・キュイジーヌ

4.ショート・ショート・ストロベリー

5.シンガーズ・ハロウィン

6.ドロハマキ・チョッキリ

7.ギャンブル・ギャロップ

8.夜勤

9.春よ、ちょっとこっち来い

10.燦然街のニャロメ達へ

11.エンディング

アンコール

12.広島のすゝめ

「南風とクジラ」 ライブ情報

5/30(金)新栄RAD SEVEN

5/31(土)D×Q神戸

6/7(土)小倉FUSE

6/8(日)宇部BBB

6/14(土)出雲APOLLO

6/29(日)岡山CRAZYMAMA 2ndRoom

7/12(土)広島CAVE-BE

🎫チケットお取り置きはHP・DMより受付中

4th mini album『道化師の切り札』

4th mini album『道化師の切り札』

https://lnk.to/DhgyNy

「南風とクジラ」各種リンク

公式HP:https://mnmkztkjr.jimdofree.com

公式X:https://x.com/kujiraaaaaaaa

公式Instagram:https://www.instagram.com/minamikazetokujira

この記事を書いた人

カメラ 執筆
高島よしお
1997年生まれ/東京都出身 趣味は「フィクション」と「散歩」 年間通して映画を平均400本観ます 音楽は平均1200時間聴きます