サイトアイコン DigOut

<ライブレポート>『VALVE1 』@下北沢DaisyBar

10月10日(土)、東京・下北沢DaisyBarにて『VALVE』の第1回公演『VALVE1』が開催された。真空管ギターアンプの英名に由来し、至近距離で届ける圧倒的なライブ体験を目指して立ち上げられた同イベント。

ラインナップにはsummerhead、pudelhunds、Laget’s Jam Stack、liquid peopleが名を連ねた。いずれも借り物ではない美学を自らに問い鳴らす4組。決して重複せず、しかし共振し合った一夜は、彼らが単なるメインストリームの代替手段に収まらず、シーンに風穴を開けていく未来を鮮烈に予感させてくれた。

文:サイトウマサヒロ

写真:TERU

summerhead

タイトな8ビートに太く歪んだ5弦ベースが食らい付く一方で、髙橋啓悟(Vo/Gt)はアーミングでコードを揺らがせ、繊細なファルセットを宙に漂わせる。その相反するような音でグッと会場を引き込みながら、summerheadのライブは幕を開けた。

幾何学的なベースフレーズから始まるグランジゲイズナンバー『never in your hands』で、エフェクトによってくぐもった髙橋の歌声は、安易な共感を拒むように荒々しさを増していく。「業」でややテンポを落としながらも、佐々木理久(Gt)が踏み抜いたファズを合図に、バンドはギアを一段上げる。彼らを彼らたらしめる瞬間には、いつも屈折や不均衡がある。

しかし一転してライブ後半は、軽快な『はなればなれ』、清涼感を持って駆け抜ける『ここへおいで』が続いて、それまでの重苦しさを鮮やかに払拭していった。そして、7分半を超える大曲『ミモザ』へ。幻想的な残響から静かにアルペジオが立ち上がり、折り重なる音の隙間で、ドラムの一打一打とトレモロピッキングの粒が徐々に輪郭を増す。気付けば目の前には途方もなく広い景色が開けていた。凄まじい轟音で会場を満たしてステージを去った彼らが、40分の持ち時間で披露したのはわずか6曲。手札の披露ではなく一つの世界の構築に費やされた時間の先には、長い旅から帰ってきたような充実感があった。

pudelhunds

2番手に登場したのは、9月に行われた初のカナダツアーからの凱旋ライブとなるpudelhundsだ。フィードバックノイズを切り裂くカウントの掛け声から、『回向』が炸裂。煌めくギターアルペジオにタッピングを交えたベースフレーズ、変拍子を駆け回るドラムによって緻密に編まれたアンサンブルが、中野颯太(Gt)の絶叫を契機に衝動へと転じていく。そのまま『ウェルテルたちの足音』を終えて、MCで中野は「全く話すことを考えてなかったので、何もないです!」と明け透けに語る。テクニカルでありながら刹那的な焦燥が付き纏う彼ららしい言葉だと思った。

一方で、ただ情報を詰め込むだけがpudelhundsの表現ではない。『mental sketch modified』の余白を活かしたグルーヴの中、3人は視線を交わしてお互いの音の在処を確かめ、やがてその輪からふっと離れた中尾優志(Ba/Vo)がマイクへと向かい、歌がフロアへと届けられる。

『re:』『イシャーと呼んで』『わたしのこと』を畳み掛けると、中野は「割と久々のライブなんで、めちゃ楽しいです!やったー!」とガッツポーズ。確かに、『(starting)platforms』の慌ただしい演奏の最中でも、彼らは笑顔を見せていた。切迫した音の底にあるのは意外にも無邪気な遊び心で、前へ進まざるを得ない日々の中で喜びを忘れないためにこそ存在するバンドなのかもしれない。

Laget’s Jam Stack

感謝と告知だけを短く済ませ、次々に楽曲を紡いでいくLaget’s Jam Stack。彼らの佇まいには、“硬派”という言葉がよく似合う。とはいえそれは、ただ意固地だとか、飾りがないという意味ではない。ひたすら自分の内側を見つめ、歌い叫ぶ。その姿勢に太い軸が通っているのだ。

一曲目は『In Sorrow, in Joy』。pudelhundsのアルペジオに青さと眩さが宿っていたとすれば、Laget’s Jam Stackのそれには憂いや諦念が滲む。鋭く刻まれたリフと不協和音が緊張感を高めた果てで、独り言のようだった太田和孝(Gt/Vo)の歌声がメロディを突き破って大きく歪んだ。『pianta』では、淺見道也(Gt)のギターソロがフロアから歓声を引き出していく。

嗄れた声は、しかし誰かに向かって唾を吐くようなものではない。だからこそ、その詞の行き場を知ろうと手を伸ばした私たちに、徐々に確かな熱が伝導していく。「今日はもう言葉で語ることはないです。あと2曲なんですけど、向き合ってもらえれば」。

そう告げて放たれた『#1』が性急なビートによってクライマックスへ加速を付けると、ラストは『boundary』。淺見は感情を指板に擦り付けるようにギターを鳴かせ、太田は全弦を引きちぎらんばかりの勢いで響かせる。そして、マイクを通さない剥き出しの叫びが届いた時、ようやく彼らの最深部に辿り着けた気がした。

liquid people

あまりにも濃密なバトンパスを受けトリを務めるのは、8月にミニアルバム『Teach』をリリースしたことも記憶に新しいliquid peopleである。

『Star Gazer』は、ネオソウル風に幕を開けたかと思えばすぐにご機嫌なトーンで駆け出し、伸びやかなサビを経て“ハードコア版Metallica”みたいなモッシュパートに突入してしまう、彼らの折衷性を凝縮したような一曲だ。都市の洗練と地下室の汗臭さ、繊細な技術と衝動的なエネルギー。その振り幅が包容力となって、フロアに連帯感を生んでいく。

反復の中でボルテージを高めるインスト主体の『Baseball』、Rio(Ba)が温かみのある歌声でメインボーカルを取る『Crop dusting』。最新作で獲得した新たな武器が、セットリストのカラーバリエーションを見事に増やしている。「毎日色んなことがあると思いますが、それを吹き飛ばすような3曲を」と、終盤はショートチューン「SMASH!!」からダンサブルな『Rolling Star』、そしてリキピ節全開のアンサンブルに翻訳されたゴダイゴ『銀河鉄道999』のカバーで息つく間もなく駆け抜け、『Teach』のトラックリストと同じく『All of you』で幕を下ろした。

この日は、度重なる機材トラブルに見舞われてMCで時間を繋ぐ場面もあったliquid people。とはいえ歯切れの良いカッティングが身体を十分に温めてくれていたから、少し間隙が生まれたってどうってことはなかった。アンコールで披露されたのは『VALVE』主催者と出会った頃から大切にしている曲だという『Hierarchy of needs』。その炸裂するサウンドの中でフルカワタクヤ(Gt/Vo)が雄叫びを上げ、『VALVE』第1回を締め括ったのだった。

VALVE2 開催決定

VALVE2 Supported by DigOut

2027年2月26日(金) 夜公演

?西永福JAM

OPEN 18:30 / START 19:00

全4組出演決定

ルサンチマン、月追う彼方、奏人心、爛漫天国

チケット : 早割¥3,000 (+1D) / 前売¥3,800 (+1D) / U-22割 ¥2,800 (+1D)

※早割は先着枚数・期間限定(12/6まで)

※U-22割 は22歳以下対象、要学生証・身分証明書、先着枚数限定

チケット : LivePocketにて販売 https://livepocket.jp/e/valve2

CONTACT

VALVE製作事務局
Mail : valve.music.tokyo@gmail.com
Instagram : https://www.instagram.com/valve.music.tokyo
X : https://x.com/valvemusictokyo

モバイルバージョンを終了