『つくってあそぼう』。九段北に位置する中学校の同級生4人が、2017年に結成したロックバンド・Gum-9。そんな彼らが2026年8月にドロップしたこのシングルを耳にして、真っ先に脳裏をよぎったのは、赤い帽子のおじさんが工作のワクワクを教えてくれる教育番組だった。次に驚いたのは、その表題のキャッチーさに劣らない華やかなサウンドプロダクション。メンバーが”つくってあそぼうタイム”と呼称していた、ハーモニクスやガツンと歪ませたフレーズが次から次へと襲い来る間奏を筆頭に、四つ打ちのダンスナンバーが多く見られた近年のディスコグラフィーとは情感の異なる、極限まで遊び心を煮詰めたキラーチューンだと受け止めていた。
文:横堀つばさ
写真:武井勇紀
しかし、9月30日(水)に東京・渋谷クラブクアトロにて開催された「Bloom Beyond」のツアーファイナルにおいて、この楽曲のイメージは覆された。というよりも、全国6都市を回ったキャリア最大規模の旅路のクライマックスで、私はその遊び心の裏に隠された葛藤まみれの本心を目の当たりにすることとなったのである。そのキッカケを与えてくれたのが、宮本龍人(Vo/Gt)が「ギリギリまで何を話すか考えてたんだけど……まとまんないなりに話してみようと思います」と語り出した10分近いMCだった。
その独白は、「去年、バンドを辞めようと思ってた」という告白から始まった。SNS上での注目が加速していく中、周囲からは「SNSを頑張っていて、恥ずかしくないの?」と嘲笑され、数字で戦う世界に一歩足を踏み入れたら粗雑に扱われる。そんな残酷なリアルに心をすり減らされて、宮本は「バンドのことを真剣に楽しめなかった」「自分がやりたいことを凄く邪魔されている感覚になった」と明かす。「友達はみんな売れてる。俺だけがずっと置いていかれてる気持ちになる。いくら頑張って走っても、みんながどんどん前に行く。それが辛かった」と、舌を噛み切りそうになりながら盟友たちの活躍を見つめていた日々を打ち明けていく。そして、鼻をすすった彼は、こんな言葉を続けた。
「どのロックバンドもどのアーティストも、俺の辛さを歌ってくれない。一人ぼっちだと感じている俺の悲しさだって、誰も歌ってくれなかった。だから、俺が曲を書くしかないと思った。情けない。くだらない。頼りない。辛い。死にたい。でも、生きたい。まだ、歌を歌いたい。矛盾で良いよ。くだらなくても必死に生きたいと願う、俺とお前らの歌を書きました。数字や勢いに乗ってくる人間なんてクソくらえ! これは尖りじゃなくて、俺の信念。そういう歌です」。
この1年間、心の奥底で渦巻いていた感情たちを一つひとつ吐き出した先で、〈たった一つの偶然と〉と歌声が伸びていく。「この1年間ずっと死にたかったけど、死ねなかった。けど、その勇気がなくて良かった」「俺の友達、この場所にいるみんな、スタッフ、メンバー。これは俺たちの歌だ!」と叫びを敷き詰めて、少しずつ歌詞が書き足されていく。流れ込んだ”つくってあそぼうタイム”は童心と実験精神の単なる流露ではなく、楽譜を埋め尽くすほどの音符によって、ぐちゃぐちゃの感情を音楽化していくパートへ転化していったのである。
なるほど、殊更にヘビーなアンサンブルから大合唱へ突入する理由は、ダンスロックに依存しないアンセムを完成させたかったからではなく、『つくってあそぼう』が紛れもない「俺たちの歌」だからなのだ。〈たった一つの偶然〉とは、メンバー4人が同じ学び舎にいたことであり、あなたがGum-9を見つけたことであり、わざわざライブハウスへ足を運んだこと。〈報われるまで まだ生きてみて〉の1節は、乱暴で剥き出しの歌唱によって、「まだ生きてみてぇ」なんて心臓をぶっ叩く覚悟に聞こえてくる。そうして到達した〈未来はいつだって僕らの手の中〉〈つくってあそぼう〉の最終ラインは、おびただしい数の理不尽が降ってくる現実を、互いの手を取って、楽しい方角へ切り拓かんとするGum-9とオーディエンスの約束だった。
長々と記してしまったが、こうしたクライマックスを迎えられたのは、決して『つくってあそぼう』がGum-9の歴史に革命を起こしたからではない。というのも、「俺らと一緒に遊ぶ準備はできてんのかい?」と『エンヴィーガール』でスタートダッシュを切った瞬間から、もともとこのライブのキーワードは”自由”であり、”曝け出す”だったのである。小林尚輝(Ba)が高橋悠司(Gt)へちょっかいをかけにいった『夜鷹』や、「ちっぽけな俺からでっかい愛を!」と届けた『i』を一例に、セッティングを無視して、フロント3人があちらこちらへ駆け回るステージングはその証拠。古賀大蔵(Dr)が叩くビートの弾みっぷり然り、Gum-9を突き動かしているのは、あくまでも「最高の友達であるコイツらと演奏するのが楽しい」という極めて原初的な喜びなのだろう。
さらに言えば、中盤戦を彩った宮本の弾き語りブロックだって、ファンへの信頼を軸に、飾らない歌を届けるための時間だった。次のキーをまさぐるみたいな震えた声は「700人の前で歌うのは怖いな」と漏らした緊張を露わにしているし、『きらきら星』を彷彿とさせるラインを散りばめつつ、大切な人から授かった言葉と瞬く星を重ね合わせる新曲もやっぱり等身大。「あの子、結婚するらしい」と1人で弾き始めた『ポインセチア』の途中、ストリングスを纏ったバンドアンサンブルを味方につけて呟いた〈さよなら〉の一言も、いつまで経ってもあの人が忘れられない僕と私の情けなさの象徴である。
先述した『つくってあそぼう』を終えると、堰を切ったようにライブの自由度もますます上昇。「俺はだらしないまんまだから。くだらないまんまだから。ガールズバーに行ってても、秘密にしといてください(笑)」と『秘密』でピリオドを打つと、3度の『夜鷹』を連打したアンコールでは上裸で客席に乱入するなど、何でもあり。「お前らが幸せでいられるように、お前らが自由でいれるように歌います!」と約束を交わし、舞台を降りたのだった。
ここで今一度思い返すと、この「Bloom Beyond」とは、「Drama in Bloom」「Time to Bloom」という開花にまつわるライブ群を経て、咲き切ったGum-9を提示するためのツアーだった。であるならば、4人が今一度見せつけたのは、その満開の花が決して美しいだけではないということだろう。加えて、宮本が「楽しい。これがバンドの楽しさだと思います」とふと独りごちていたことを考えれば、彼らは見失っていた「バンドを楽しむ」という初期衝動を授かり直したのではないか。時々軽薄で、弱く、惨めだろうと、懸命に今を生きている。フロアにいる私となんら変わりのないそんな人間たちが鳴らしているからこそ、我々はGum-9の音楽に恋をするのだ。
<セットリスト>
1.エンヴィーガール
2.ラストガール
3.夜鷹
4.プライドガール
5.エマ
6.パウダーブルー
7.i
8.オスマンサス
9.ホトトギス
10.U(弾き語り)
11.新曲(弾き語り)
12.ボインセチア
13.スイセンノウ
14.May
15.EVERGREEN
16.幸福論
17.Imada Karen
18.つくってあそぼう
19.秘密
En1.夜鷹
En2.秘密
En.3 幸福
告知
▪️Gum-9 1st oneman tour 「See’s the Star Tour 2027」
2027年2月15日(月)愛知・名古屋 ElectricLadyLand
2027年2月17日(水)大阪・Music Club JANUS
2027年3月4日(木)東京・恵比寿 LIQUIDROOM
チケット:前売(一般)5,000円 / 当日 5,500円 (1D代別 / ALL STANDING)
▼オフィシャル先行
【受付期間】 9/30(水) 21:00 ~ 10/12(月・祝) 23:59
【当落・入金期間】 10/15(木) 13:00 ~ 10/18(日) 21:00
▪️Gum-9 ファンコミュニティ開設!
【ベーシックプラン】月額500円(3ヶ月1,500円・12ヶ月5,400円|10%OFF)
【プレミアムプラン】月額2,000円(3ヶ月6,000円・12ヶ月21,600円|10%OFF)
10/31(土)までにご入会の方全員に開設記念で限定デジタルフォトをプレゼント!
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