6月27日、東京・吉祥寺の10会場にてサーキットフェス『MiMiNOKOROCK FES JAPAN in 吉祥寺 2026』が開催された。
2015年から毎年開催を重ねてきた『MiMiNOKOROCK FES JAPAN』。「耳に残るロック」をコンセプトに、シーンの現在をサブカルチャーの聖地・吉祥寺に刻み込んできた。今年は総勢96組のアーティストがラインナップ。当日は台風7号・8号がダブルで接近し開催が危ぶまれたものの、雨雲を突き抜けるような快音が吉祥寺の街に一日中響き続けた。本記事では、CLUB SEATAに出演したアクトの中から抜粋した8組をレポートする。
文:サイトウマサヒロ
EVE OF THE LAIN
写真:清水舞(X:@_gmmg_)
『MiMiNOKOROCK FES』も折り返しを超え、悪天候も手伝ってか、足取りが重くなってくる頃。そんな空気を、EVE OF THE LAINは勢い良く音を鳴らし始めた途端に吹き飛ばした。1曲目の「ピースサイン」では、タイトル通りフロア中にピースサインが掲げられ、一斉にジャンプ。「全部乗り越えてよく来た! 来てくれたからには、全員笑わせて帰るから!」という惣田航平(Vo/Gt)の頼もしい言葉に応えるように、コール&レスポンスも力強く響く。
「台風をみんなの声で撃ち抜いてほしいんですけど」と投げかけた「BANG!BANG!BANG!」では、”BANG!”のシャウト5連発を観客に託して、ボルテージは青天井。4つの音が一塊になって前進し続けるアンサンブルの中に、オーディエンスの遊び場所を巧みに織り交ぜて、ライブハウスならではの相乗効果で煌めきは眩しさを増していく。
MCでは後に控えるACE COLLECTIONへの思い入れにも触れつつ、「俺らは、出会ってくれたあんたを笑顔にするためにこれからも歌うから!」と宣言。その明確なビジョンに裏打ちされた強固さが、終盤の「ワンダーランド」「FREEDOM」でさらに燃え上がる。サーキット終盤へ向かうためのエネルギーを、しっかりと充填してくれた。
ACE COLLECTION
写真:シラカワタクミ(X:takumio_photo)
サウンドチェックを終えてそのまま始まったACE COLLECTIONのステージは、開始からトップスピードだった。「時間短いからさ、一気に行こうぜ!」とたつや◎(Vo/Gt)が叫び、一曲目は「LIFEメーカー」。ヒリつくような熱を宿した歌声に負けじと、オーディエンスも声と拳で応戦する。
「ヘンゼルとグレーテル」「モノクロシティ」では、歯切れ良く言葉を吐き出しながらハイトーンを織り交ぜるたつや◎のボーカリゼーションに耳を奪われた。HIPHOPやR&Bのノリも取り込みながら、前のめりなアティチュードも滲んでいる。そのバックで盤石のリズム隊がボトムを支え、軽やかなカッティングからメタリックなリフまで繰り出すLIKI(Gt)のプレイが、バンド全体の重心を絶妙にコントロールする。圧倒的なスキルとボキャブラリーを基に、常に最適解を叩き出し続けるミクスチャーロック。
和やかなMCから、飾らない愛の言葉を綴ったミドルバラード「約束のしおり」へ。限られた尺で多面的な魅力を詰め込もうとする意欲は明らかだ。「シンデレラ」で再びアクセルを踏み込み、「END GAME」「December 9」とラウドな2曲を叩きつけてフィニッシュ。一切の隙を見せない圧巻のアクトだった。
3markets[ ]
写真:シラカワタクミ(X:takumio_photo)
リハーサルで披露されたカザマタカフミ(Vo/Gt)のフリースタイルラップで、早くもオーディエンスを引き込んでいた3markets[ ]。カザマはなんと一曲ごとにテキーラを飲み干すことを宣言し、波乱の予感が漂うままライブの幕が上がった。曲名を告げた途端に歓喜の声が沸いたキラーチューン「社会のゴミカザマタカフミ」、ドタバタのビートで狂騒へ誘う「ね。」。「ライブって、酒なんかよりも飛べる」と語るカザマだが、セットリストが進むごとに酔いが回る彼に劣らず、フロアの熱量も高まっていく。
演奏が止むたびに、舞台袖から現れたスタッフがテキーラのショットを手渡す。「僕はセックスができない」では、感情の乱気流と同期するようにテンポチェンジしながらグルーヴ。「FxxkTikTok」の間奏でカザマが「気分がいいぜ!」と漏らしTシャツを脱ぐと、都会的で艶やかだった演奏が、激しく躍動し始める。血中アルコール濃度とシンクロしたサウンドが、予測不可能なステージのエキサイティングさを際限なく高めていった。
やや要領を得ないMCこそあったものの、ライブは無事に最終曲へ。冒頭に宣言した通り、「客:記憶残ってる?」「カザマ:お前らの笑顔しか覚えてねえよ」という逆コール&レスポンスを成功させ、ラストは「サイゼ」。スカの裏打ちが生む多幸感の中で、筋書きなしのライブは痛快に締めくくられた。
クジラ夜の街
写真:シラカワタクミ(X:takumio_photo)
数々の熱演が繰り広げられてきた『MiMiNOKOROCK FES』。多種多様なライブアクトの残像が焼きついたオーディエンスの網膜に、そのどれとも重ならない唯一無二の景色を投影してみせるバンドこそが、トリに相応しいのだろう。お待ちかねの”ファンタジーを創るバンド”、クジラ夜の街の時間が始まった。
ライブハウスの壁も天井も吹き飛ばしてしまうような、圧倒的なスケールの「有明の詩」から繰り広げられていく冒険絵巻。シーケンスも交え、どこまでも広がっていくサウンドスケープを、宮崎一晴(Vo/Gt)が歌と語りで案内していく。「不正解のまま、それでも生きていきます」と口にしたMCまで、彼らの紡ぐ世界の一部のようだった。現実と見分けがつかないほどの、リアルな手触りを持った幻想こそが人を救えるのかもしれない。「初恋」や「夜間飛行少年」でバーストするアンサンブルには、人間臭い熱情だって滲んでいる。
本編を締め括ったのは、未発表の新曲「あかるい未来」。宮崎のパーソナルな体験から紡がれたミドルバラードだ。湧き上がる感情と儚くも確かな未来像が、シンプルながらもダイナミックなバンドサウンドの力を借りて、祈りのように響き渡った。そしてアンコール、フェス最後の曲は「踊ろう命ある限り」。広がったシンガロングの輪は、今日を生き延びた我々への祝福であり、明日を生き延びなければならない私たちへの応援歌だった。

