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<ライブレポート>UP BEAT MUSIC THE RISING Supported by DigOutーーペテンドウケシ / The Slumbers / 爛漫天国 / テンカラット

5月1日(金)、東京・下北沢SHELTERにて『UP BEAT MUSIC THE RISING Supported by DigOut』が開催された。2024年10月の始動以来、“音楽と人を繋ぐイベント”というコンセプトのもとで数々の注目アーティストをピックアップしてきた『UP BEAT MUSIC』。今回は、日本のロックの聖地としても名高い下北沢SHELTERにて、今後の飛躍が期待されるペテンドウケシ、The Slumbers、爛漫天国、テンカラットという新たな才能たちが、熱気あるステージを繰り広げた。

文:サイトウマサヒロ

ペテンドウケシ

「間もなく開演でございます」のアナウンスに導かれ、ペテンドウケシのメンバーがステージへ姿を現す。赤い照明と中央に鎮座する拡声器がただならぬ空気を醸し出す中で、性急な4カウントから「超人チュートリアル」がスタート。四つ打ちのビートと煙たいコーラスエフェクトをまとった単音ギターリフが響く中、ミナミナユタ(Ba/Vo)は不敵な笑みを浮かべながらメロディを紡いでいった。サビではボーカロイドとミナミが掛け合うという独自のスタイルを提示しつつ、楽曲後半には拡声器に接続された別マイクを用いることで楽曲の歪んだ世界観をより立体的に浮かび上がらせるなど、一筋縄ではいかない深淵さの片鱗を見せる。

続く「陰暴論」ではコール&レスポンスで様子見のオーディエンスを着実に巻き込みつつ、ミナミは挑発的な歌唱と同時にファンキーなスラップもこなすなど、テクニックも申し分ない。ミナミとりゅーと(Gt)の二人組ユニットで、動画サイト上でのボーカロイド楽曲公開を活動の主軸とする彼ら。「ちょっと取っ付きにくいかもしれないけど、みんなが音楽を大好きなように、僕らも音楽が大好きです。僕らの大好きな音楽を全力でぶつけるので、みなさんも全力で音楽を楽しんでください」というまっすぐな言葉が、少しづつ、しかし確かにフロアを味方につけていく。

中盤以降は、そんなストレンジとストレートの二面性による独自の佇まいがより際立った。ミドルテンポで図太いギターリフが緊張感を高めたかと思えば突如疾走する「ホーム・スィート・ホームへ」。曰く「ノスタルジックとロックとシンセサイザーと、色々混ぜ合わせた変な曲」だという「懐獣」。ボーカロイドの歌唱が現実からの遊離を引き起こしながら、身体性を伴ったアンサンブルに肉踊る。そんな一見矛盾する感覚が共存する、唯一無二のライブ空間が広がっていく。

「独白、正直者は夢を見る。」は、一転して煌めきを帯びたシンセが差し込むアップテンポな一曲。ここまで貫かれてきたダークな世界観があったからこそ、その光はいっそう眩しく刺さる。ラストのロックナンバー「僕という失敗作、生き様という釈明」まで、異形のアイデアと切実なメッセージによって、身も心も揺らがされる30分間だった。

The Slumbers

二番手に登場したのは、京都発、「令和の“語りべ”フォーク・ロックバンド」を掲げるThe Slumbersだ。最新シングル「チャリンコな春」を佐々木智則(Vo/Gt)が弾き語り始めると、その歌声が空間ごとオーディエンスを包み込んでいく。ピンクと緑の照明が希望に満ちた新しい季節の始まりを思わせると、中田京悟(Gt)のアルペジオを基調にしつつもチョーキングやビブラートでニュアンスを加えるロックンロール然としたプレイが、景色に鮮やかな色を加えた。

一方、「ロマンス」はハードボイルドなロックチューン。「ロマンスの旅に出ようぜ」というフレーズの通り、佐々木の歌は聴き手を物語へと案内する、まさに“語りべ”として機能している。表情豊かな声色で楽曲ごとに異なる世界へとオーディエンスを連れ出していく手つきが実に鮮やかだ。MCでは「やっと来たね、SHELTERに。ずっと画面越しにこのステージを見てたので、憧れの場所でライブができていることを心から嬉しく思います」と無邪気に喜びを示す場面も見られた。

メンバー紹介を兼ねたセッションから始まった「若すぎた僕たち」では、菅野哉太(Dr)によるソカビートのダンサブルな躍動と、若さゆえの刹那を宿したメロディが交錯。「アフターロール」では上西響(Ba)の印象的なベースアルペジオが曲を牽引する。セットリストの緩急からは、フレッシュなエナジーも大人びた陰影も鳴らせるThe Slumbersの懐の深さが感じられた。

ゴールデンウィークの幕開けであったこの日、より一層深く染み込んだのは「馬車馬のテーマ」。牧歌的なアレンジの中で、労働続きの日々に寄り添う温かさが嬉しい。生活の延長線上にロックという解放があることという喜びを、オーディエンスは噛み締めていたようだった。締めくくりに届けられた「さらば、憧れ」は夕暮れの景色を思わせるミドルテンポのロックチューン。「さあ行け!」と声を重ねるThe Slumbersの4人の声援は、きっと連休を明けた先の毎日でもずっと背中を押してくれるだろう。

爛漫天国

SEをバックに、清大納言(Dr)が身を乗り出して「もっと前に!」と呼びかける。そんな一幕から爛漫天国というバンドの人懐こさがフロアに滲み出ていて、既に会場は温かい空気に包まれていた。そのまま始まった「おまじない」は、我々の平熱へと馴染んでいきながら、徐々にボルテージを高めていくロックチューン。モモノマナト(Gt/Vo)の歌声は丸みを帯びながらも時に感情を露に。「本気で音楽しにきました、よろしく!」という叫びも相まって、等身大かつ全力という絶妙なバランスがステージとフロアの距離を近付けていく。

二曲目の「思い通り」は、跳ねたリズムと躍動感のあるギターリフが印象的な一曲。「拳、来いよ!」という一声にフロアも自然に応えていく。miyamo(Gt)、魅惑(サポートBa)はここぞという見せ場でフロントに躍り出て、奥行きのあるステージングが熱狂を高めた。楽器隊3人が「ラララ」と紡ぐコーラスも含めて、バンド名通りな爛漫さが、ライブの説得力へと昇華されていく。

「必死に生きようね」という言葉を添えて披露された「四畳半」では、余白を活かしたAメロから、その隙間を満たしていくアンサンブルへと展開していく構成が実に美しい。四畳半の暮らしのリアルな手触りと、その屋根の向こうに広がる無限の星空を同時に描いてみせつつ、終盤ではビートを加速させ焦燥と激情も吹き上がらせる。「憎たらしいくらいのこの日々に」ではサビでのメンバー全員で合唱するサビで共鳴の輪が広がり、拳の数も熱量も右肩上がりに増していった。

新曲で最速のビートを叩きつけ拳をハンドクラップに変えると、クライマックスは「天使」。抑えきれない気持ちを高出力のバンドサウンドに託して、前のめりに駆け抜ける。日々の苦しさも届かない想いも、全てをライブハウスに持ち込んで、集まった仲間とともに祝福に変えてしまう。そんな爛漫天国ならではのたくましい生命力がダイレクトに伝わるステージだった。

テンカラット

トリを務めたテンカラットは、開幕早々にれいた(Gt/Vo)の突き抜けるようなハイトーンボイスで一気に空気を引き締める。オープニングの「いつからか」で学校のチャイムを思わせるようなギターフレーズが特別な時間の始まりを告げると、駆け抜けるビートと儚げな歌声のコントラストを描きながらあっという間に最高速度へ。そのスピード感を保ったまま、ツービートを基軸に焦りや切迫をそのまま言葉に変えたような切実さを叩きつけるショートチューン「たった一人の数秒間を救う歌」を挨拶代わりのようにお見舞いしてみせた。

「次世代のニューシーンを作るバンドが集められてるらしいっすわ。テンカラットがどんなバンドになるか楽しみじゃない?」。そんな言葉から流れ込んだ「恋の履歴」ではメリハリのあるリズムが楽曲に緩急を与えて、求心力のあるリードギターとイノセントな歌声の掛け合いがオーディエンスを飽きさせない。感情の揺れにも恋愛のドタバタにも、ためらわず光を当てて乱反射させる潔さが、ライブを前へ前へと転がしていく。

「君」への想いを約1分半に詰め込んだ「愛せるように」を挟み、疾走感だけではなくテンポを落としてじっくり歌を聴かせる構成力が浮き彫りとなった「夏のあと」へ。ノリの良さだけに寄りかからず、そのまま伝えるべき感情の機微をきちんと残しているのがテンカラットならではの美学なのだろうと実感させられる。

そして何より印象に残ったのは、ここ下北沢SHELTERという場所に対する彼らの思いだ。「一年ぶりにSHELTERに出たんですけど、前回はどうも上手くいかなくて。悔しい思いが残ってます」と赤裸々に明かし、当時の感情を詰め込んだという「下北沢備忘録」をアカペラで歌い出すれいた。声色から微細な感情の揺れがハッキリと伝わり、そこへバンドが加わることで、まるで帰り道を照らす街灯のように演奏が歌を支えていく。

さらに「『攻撃的なライブだから新しいお客さんを掴めてない』って言われて、それがすごい刺さった」と語ったMCを経て、「楽しい時間を提供したい」とまっすぐに届けられた「光になる日まで」は、この日のハイライトだった。マイクを通さない四人の合唱から始まり、「あなたの光になれるように」という言葉が爆音の中で痛いほど剥き出しに響く。ラストの「足りない」まで、あの日の悔しさも未熟さも決して忘れないまま胸に抱いて、それでも前へと進むロックバンドの現在地が全力で鳴らされ続けていた。

CONTACT

UP BEAT MUSIC 製作委員会 

Mail : upbeatmusic2024@gmail.com

X : https://x.com/upbeatmusic2024

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