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<ライブレポート>パスピエ「意味新」@東京・HULIC HALL TOKYO

確固たる答えが絞り出されたわけではない。むしろ眼前で繰り広げられる世界の隅々に目を凝らし、思考を巡らせる行為そのものへと価値が付与されるような時間だった。2026年4月12日(日)、東京・HULIC HALL TOKYOにてファイナルを迎えたパスピエのツアー「意味新」のことである。12枚目となるフルアルバム『IMI』を携え、全国6カ所を回ったこの旅路。ライブ冒頭で大胡田なつき(Vo)が「今日は曲の中でも、自分の中でも、パスピエについてでも良いから、何か新しい意味を持って帰ってもらえたら」と口にした通り、自身を顧み、パスピエのどこに惹かれているのかを考える契機となった公演の模様をレポートする。

文=横堀つばさ

撮影=佐藤広理

エレクトロなSEをぶった切り、トントンと成田ハネダ(Key)が鍵盤を鳴らし始める。今宵のオープナーは、ミニアルバム『OTONARIさん』収録の『あかつき』だ。2017年にドラムレスとなった彼らが、インターハイのテーマソングという枠組みの下で<変わりゆくことを 臆せずに行けよ>と綴りあげたこの楽曲は、当時のパスピエにとって真っ新な領域へ足を踏み入れる覚悟の流露だったはず。4人の演奏を背中に浴び、両手を広げる大胡田の様子は「さぁ、始めましょう!」とでも言い切るみたいだ。この雄大な幕開けから自ずと浮かび上がってくるのは、前衛的かつポップな人間集団であるパスピエがいかほどの脱皮を重ねてきたのか、というバンドの代謝にまつわるプリミティブな問いである。

そもそもこのツアーの前提条件たる『IMI』は、インタビューで語られているように「意味」をそのまま指し示すだけではなく、「I am I」という最も揺るぎなく、しかし哲学的なフレーズを有するアルバムであり、半径数十センチで巻き起こる小さなドラマを拡張したリリックを並べていた。バックドロップにも掲げられていた少女の突き合わせた膝がMの字に見えることだって、『しあわせの気配』や『トロイメライ』に見られたスポットライトの演出だって、今作が宿した自己探求の一面を暗示しているのだろう。要するに、ジャケットのイラストよろしく、地獄絵巻さながらに渦巻く赤い情動と心を鎮静化していく青い理性の1on1を出発点としながら、パスピエがパスピエたる所以と向き合っていくのがこのステージなのではないか。

であるならば、成田の「俺、このツアーでドラマーになりました」なんて一声でドロップされた『アソビバ』は、5人の変容を最短距離で射抜いた1曲だ。佐藤謙介(Sup Dr)と羽田が交互に質感の異なるビートを響かせることで、筋肉質なダンスと浮遊感を備えたステップを混在させていく作法は、数年前ドラムの不在をキッカケにバンドとプロジェクトの境界線を模索したからこその産物と言えよう。<ここから創り出そうか 遊び場 世界中がぼくらのことを待ってる>とクリエイティビティの源泉へ切り込む詩をこのサウンドスケープに当てたのも、彼らが探し求めていたロックバンドの理想形が『アソビバ』に潜んでいるため。と同時に、成田がビートメイカーとしての産声を堂々と上げられる理由も、佐藤への絶大な信頼があるからこそだ。ファンシーなシンセサイザーが疾駆した『発色』でたっぷりと光を浴びた佐藤の姿は、まさしくその期待に応じんとしているようだった。

さながら年賀状や暑中見舞いのように毎年律儀に届けている作品集について、「1年に1枚アルバムを出すってことは、1年の記憶を渡すってことな気がします」「これを聴け!ってよりも、1年間こんな気持ちで過ごしましたって会話ができるように音源を作っていきたい」と語った折り返しブロック。レトロチックな音像を土台にハンドワイパーを発生させた『スペアミント』や、パイプオルガンにも類する響きを備えたキーボードとアコースティックギター的なシャラシャラとした手触りを湛えた三澤勝洸(Gt)のギターが矛盾した愛憎を投影した『泣き虫のコーダ』を連ねると、流麗なピアノの音が耳へと飛び込んでくる。

露崎義邦(Ba)が紡ぐ緊迫した低音にパーカッションが加われば、一気にラテンのフィールドへ突入。『U.N.O』である。「いくぞ、東京!」とフロアを着火したように、ついついスパニッシュで情熱的な側面に目が奪われがちだが、特筆すべきは大胡田の歌唱だろう。彼女の得意領域よりもローな音域で押し切っていくBメロと、a母音を溶かすように扱うことで甘さと妖艶さを醸し出すサビ、<隠し玉はどこだ><芝居がすぎるでしょ>とタタタと3連符を駆使してファルセットで締めるラスト。頭からお尻までフックまみれの楽譜を見れば、成田が「ラテンというジャンルは、渋みを増してきたタイミングでやりたかった」と語ったのも納得だ。

『U.N.O』が直写したのは、結成17年目を迎えた今も底を尽きないパスピエの可能性であり、何をやろうともパスピエ味に仕上がるその尊さである。気づけば多作になっていた彼らにとって組み上げたアルバムは、先に記したような1年の集大成としての役割を担うと共に、随所で口にしている通り、門戸を開き続けるための招き猫であった。バンド名の由来たる印象派を最初のキーワードとしながら、少しずつその外皮を伸ばしてきた4人は、「不思議な」「独特の」「唯一無二の」といった形容詞でしか言い得ないアイデンティティを確立し、ロジックとテクニックの裏付けの下で、古今東西のミュージックをばくばくと喰らってきた。それでもなお、まだまだ挑み得るジャンルと表現があることをこのナンバーで示したのだ。

そしてこのニュースは、バンドの楽しさと喜びをリブートする火種と相成っていったのではないか。残すところ1曲「パスピエは、あ~みたいな曲も、ウェーイみたいな曲もあるから(笑)。色んな音楽に色んな形で付いてきてくれてありがとう」と伝えた感謝や、ツアーで展開されたイラストカードのお渡し企画にも滲み出していた、直接アイコンタクトを交わそうとする前傾姿勢は、パスピエが里帰りを果たした証左だったのである。こう考えると『青々』が本編最後を飾ったのも、もはや必然。<いつか消えたくなるほど恥ずかしいと そんな生き方がしたいよ><今、誰かのためじゃなくていい わたしのためのわたしが>としたためられたラインは、継続を経た先でしか到達できない原点を歌い表していた。

FCイベント「ご縁日」の開催を発表し、『最終電車』でフィナーレを迎えた「意味新」ツアー。私は私、パスピエはパスピエ。こんな実感からスタートした90分超は、改めてロックバンドとしてのゼロ地点を確認する時間となった。モネが朝、昼、夕と変化する光を描き続けていたのと同様、4人の楽曲は何度も眺めることで更なる発見を与えてくれるはず。その度に我々は、パスピエの作品群が抱え込む耐久性に驚き、引きずりこまれるのだ。

<セットリスト>

1.あかつき

2.しあわせの気配

3.トロイメライ

4.大発見!

5.アソビバ

6.△

7.DOWNTOWN GIRL

8.発色

9.wave

10.スペアミント

11.言わなきゃ

11.泣き虫のコーダ

13.デ・ジャヴ

14.U.N.O

15.もしもし未来

16.GOKKO

17.煩悩ゴーウエスト

18.S.S

19.青々

<アンコール>

1.ハイパーリアリスト

2.四月のカーテン

告知

■<P.S.P.E限定イベント「ご縁日」>

<大阪>

2026年7月18日(土) 会場・Shangri-La

[1部] 開場15:30/開演16:00

[2部] 開場18:30/開演19:00

問い合わせ:GREENS http://www.greens-corp.co.jp/

<東京>

2026年7月31日(金) 会場・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

[1部] 開場15:30/開演16:00

[2部] 開場18:30/開演19:00

問い合わせ:SOGO TOKYO http://www.sogotokyo.com

■チケット料金 ※パスピエ謹製お土産付

7/18(土)公演 オールスタンディング 5,280円(消費税込)※整理番号付き

7/31(金)公演 全席指定 5,280円(消費税込)

※未就学児童(6歳未満)入場不可

※全公演とも、入場時別途1ドリンク代600円必要

■チケット先行受付

P.S.P.E会員1次受付(抽選)

受付期間:4月12日(日)20:00 〜 4月20日(月)23:59

当落結果確認期間:4月24日(金)18:00 ~ 4月28日(火)18:00

入金期間:4月24日(金)18:00 ~ 4月29日(水・祝)21:00

受付サイト:https://passepied.info/news/detail/10001946/

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