高校の軽音楽部で結成された、大学生4人組ロックバンド「35.7」
メンバーたちの大学卒業を記念したワンマン公演が渋谷のSpotify O-Crestで行われた。 チケットはSOLD OUTし、当日はフロアを埋め尽くす大観衆が詰めかけた。
多くのファンに見送られながら、これまでの出会いを振り返りながら、新たな世界を追い求めて、35.7は帆を張り出航する。
文=Kubo Yuya
撮影=Kanta Nakano
これまでの出会い、そして軌跡を振り返る
幻想的なSEと共に、拍手に迎えられながらメンバーが舞台に上がる。
オープニングナンバーは『ふたり』。誰からも認められない恋を描く歌詞とは裏腹に、爽やかでポップなチューンのオープニングらしい1曲だ。
サビでは観客が拳を突き上げ、フロアが一体感に包まれる。
少し物憂げなような、それでいて力強い歌声が響き渡り、出航セレモニーとも言えるライブが幕を開けた。
「ワンツー!」の掛け声が響き『50%』へ続く。パワフルなイントロから、染み入るようなAメロへの落差に耳が釘付けになる。
間奏での荒々しいギターソロと、それに負けじと呼応するボーカル。明るさと物憂げな雰囲気が同居しており、引き出しの多さと切り替えの上手さが非常に目立つ1曲だ。
最初のMCではたかはし(Gt/Vo)が、今日のライブは5曲だけInstagramにて配信を行っていること、そして、これまでの2曲と続く3曲は「35.7が活動初期の頃やっていたセトリ」であることを告げた。
これまで歩いて来た道を一緒に振り返る時間として。そして、みんながどの曲で出会ってくれたのかを思い出す時間として。最後まで一緒に楽しもうと。
そう呼びかけて『ハイウェイ』が始まる。35.7として初めてMVが公開された曲だ。今の35.7にも通じる緩急があり、かつ若々しい疾走感もある。初期の曲とは思えないくらい完成度の高い1曲だ。
4曲目は『泣く準備はまだできていない』が披露される。どうしようもないくらいにラブソングだと感じるラブソングだ。
どうにもならない想いと声にならない声を、無理やり叫ぶようなギターが耳から離れない。
まっすぐに歪んで育った愛を、どうしたら良いのか分からない感情を音として発散するように歌い上げる。
大人の恋とも子どもの恋とも言えないような、「今の自分の恋」としか表現できない。そんな純粋なラブソング。
情緒あふれるたかはしの歌声とバンドのアンサンブルが、等身大の恋を表現した。
続く5曲目は『祝日天国』。MVがYouTubeで300万再生を超える代表曲だ。初めてEggsで公開したときには曲の頭にサビがあったという裏話を語り、当時の通りにサビから曲を始める。
筆者の時代にはなかった共用のサブスクアカウントなどが象徴的な、現代的な失恋ソングである。
イヤホンの主流が有線から無線へと変わったとき、「1つのイヤホンを2人で分け合うエモさは失われるんだな」と思ったものだが。
なるほど、無線でも2人で分け合うことはできるし、ポツンと残された片側だけのイヤホンがそれだけで今の状況を物語ってくれる。
今の時代だからこその表現だと感心する。後ろを振り返りながらも前に進むような世界観に、キャッチーな楽曲がマッチして耳に残る。
音源で聴くのとは違った、感情を乗せたボーカルに心が動かされる。最後のサビは会場全体で合唱となり、たかはしの「ありがとう」という言葉で名曲を締めた。
活動初期から使ってきたセトリの5曲を終えて、MCに入る。このMCでは、次の曲に関するエピソードが語られた。
高校時代、こな(Dr)は軽音部内で一番上手いドラマーとして有名だった。多くの人がこなとバンドを組みたがり、いくつもの誘いがあったらしい。たかはしも、こなを誘った1人だった。
こなとはあまり交流のなかったたかはしだが、わずかな望みにかけて声をかけた。そのとき、こながたかはしと組むのを決めた理由が次にやる曲だ。
35.7が生まれる前、たかはしが作っていた楽曲がこなを射止めた。“この曲が好きだから、たかはしと組む。”そう決めたのだ。
そんな大切な曲だとたかはしは語った。この曲がなかったら、35.7は組めてなかったかもしれない。そう告げて『骨溶けた』が始まる。
初のCD作品ともなった1st EPに収録され、そのタイトルである『骨が溶けるほどの青い春』にも名を残す曲だ。
ここまでの楽曲とはうってかわった曲調で、スウィング気味なリズムがとても心地良い。
たかはしが語った通り、今の35.7としては珍しいタイプの曲だが、大切に演奏している温かさが伝わってくる。
後ろの方で男の子が口ずさんでいたのが見えて嬉しかったので、良かったら次の曲は一緒に歌ってください。
たかはしがその言葉に続けてギターをかき鳴らし、歌い始める。それと同時にフロアから歓声が上がる。
曲は『うそうそほんと』だ。すぐにクラップとともに大合唱が始まり、バンドが楽曲を引き継ぐ。
たかはしとさくや(Ba)の笑顔を筆頭に、メンバー全員が楽しそうに演奏している姿がすごく印象的だ。
「普通が難しいんですけどね」
ずっと、ない恋とか、手に届かない恋とか、そういうものを歌ってばっかりだったんですけど。次の曲は、ちょっと人を信じたいななんて。まぁできないけど。
希望が少し混じった曲かなと、思います。
それを、守れなくても、心にずっと持っていたいなって思います。
そんなたかはしの決意表明から、最新EP『火星探索』のリード曲『百年公約』が始まった。
まっすぐに響く声と、駆け抜けるようなバンドサウンド。これまでの曲からの心情変化が、歌い方にも楽曲にも反映されているように感じる。
35.7というバンドの引き出しの多さと情緒の豊かさに、あらためて感心させられる。
間髪入れずに『スローファイヤー』が始まる。分厚いギターとベースに負けることなく、1人で後方から勢いを足しながらもリズムをキープし続けるこなの存在感が光る。
猛々しいイントロから、聴かせにいくようなAメロ、そしてまた徐々に荒々しくなる楽曲構成に脳が揺さぶられる。短いながらも印象に残るロックナンバーだ。
音源で聴くより重々しいベースから、疾走感あふれるナンバー『かに座のうた』が始まる。ライブならではの頭を突き抜けるような音のバランスがとても気持ちいい。
流れるように続く11曲目『Hurtful』。かみのはら(Gt)のギターリフが、ただただ淡々とかっこよさを演出する。観客からも歓声が上がり、拳が突き上げられる。
特徴的なイントロから始まるのは12曲目、『nemus』だ。
ここまでアップテンポな曲を情熱的に表現してきたところに、ミドルテンポなロックナンバー。1曲1曲の中だけでなく、セットリストの中での緩急も凄まじい。
短いMCのあと『東京ロンリープラネット』が披露される。たかはしは、この曲を作ったときが自分は一番しんどかったと語った。
(当時好きだった人の)好きなところなんて思い出せない、声も香りも思い出せない。それなのに、好きって気持ちだけがなんとなく残っている。
もう手は離れてたのに、離さないでなんて書いてしまったな。そう思い返した。
そんなたかはしの等身大が描かれたバラードに、今のたかはしの感情が乗る。魂が吹き込まれた楽曲に、観客は聴き入った。『nemus』までステージが照らされてたから、フロアがよく見えずに視野が狭くなっていたと語るたかはし。
歌いながら色々なことを思い出し、悲しい気持ちで歌っていたと言う。『東京ロンリープラネット』の途中からフロアが照らされたとき、ひとりぼっちじゃなくなる感覚があった。目の前にいてくれてるみんなのおかげで、マイナスな気持ちがプラスになったことに対する感謝とともに頭を下げた。
その後は自身の学生生活を振り返る。
元々は大学を卒業したら、バンドを辞めて就職するつもりだったらしい。そのために、遅刻もせず、4年で卒業するように優等生として過ごしてきたが、それによって息苦しさも感じていたと語る。
突飛な人とか、学校やめちゃいましたみたいな人の方がかっこいいぜっていう雰囲気が当時すごい気持ち悪くて。個人的には。
学校行ったり普通に生きてる人が1番かっこいいだろうがよとかすごい思ってたんですけど。
まぁきっとそんなことはなくて。どっちも素晴らしいなとわたしは今思うし。そういう臆病な性格もかっこいいんじゃないか。
辞める勇気が無かっただけではあるんですけど、そこがすごく人間らしくて好きだなと思ってます。
唐突に自分のことを語るが、筆者も大学を中退している。
そういう立場の人間として言うなら、「普通に学校に行って普通に生きている人の方がかっこいい」と思っている。これは嘘偽りのない本音だ。大義や目的のために辞める人もいるが、少なくとも自分はそうではない。自分にできなかったことをやりきっている人達のことを尊敬している。
「普通に生きていることはすごいこと」だ。間違いない。
普通が難しいんですけどね。
普通に過ごすっていうのが1番難しいってわたしは思うんですけど。
たかはしの言葉に心の中で深く頷く。
35.7を愛してくれている人を、わたしは愛しています。
愛おしいと、どうしても思っています。
いてくれてありがとう。
そんな感謝の言葉を添えて、目の前のファンに『しあわせ』を届ける。
これまでよりスローテンポなバラードかと思いきや、曲調ががらっと変わるインパクトにまたしても心を奪われる。
「後悔してでも歌っていたい」
続く15曲目は『バッドリピートエンド』。AメロとBメロを繋ぐギターと、サビ前のベースが気持ちいい。爽やかなナンバーだ。
16曲目は『最果て』を披露。タイトルとは裏腹に、最果てまで2人の幸せを願う明るい曲だ。
後悔してでも35.7をやりたい。
後悔してでも歌っていたい。
ここまで何度も、“今が奇跡だ”と語ったたかはし。この奇跡を守るためなら、人生をぶつけてボロボロになってもいい。そんな”わたしらしくないこと”を思わせてくれたみんなに何度目かの感謝を伝えて、最後の曲が始まる。
ラストは『eighteen candle』。生きていく中で生まれる、言語化できない何か。その何かを、どうにかして言葉にして叫ぶ。そんな感情の発露と呼べる1曲だ。
自分のために叫び、同じような気持ちを抱える誰かのために歌う。そんなロックな1曲をファンに届けて、35.7はステージから去った。
その後、鳴り止まない拍手に応えるためステージに戻った35.7はアンコールに応える。
1曲目は、最新EP『火星探索』から先行リリースもされていた『運命論』。今この瞬間を起点として、これまでとこれからを線で繋ぐような、苦しみながらも前を見ているような、そんな曲だ。
2曲目、本日ラストのラストとして披露されたのは、今年の2月11日にリリースされたばかりの最新曲『あむりた』。今持ってる悲しさ、辛さ、絶望、やるせなさ、そういうものを持ちながらも、未来への希望を捨てきれない。不安も拭いきれない。そんな、誰もが持つであろう矛盾した心を、たかはしの、35.7の世界として描ききった曲だ。『運命論』から続けて聴くと、物語の第1幕と第2幕のような感覚を覚える。
『あむりた』の世界観はMVでも非常に上手く表現されていると感じるものに仕上がっている。明るい曲調と、雲がかった空。伸びやかな歌声、決してメリハリがあるわけではないライティングと、雑多に配置されたコントラストの高いオブジェクト。そして突然のフラフープ。混沌とした心情の中に、確かな意志が存在する様子が上手く表現されていると感じた。ぜひ、一度視聴してみてほしい。
約90分にわたって行われた一夜限りの特別なライブは幕を下ろし、35.7は盛大な拍手で見送られていった。
観衆も会場をあとにする。たくさんの後ろ姿を見送っていると、「最初の方、すごく懐かしい感じがしたね」という会話が聞こえてきた。
35.7と同じ時間を生き、同じ未来をみてくれる人たちがたくさんいる。最初期から見守っている人もいれば、最近出会ったばかりの人もいるだろう。かくいう筆者も、最近出会ったばかりの人間だ。
出会いがいつだとしても、”今この瞬間”をともに生きることはできる。同じ未来を見たいと思える。35.7にはそんな仲間たちがたくさんいる。そしてそれは、ファンにとっても同じことだろう。35.7が、自分たちと同じ今を生きてくれる。たかはしの言うところの”奇跡”を、きっと全員が大切にしている。そんな気がした。
<セットリスト>
01.ふたり
02.50%
03.ハイウェイ
04.泣く準備はまだできていない
05.祝日天国
06.骨溶けた
07.うそうそほんと
08.百年公約
09.スローファイヤー
10.かに座のうた
11.Hurtful
12.nemus
13.東京ロンリープラネット
14.しあわせ
15.バッドリピートエンド
16.最果て
17.eighteen candle
<アンコール>
01.運命論
02.あむりた
航海の始まりと、次の目的地
多くの観衆に見送られながら出航した35.7の、次の目的地はすでにいくつか発表されている。その中でも注目なのが、今年6月から開催される東名阪ワンマンだ。
6月19日の名古屋公演を皮切りに、6月20日に大阪、7月2日に東京を回る。
今回のライブでは、ファンとともに過去を振り返り、思い出を語り、今に至る軌跡を辿った。そんな35.7が、新しい世界から見せてくれる未来を、一緒に見てみたいと思う。
これまで35.7を見てきた人たちだけでなく、まだ見たことのない人たちにもぜひ足を運んで欲しい。
人生における1つの節目を超えた35.7がどんな世界を生き、どんな想いを紡ぐのか、我々と一緒に楽しんでもらいたいと思う。
<ツアー情報>
「35.7 ONEMAN LIVE 2026」
日時・会場 :
6月19日(金) 愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ : サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
6月20日(土) 大阪・BIGCAT
OPEN 16:30 / START 17:30
問い合わせ : キョードーインフォメーション 0570-200-888 (12:00〜17:00 ※⽇祝休)
7月2日(木) 東京・Spotify O-EAST
OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ : AIR FLAG Inc 03-6276-4968 (平⽇11:00〜16:00)
チケット : スタンディング ¥4,800(税込) ※ドリンク代別, 未就学児童入場不可
ぴあ プレリザーブ(抽選) ※3/25(⽔) 23:59まで受付
https://w.pia.jp/t/sanjugotennana-2026
ローソン プレリク(抽選) ※3/25(⽔) 23:59まで受付
https://l-tike.com/sanjugotennana
各種リンク
YouTube :
https://www.youtube.com/@35.7official
X :
Instagram :
https://www.instagram.com/_hu92__
TikTok :
https://www.tiktok.com/@_hu92_
Live Information :
https://lit.link/sanjugotennana_2026-live-info
Release Information :
Official HP :

