海峡メッセ下関 展示見本市会場で開催されたKaikyo Fest.
朝の澄んだ空気から夕暮れ、夜へと移ろう時間の中で、鳴らされる音は次々と景色を塗り替えていく。
ロックも優しさも衝動もすべてが混ざり合い、この海峡でしか生まれない瞬間が確かに存在していた。本記事ではKaikyo Fest.の2日間の熱と記憶を辿っていく。
文:遊津場
熱帯魚とものくろーむ
まずオープニングアクトとしてオーディションを勝ち抜いて出演を掴んだ、福岡のバンド「熱帯魚とものくろーむ」からライブスタート。
メランコリックな印象を与える水中音のSEが鳴った後に繰り出された1曲目は『脱水少女』
かほ(Gt.Vo)が<泣いて>と繰り返すたびにエモーショナルが加速していくボーカル、ギターソロでも魅せたクラウド(Sup.Gt)、Tatsuya(Ba)の体重の乗ったベース、いくみ(Key)の寂しい涙の世界観を演出する音、それでも生きなくちゃと言わんばかりのふうき(Dr)の力強いドラムで、早速会場に彼らのロックを染み込ませた。
2曲目、3曲目ではタイプの違う多彩な引き出しを見せたが、フロアもクラップで応えるなど息がしっかり合っていき、最後に『無色のヒーロー』を迎える。
かほは多くを語るわけではないが、その歌詞に全てを込めて伝える姿は真摯でカッコよかった。結果<いつか誰かのヒーローになりたくて>と歌っていた彼らに、きっとこのバンドならなれる!と期待を持って送り出すような拍手が、終演後には鳴り響いた。
公式HP:https://nettairome.ryzm.jp/
セカンドバッカー
“あなたを支えるバンド”「セカンドバッカー」
こうへい(Gt.Vo)の伸びやかなボーカルは裏表のない人懐っこさもあって、何だかこちらもニコニコしてしまう不思議な力がある。何度か見せたセンターでのギターソロも楽しそうだから、こちらも嬉しかった。
本人がMCで言う通り不器用さも感じるが、その分「ありがとう」「愛してる」「ごめんね」といった歌詞やフロアへの言葉が真っ直ぐ届く。その分、まさみ(Dr)との天然さを感じるMCの掛け合いも抜群。
新曲『喧嘩するほど』のタイトさと解放感が共存するサウンドが心地よく、『犬とバカ猫』は全体のノリからさすがの知名度を感じた。
『なんだっていいわ。』『別れた後で』の流れは、失恋を引きずるごくごく平凡な世田谷青春ラブストーリーかもしれないが、常に楽しさも、自分への不安も、今はいないあなたへの気持ちも包み隠さない全力の言葉と演奏が聞ける彼らのライブだからこそワクワクするし、共感値が高くなる部分がある。その根幹にあるのは「努力している人が好き。努力しようと考えることも努力だと思っていて、みんなそうだと思う。
つまりみんなカッコいい(こうへい)」という、目の前にいる”君”への愛ある大きなリスペクトだと示したライブだった。
公式HP:https://secondbacker.fanpla.jp/
35.7
目が覚めるような強力なギターロックでありながら、文学の香りもしっかりする楽曲達だから歌詞が活字で浮かぶし、情景も浮かぶ。
演奏もたかはし(Vo.Gt)のボーカルも、曲によって剛柔の心身バランスを巧みにコントロールし、行く時は120%で行くから一度も目が離せない。そのエンジンの土台になっているこな(Dr)のドラム、カリスマ性のある攻撃的なかみのはら(Gt)のステージング、さくや(Ba)のフロアと常にコミュニケーション取りながらのアグレッシブな演奏に、このバンドがどれほどの修羅場をくぐってきたのかと感じた。
たかはしのMC、曲中や曲と曲を繋ぐ時の純情溢れた言葉も会場に刺さっていた。『しあわせ』『祝日天国』で本気で大切な人への幸せを願ってからの「傷付いて傷付くほど愛してしまうような…、人生が揺らいでしまうほどの「こんな気持ちになるなら出会わなければ良かった」という出来事が、2026年あなたに沢山訪れますように。おまじないの歌です。」という言葉で始まった『うそうそほんと』の流れは格別で、このバンドになら、いろんな秘密をライブハウスで共有したいと思った人は多いはずだ。
公式HP:https://sanjugotennana.com/
Blue Mash
前日のライブではモッシュダイブ禁止だったため「かましてください!」と言われたフロアはリハーサルから最後まで応え続けた。「音楽に年齢は関係ない!」と優斗(Vo.Gt)は言っていたがその通りのフロアだし、後方の物販に並んでいた人まで拳を上げていた。
『春のまま』が終わった時点で、持ち時間はあと18分。げんげん(Gt)の言った通り、私が事前にもらった予定表でも残り2曲だった。ちなみに結果はオンタイムで終了。「即興でできるのがライブハウスバンドですね(優斗)」と有言実行。
途中、昨秋にツアーで出会った福岡のライブハウス・OP’sのスタッフのバンドマンに触れた。「君がここにいてくれることは一切当たり前じゃない!」。その人を含め全員に伝えた<生きててくれてありがとね>の歌詞が響いた『ロックバンド症候群』と、その人に届くように、そしてフロアへの応援歌として捧げた『ホワイトノイズ』の2曲は、この日にしか感じることのできない熱さと、大事なものを握りしめた拳が広がった。
君が当たり前みたいに笑えるように、今日もロックスターは歌を作りながら、ライブハウスで待っている。
公式HP:https://bluemash.ryzm.jp/
バックドロップシンデレラ
和とも洋とも言えない独自のウンザウンザのリズムに乗せて、でんでけあゆみ(Vo)はフロアの上にただダイブするだけでなく、前転もするし、バク宙もするし…。もはや終盤の前転に関しては、そこまでフロアが驚いてなかったのが常識をぶっ壊していた。他に常識をぶっ壊していたのは、あの『月あかりウンザウンザ』での、あのサークルの大きさ。本当に満月が下関に落ちてきたのかと思った。
『ただそんな日々が続いて』では超能力戦士ドリアンのおーちくんも登場。スマホ撮影もOK。ダイブや、走ったり、ぶつかり合うのも良し。一緒に歌うのも良し。それぞれが手足頭の可動域を限界突破して踊るのも良し。自分らしく楽しんでいいんだ!と言う輪がどんどん広がり、自然に肩組みしてハイタッチ。最後の『さらば青春のパンク』は完全に”みんなの歌”に変わっていた。
“なんでもあり”の中には思いやりとユーモアと愛があった。MCで「前回出演した同じおじさんバンドの四星球は脱落した!」と言いつつ、リハーサルで『クラーク博士と僕』をやっているところからも、それは見えた。ライブハウスで戦い続ける同世代バンド枠を、これからも彼らが守り続ける。
超能力戦士ドリアン
初ライブという下関をみんな味方にしてKaikyo Fest.2026を統一。多彩で独創的なノリ方も丁寧に説明し、「無理ない範囲で!」とやっさん(Gt.Vo)は何度も言いつつ、全員が幸せになるエンタメを提供。そんな自分達の立ち位置を理解しつつも、最後に話した「できるなら優勝したい!」という言葉は本当に力強かったから、全員が最大限の力を笑顔で出して作ったドリアンワールドが広がった。
『いきものがかりと同じ編成』の曲中には、下手側におーちくん(Vo)の顔が印刷されたもの、上手側に主催者クレジットが書かれた2枚の大きなパネルをフロアに流す場面も。おーちくんの顔と主催者を覚えてもらうためだったが、どっち側が先に後ろまでパネルを流し、また最前に早く戻せるかのレース形式にしたため、夢中に急いだ下手側フロアはおーちくんの顔が常に下だった。ただドリアンのライブに終始釘付けのフロアは、あのコミカルな振り付けや背中シンセソロ、『ドラゴンの裁縫セット(笑)』以降のラストスパートの強さまで覚えただろう。全国ツアーに“興味あるー!”な人は増えたに違いない。
Age Factory
爆音のSEと激しいフラッシュの中登場し、『海に星が燃える』の問答無用の青の音の圧力と濃さ、清水英介(Vo.Gt)の生命力溢れた屈強すぎるボーカルで一瞬で制圧。圧倒されながらも、その重厚感を保ちながら清涼感やノスタルジックを合わせて出した音と、清水の「一緒に行こう!」「なぁ山口!一緒に踊ってくれないか!」という言葉で、フロアも自分達の人生で研いできた魂の形と覚悟を持って、ダイブしたり、手を上げたり、シンガロングしているように見えた。その景色に最後のMCで清水は「今日が繋がってまた会えたら素敵やと思いますし、俺らずっと変わらずやってるんで。すげぇ楽しかったです。また来ます」と感謝を伝えた。
『Dance all night my friends』のどこにいても届くような風を生む幽玄さも素晴らしかったが、『TONBO』のシンガロングの景色はやはり何物にも替え難く焼き付いた。全細胞が本能的に沸き立つ。
【運営】Kaikyo Fest. 2026
■Kaikyo Fest.公式HP:
https://kaikyofest.com/
■主催・企画・制作
FUSE / Queblick / rise / YUMEBANCHI
■お問い合わせ
YUMEBANCHI(広島)082-249-3571 <平日12:00~17:00>
