海峡メッセ下関 展示見本市会場で開催されたKaikyo Fest.
朝の澄んだ空気から夕暮れ、夜へと移ろう時間の中で、鳴らされる音は次々と景色を塗り替えていく。
ロックも優しさも衝動もすべてが混ざり合い、この海峡でしか生まれない瞬間が確かに存在していた。本記事ではKaikyo Fest.の2日間の熱と記憶を辿っていく。
ミズニ ウキクサ
前身バンドでの約4年間の活動を経て、2017年10月より活動を開始した「ミズニ ウキクサ」
“ストイックな音像であなたを魅了したい”という言葉を体現するように、この日のステージも無駄を削ぎ落としたストイックな緊張感に満ちていた。
幕開けは『ベルベットブルー』
歪んだベースの一音目で空気が変わり、松本愛美(Vo/Ba)の妖艶な歌い口が静かに観客を引き込んでいく。
白いドレスで登場した松本愛美(Ba/Vo)と、紳士的な装いのよねぴ(Gt)、たっくん(Dr)の視覚的世界観と音の世界観が、不思議な説得力で噛み合っている。曲間ではベースが前面に現れ、余韻を切らさない。
続く『カナリア』では、低い打点から禍々しさが込み上げるが、荒さはなく洗練された印象が強い。『カタルシス』ではいざなわれる感覚の中、ドラムの連打が効果的に作用し、深く引き込まれていく。
MCでたっくんが下関拠点での活動を語り、松本愛美との姉弟エピソードを交えつつ「楽しむ準備はできてますか?我々から開幕宣言といきましょう!」と告げ『開幕宣言』を披露。
ラストの『街』では、白いドレスの視覚的作用もあってか、松本愛美の圧倒的な歌唱力に憂いにも似た、情緒とも情感とも言い難い感情を帯びつつも、しっかりロックとして成立し、腕を広げ白鳥が羽ばたくような美しい終わり方で、関門ステージのトップバッターとして強い印象を刻んだ。
公式HP:https://mizuniukikusa.aremond.com/
アルステイク
岡山3ピースロックバンド「アルステイク」のライブは、開演前のリハーサルからすでに異常な熱量を帯びていた。音が鳴るたびにダイブが起き、このステージがただ事では終わらないことを誰もが察する。
そんなアルステイクの1曲目『嘘つきは勝手』は、堂々と真っ直ぐなロックンロール。過度に煽ることなく、自然と観客の拳が上がる光景が、このバンドと観客の信頼関係を物語っていた。
『他人事』では途切れそうな思いを繋ぎ止める力強さが滲み、『ワガママ』ではポロポロと零れ落ちる感情を掬い上げるように、音が寄り添うように感情が飛び交う。
MCでは、アルステイクが今回のKaikyo Fest.初出演であることを告げ「朝イチからロックをくらって帰ってください!」と、ひだかよしあき(Vo/Gt)が一言。その言葉に続く『未完成のまま』では、アルステイク渾身のロックが全面に押し出され、続く『走れ』では、円を描いて走る観客と全身でロックを体現するアルステイクでライブハウス空間を完成させた。
「もっと遊ぼう!」と観客に投げかけられ披露された『わんちゃん』では大合唱が巻き起こり、『チェリーメリー』を経て、温度のある『君へ』に続く。誰よりも傷つき、音楽が沁みたからこそ生まれたであろう歌が深く胸を打つ。
Kaikyo Fest.への感謝を語った後の『心』は、優しく抱きしめるような歌声と照明が観客を照らし全員が拳を掲げた。本音で歌うロックがここに確かに宿っていた。
公式HP:https://alstake.com/
Sunny Girl
東京高田馬場 CLUB PHASE発3ピースロックバンド「Sunny Girl」のステージは、「ライブハウスにします!」という堂々とした橘高 連太郎(Gt/Vo)の宣言通り、フロアそのものを居場所に変えていく時間となった。
1曲目『君でしか』から、正面突破の宣戦布告。「Aメロでダイブしてもよし!」「分からなくてもよし!」「自分のままでよし!」という単純明快なメッセージがしっかりと音に乗り、フロアからのシンガロングが自然発生する。
立て続けに披露された『スーパームーン』では、一定のテンポで一気にぶち上げ、身体を預けて楽しむしかないライブハウス特有の完璧な流れを見事に作りあげる。
そのまま披露された『濃藍』では、青い照明の中、全身で自分たちの音楽を鳴らす姿が印象的で、観客との信頼関係がはっきりと見て取れた。
続く『once』は「13時間かけてきたのはお前のためだよ!」という橘高の熱いMCから始まり、初っ端から音を止めてのシンガロングが胸を鷲掴む。
『幸せになるために』では、明るく疾走感のある爽やかさで空気を塗り替え、MCを挟んで『スイ』を披露。海の匂いがするフェス感がフロアに広がり、拳が一斉に掲げられる。
最後の『純朴』まで、Sunny Girlは“今いる居場所”を全肯定するロックを鳴らし続けていた。
公式HP:https://sunnygirl.ryzm.jp/
Arakezuri
「Arakezuri」のステージは、深々と頭を下げる所作から始まった。その一瞬で、この後に鳴らされる音への誠実さが伝わる。
1曲目に『キーホルダー』を披露。「あんたのそばで歌い続ける」という白井 竣馬(Vo/Gt)の言葉通り、圧倒的な歌唱力で一気に心を掴む。初手にこれほど頼り甲斐のある曲を置ける強さ。「背中は任せとけ」と言わんばかりの佇まいが、フロアを安心させた。
『ウルトラエール』では「かかってこいよ」と真正面からぶつかり合う姿勢を見せる。曲間でフロント3人が堂々と前面に出てから生まれたコールアンドレスポンスは、海峡でしか生まれなかった景色だろう。ギターを置いて煽る姿に、空気はさらに熱を帯びる。
『クアトリーセンチュリー』では、白井が観客の前に行き、「夢で飯は食えてないけど、夢をおかずに飯を食えてる」という言葉がリアルに響いた。
MCでは、再びKaikyo Fest.に呼ばれた喜びを語り『素顔』へ続く。「カッコつけなくていい、泣きたくなったら音楽に会いにこい」という白井らしいメッセージと、白井の笑顔が優しく胸に刺さる。
「駄目で元々、出来たら最高!」と告げて『だめでもともと』を披露。しっとりから一転してフロアをぶち上げ、手拍子と「大丈夫」の声が重なる。
ラストの『ヒーロー』では観客と共に歌い上げ、今年も頼れる存在であることを刻む締めとなり、我々にとってまさしく、ヒーローそのものだった。
公式HP:https://arakezurishiga.com/
bokula.
広島県広島市等身大ロックバンド「bokula.」のステージは、リハーサルからそのまま本編へと溶け込むシームレスな始まりとなった。なんだか楽しい音楽って、きっとこういうものだよなと思わせる空気が、彼らの最初の一音から広がっていく。
本編1曲目『涙ばっかのヒロインさん』では、各々の個性が絡み合い自然と笑みがこぼれる楽しさを生む。
続く『magatama』では、ライブだからこそ立ち上がるbokula.の魅力が全開となり、観客が大きく羽を広げるように身体を揺らしているのが印象的だった。
「熱と血を感じられるフェスに出させてくれてありがとうございます!」と、えい(Vo/Gt)のMCを経て、『夏の迷惑』へ。飄々とした声から低音の効いた声、さらにはスタイリッシュな歌声まで自在に行き来する圧倒的な歌唱力に、堂々とした佇まいに確かな熱が宿る。
続いた『青くね』では、気合いを上げてぶつかり合い、『バイマイフレンド』ではギターを置き、観客と目を合わせながら距離を確かめる。「俺たちが広島のバンドだ!」と、誇りを持って観客に放ち、その日会ったばかりであろう観客同士が肩を組んで横に揺れる光景が生まれる。
続く『心配性』『愛してやまない一生を.』では、マイクを観客に向け、大シンガロングが生まれる。
そんな熱も冷め止まぬまま『天使になれたら』へ。置いていかない、隣を歩く。そんな優しさが最後まで貫かれていた。この安心感、開放感はきっとbokula.ならではだろう。
公式HP:https://bokulaofficial-melt.com/
ヤングスキニー
「ヤングスキニー」のライブは、感情の勾配を丁寧になぞるように『本当はね、』から始まる。緩やかに熱を上げ、フロアの呼吸を揃えていくように感じられる。
続く『関白宣言』では観客の手拍子が広がり、整ったサウンドバランスにかやゆー(Vo/Gt)の声がすっと重なっていく。
曲が終わり、かやゆーから「2026年も女の子にモテるために、カッコいいバンドマンでありたいなと変わらない思いで歌っていきます!」と、認めざるを得ない沼っぷりを見せ『ゴミ人間、俺』を披露。
MCではかやゆーが「音楽は自分の自由ですから好きな様に楽しんでもらえたらと思います」と、誠実に言葉を述べ、続けて「段々と夜に近づいてヤングスキニーの曲がぴったりの時間になってきたので夜の曲を歌います」と言い『ベランダ』を披露。
曲が終わり、かやゆーから「浮気するやつカスだと思ってます!他の人に好意を持つのも浮気。俺は体の浮つきだから。“浮体”だけ。そんな曲を歌います!」と言われて放たれた『るっせぇ女』では、直球な言葉と緩急あるリズムチェンジで観客を惹きつける。
ここでもかやゆーのストレートな本音と声の柔らかさは際立ち、男女ともにヤングスキニーにのめり込んでいく。
そこから『精神ロック』『らしく』を続けて披露。誰がなんと言おうと音楽が好きなのは間違いない。それはかやゆーもこの場にいる観客もそう。そんなヤングスキニーから渾身の『死ぬまでに俺がやりたいこと』が披露され、最後の最後まで本気で本音な彼らの姿にフロアは最後までぶち上がった。
公式HP:https://www.yangskinny.com/
ジ・エンプティ
福岡県久留米市発 青春ロックバンド「ジ・エンプティ」のステージは『テイクミーアウト』から始まり高い天井を一気にぶち抜くような力強いエネルギーが爆発し、迷いなく拳が突き上がるフロア。
真っ向からやり合うつもりのジ・エンプティの漢気に燃える中、全てを後回しにするようにジャンプ、ダイブ、モッシュが連鎖し、地響きが後方まで返ってくる。
曲が終わりハルモトヒナ(Vo)から「みんな今日の1番を何回も出したんでしょ?それなのにまだ体力残ってるんだよね?みんなおかしいよ(笑)俺たちの曲でくたばってください!」と、タフな観客に激励を送り繰り出した『おやすみレイディ』で真正面からぶつかり合う時間に。
MCでは「去年のKaikyoから一年かけてみんなとかまし続けてきた結果がトリ。みんなで掴んでやったぜ!」と感謝を伝える。
MC終わりに『さよなら涙』を披露。クガケンノスケ(Ba)のベースの入りから一斉に跳ね、フロアがモーセの海割りの如く割れ観客同士で乱れ咲く。SNSでの言葉より、ここで交わす音と汗の方が確かだと示すようだった。
曲が終わりハルモトが「会場着く前の歩道橋でさ、あれはカップルやな。AgeのTシャツ着てスキップしてた2人を見て俺も生きててよかったなって(笑)そのまま結婚して欲しいけど。俺たちの曲を聴いて、大事な人とKaikyo行ったなって思い出してもらえると嬉しい。今日大事な人と一緒に来てるなら“ありがとう”って伝えてください」と言葉を残し『グッバイ青春』を披露。
最後にアンコール代わりの『神様からの贈物』のワンフレーズをマイクスタンドごと客席に向け、関門ステージを締めくくった。
【運営】Kaikyo Fest. 2026
■Kaikyo Fest.公式HP:
https://kaikyofest.com/
■主催・企画・制作
FUSE / Queblick / rise / YUMEBANCHI
■お問い合わせ
YUMEBANCHI(広島)082-249-3571 <平日12:00~17:00>
