東京のロックバンド・ウマシカてが11月・12月連続大阪企画「\mo-eewa!/」を開催し、そのワンマン編が12月19日(金)に心斎橋BRONZEにて行われた。
大阪では初となるワンマンライブ。「特に大きな解禁はありません。ただ大阪が好きだからやりました」と、ある意味いつも通り楽しんで、あっという間に終わった1時間半をレポートする。
Curated by 遊津場
(Eggs公式キュレーター、AWA公式ユーザー、音楽ライター。若手邦ロックの分野に強く、RADIO CRAZYのANTENNA STAGE、閃光ライオット、十代白書などの公式レポを担当)
\mo-eewa!/
FINLANDSの『ピース』をSEにてざわり(Ba)、ちばな(Sup/Dr)、フクダチナツ(Gt/Vo)の順に登場。そこから瑞々しくも力強いイントロと「来てくれてありがとうございます！ウマシカて始めます。よろしく！」とフクダの挨拶で始まった1曲目は『よん』
フクダは歌声とギターの音を真っ直ぐに届け、てざわりは視野広くフロアを見ながら、フクダの音をよりワイドに届けるようなベースを響かせ、ちばなのドラムがその届いた音の輪郭をハッキリさせている。そんな役割分担を早くも感じさせ、フクダが「いけますか！BRONZE！」と煽ると、フロアから多くのハンズアップが起こった。
早速フロアとの距離を縮めると『スカート』『終演』と止まらず演奏。
『スカート』は少し柔らかさを内包した暖色的な音色だったが、『終演』では、深いブルーの照明が似合う別れの悲しさがギュッと詰まったような世界観に変わる。同期などはないスリーピースのバンドサウンドではあるが、繊細な感情の機微の変化がしっかり伝わるリレーだった。
次の曲へのドラムの繋ぎが鳴る中、ここでてざわりが「お越しいただきありがとうございます！」と感謝し「エモい感じの曲をやったんですが、私らの気持ちは1つだけ。クソ男をぶっ殺したい。最後までよろしくお願いします！」と伝え『拝啓、クソ男様』へ。
すっかり彼女達の代表曲となったが、その怨念熱量は変わらず、いやさらに増えているかのように<幸せになってんじゃねぇよ>と強く放っていく。この日は老若男女が集まっていたが、やはり女性のほうが楽しそうにノっていた。この後に続いたのは『拝啓、クソな私』。このどちらにも行き来する感情を、この2曲で上手く代弁した。
MCに入ると「タイテ押してる？」と、てざわりが早速前日にSNSで話題になっていた件に乗っかり「タイテ公開するかどうか、私たちも意見を取り入れたいなと思い、1曲単位でタイテを(前日にてざわりのXで)公開したのですが、若干押してますね。ごめんなさい。この遅延を取り戻すような爆速なライブをして帰ります」と笑いを取る。ちなみに「3回もMCやるの？」と言われたらしい。
フクダが「最後まで精一杯やりますので、よろしくお願いします」と伝えて『ずっと』『犬みたい』『断捨離』と、言葉だけでなく、句読点や”間”の中にある物語や生活感まで見えてくるミディアムナンバーとバラードナンバーを届けた。フクダもあの時にもっと言えてたらというような感情を持って、このライブにぶつけてくる。生身の人間がリアルで叫ぶからこそ伝わるものがそこにはあり、ライブというものの特別感を上げてくれる時間だった。
そこから「たまにメルカリで“ウマシカて”と調べるんですけど。サイン入りのCDが3000円。定価は1000円。半年間売れてなくて、ちょっとだけ悲しい気持ちになっています。そういう歌を歌います」と、てざわりが話し始め『いらない』と『不幸な2人』の力強いナンバーを鳴らす。
てざわりのマイムに合わせてクラップが起こったが、フロアもとりあえず合わせてやったという感じは全くなく、あくまで曲の熱量で焚き付けられ自然にやっていたのが、ウマシカてとリスナーの信頼関係を感じた。
2回目のMC。てざわりは「今月の友達のワンマンに3回行きまして。自分で行ってみて、好きじゃないとワンマンって無理だなと思って！今日来てくれた人達が同じ気持ちだと嬉しいなと思ってたら41分経ちました」と伝えると拍手。
「それなりに好きなんだね」「楽しんでますか？」と嬉しそうに言うと、ハートマークを送る人も。フクダが「まだ中盤に入ってないくらいかもしれないんで」と不敵に伝え『ワンコイン』を弾き語り始めて再開。
歌詞に出てくるレモンサワーに合わせた黄色の照明が映える。サウンドからは炭酸の少し呆気ない刺激感も伝わった。『メランコリリック』はサビのキャッチーなリズムが秀逸、『rainy maybe』は、趣のあるサウンドとサビでのフクダとてざわりのマイクワークが新鮮で、普通にもっと知られていい曲だと思った。
そこから「私の人生史上1番好きだった男がいるんですけども、そいつはね今、女の子と過ごしているんですよ。ありえないですよね⁉︎でも誰か女の子を側に置いておかないと寂しくて死んじゃうみたいな可哀想な子で。でももう私は側にいるのを辞めました！そいつ宛に書いた最後の曲です」と『高円寺』へ。
“遊ぶ女の名前を住んでる駅で呼ぶ”という、まぁなかなかな男。なのに電車移動を表すような揺れ感のあるサウンドは心地よいというアンバランスさ。こんな男がいることはもっと広まるだろう。
遂に3回目のMC。「東京を捨てました。実家より帰ってる、大阪」とありがたがるてざわりとフクダ。てざわりは「大阪のバンドかと思った、と言われます。じゃあなってやりますよ！という気持ちでやってます。ありがとうございます」というと拍手が起こった。
そのまま「”from 心斎橋BRONZE”…カッコいいね。今、from巣鴨だから」と話した後、「下半期は大阪でしか企画を打ってないです。そのくらい大阪の人たちのことがすごく大好きで。東京以外で企画をやろうというのは、すごく勇気がいることだし、やるまで怖かったんですけど、来てくれる人がいて、何よりセトリを組んでいる時に“この子が好きって言ってたな”という顔が見える場所だなと思っていて大阪は。なので今日ワンマンライブができて嬉しいです。本当にありがとうございます」と感謝を伝えた。
そしてフクダが「いろんな曲やってきたんですけど、ちょっとまだ優しめだった気がするんですよ(てざわり「人間性が出てるんじゃないですか？」)。まだいけますか！」と煽った後「ここから盛り上がっていきます！」と宣言し『悪役』を勢いよくスタート。
サビ前でフクダとてざわりが楽器を振り上げるタイミングはシンクロし、より一層力強くフロアの拳も上がる。ここに『1998』を繋げる必殺リレー。
当然ボルテージが上がったフロアを見て、フクダは破顔だった。初期の貴重なナンバー『ほんとのわたし』を挟み、ラストは『『酔った。』』
ディープなサウンドとパワフルなステージングでしっかり理性を奪い、特別な高揚感を与えて本編は終了した。
アンコールのクラップが鳴ると5秒で登場。「誰だ？早って言ったの。タイムイズマネーですからね(てざわり)」。
大阪に着いて、てざわりは髪を切りにいき、フクダはロバート秋山の展示会を見に行ったトークをした後、このライブの2日後にM-1の敗者復活戦を控えたお笑いコンビのゼロカラン(以前ウマシカてとコラボ曲を作成)へのエールを会場にお願いした後、フクダは「いろんな恋愛を経て、こういった曲をいっぱい書いているんですけども、最近は距離感が大事だと。私は好きな人にグイグイいけないんですよね。傍から見守っていたいんですよ。幸せにできるとは、今の自分だと未熟者だから言えないけど、それでも自分が好きな気持ちは変わらなくて。そういう曲を作りました。新曲です」と『それでも私は』を披露。
MCで言っていたような控えめな気持ちと真っ直ぐな愛の言葉、疾走感のあるメロディが響き渡り、好感触で受け止められていた。次の『猫』の前にはコールアンドレスポンスのレクチャー。
1回の練習で息の揃ったフロアに「皆さん最高です！」とフクダは喜び、楽しいフロアが生まれる。てざわりも自由にステージ上を動き、ちばなも笑顔。もちろん本番のコールアンドレスポンスも決まる。
みんないい子。そんなフロアに向けて最後は『ご褒美』
「これからもみんなの背中を音楽で押せるように頑張ります！」とフクダは約束し、最後まで全速力に、必死に駆け抜けて、ご褒美を贈った3人に拍手と大歓声が起こった。
たださらにダブルアンコールのクラップ。てざわりは「ウチらの絆だよね！」と再確認。フクダも「すごく楽しかった」とホクホク。次回の大阪でのライブであるMiMiNOKO ROCK FESTIVALを宣伝した後、てざわりは「今年は本当にみんなの力でムロフェスにも出られて、Zeppにも出られて、飛躍の年だったと思ってますね」と感謝。
フクダも「現場で会えるのが嬉しくてね。ライブハウスで会えるのが嬉しいです。今年も挑戦の年となりました。2026年もそんな年にしていきますので、是非ついてきてください！」と伝え、『夢☆応援歌Ⅱ』を届けた。
ウマシカてから目の前のあなたにだけでなく、フロアもウマシカてに向けてエールを送り合う優しく、まさしく絆を感じる時間だった。ここで終了予定だったが、サプライズでもう一度『ご褒美』！
これぞロックバンドという衝動と「元気でね！また会おうね！」という言葉で、2025年の大阪での「ウマシカて」を締めくくった。
最近はSNSでのバズも多く、そのユーモアさでも注目を浴びるウマシカて。
ただワンマンライブを見て、本当にブレないスタンスを貫き通す姿を見た。手軽にお客さんを楽しませる手法も取ろうと思えば取れるはずだけど、サボらずにちゃんと良い音楽・ライブを見せるために向き合って、きっちり中身のあるものを届けていた。
相変わらずXのバンドのプロフィールから、てざわりのアカウントには飛べないけど、やはり随一のお客さん思いのバンドだと思います。
＜セットリスト＞
1.よん
2.スカート
3.終演
4.拝啓、クソ男様
5.拝啓、クソな私
6.ずっと
7.犬みたい
8.断捨離
9.いらない
10.不幸な2人
11.ワンコイン
12.メランコリリック
13.rainy maybe
14.高円寺
15.悪役
16.1998
17.ほんとのわたし
18.『酔った。』
<アンコール>
1.それでも私は
2.猫
3.ご褒美
<ダブルアンコール>
1.夢☆応援歌Ⅱ
2.ご褒美
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2026年1月15日(木) 「answer」
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