2025年12月12日(金)、京都のスリーピースロックバンド・ポンツクピーヤの東名阪ツアー“ポンツクピーヤと行く「たられば感傷旅行」”のツアーファイナルが心斎橋Pangeaにて行われた。
各所スリーマン形式で行われ、この日は鉄風東京、3markets[ ]を迎えてのファイナル。見事ソールドアウトを記録。ポンツクピーヤにとって年内ラストライブということで全てを出し切った1日をレポートする。
Curated by 遊津場
(Eggs公式キュレーター、AWA公式ユーザー、音楽ライター。若手邦ロックの分野に強く、RADIO CRAZYのANTENNA STAGE、閃光ライオット、十代白書などの公式レポを担当)
鉄風東京
この街にまた一つ、思い出が生まれた
「自分の楽しみ方を信じてやってください!俺ら全部それ受け止めるバンドなんで。よろしくお願いします!」と大黒峻吾(Vo/Gt)が挨拶して『TEARS』を力強く弾き語り出してライブスタート。
そこから爽快さと骨太さを兼ね備えた楽曲を真っ直ぐにぶつけていく。対するフロアも真っ直ぐ拳を掲げ、ストレートのぶつけ合いで早くも熱を帯びていくPangea。
颯(Dr)も楽しさが溢れ出した様子で早速立ち上がっていた。その勢いのまま『遥か鳥は大空を征く』へ。ゴリゴリと岩を砕くようなmuku(Ba)と颯のビートと曲の合わせたスカイブルーの照明を“始まりの合図”に解放感のある楽曲を展開し、天井知らずの空を創る。それは力強さだけでなく、クールに色気のあるギターを足していくSougo(Gt)のプレイもあってこそだと分かり、見惚れてしまった。
大黒はポンツクピーヤに呼ばれたことに感謝し「今日のスリーマンって日陰にいないと書けなかった音楽が聴けると思う。心が重くなることってあるじゃないですか?その重さって魂の質量だと思っていて、それだけ意味のあるものを抱えていると思ってます。そんな歌を歌うバンドに挟まれたので、自分達もグッドソングを今日は届けていきます」と伝え、『金木犀』『揺れる髪はレッド』と、ゆったりとしたナンバーを聴かせる。
歌詞がじっくりと染み込んでいき、それに合わせて各々のペースで噛み締めながら頭を揺らすフロア。その光景は曲の欠かせない一部として存在していた。あの時の街の風と匂いが、各々の心の中に吹き、声に出さずとも共鳴している時間だった。
間違いない一体感と鉄風東京への信頼感に包まれた中、大黒は「ライブハウスは全部があっていい。剣道より声を出してもいいし、変な踊りもしていいし、マジでなんでもいい。楽しむためにありますから。それをバンドから受け取って、仙台でバンドを始めて、気付いたらこの街に来て、カッコいいバンドに呼ばれて、カッコいいフロアの前でやれていること、感動しかないです」と伝える。
そして「音楽が唯一形を持つ瞬間っていうのは、あなたの心とか目とか何かが動いた時です。僕はあなたが形にする瞬間を待っています」と話し『In YOURS』を鳴らすと、早速拳という形になる。
そういうハンズアップや合唱じゃなくても、間違いなく首の動きに出ている人もいたし、恐らく彼らより2回りくらい人生の先輩の人が「若いな」みたいな目で微笑みながら見ていたのも、“形”だなと思った。そして最後は身を焦がすようなツービートナンバー『Sing Alone』で駆け抜けた。
今日得たり、思い出したりした感情は<もう誰にも奪えやしないよ>。“仙台の若きライブハウス伝道師、ここにあり。”というライブを年内ラスト大阪で見せてくれた。
<セットリスト>
1.TEARS
2.遥か鳥は大空を征く
3.金木犀
4.揺れる髪はレッド
5.In YOURS
6.Sing Alone
鉄風東京公式HP:https://tepputokyo.jp/
3markets[ ]
その行動に応える、ホッカイロライブ
「ライブを始める前に、どうしても伝えたいことがあります。ホッカイロって…熱いよな。でもよぉ!ホッカイロよりも熱いもの知ってるか?今、俺らを見ているお前らの視線。その視線で熱くなった俺を、お前らの心臓に貼り付けて帰ります!」と、カザマタカフミ(Vo/Gt)が宣言。すると、矢矧暁(Gt)と田村亮(Ba)が勢いよくお立ち台に登って『さよならスーサイド』を響かせる。
masaton.(Dr)のリズミカルなビートでクラップを誘発して、早速ホッカホカに仕上げれば、間髪なしに続けた『死ぬほどめんどくさい』はその曲名通りに投げやり感も見せながら、的確に心地よく絡んでくる矢矧のギターテクニックに驚く。ポップにキャッチーにネガティブをマシンガンのように連ねるのは、ポンツクピーヤとの親和性も感じずにいられない。続く『サイゼ』では、カザマが最近趣味というコール&レスポンスの場面もあった。
MCではポンツクピーヤのバンド名の由来を調べたとフロアに話すカザマ。それはとてもポンツクピーヤらしい由来だったが、その場で確認すると違って焦るカザマ。ただその後聞くと、ポンツクピーヤの3人もその由来が気に入ったとのことだった。
その後『底辺の恋』の気持ちの良い韻の踏み方でまったり包み込んだ後、「ポンツクピーヤにも『ごめんで済んだら警察はいらへん』って歌がありますが、僕は許してやろうと思っています。なぜなら世の中にはごめんなさいすら言えない人がいるから」と新曲『あやまれ』を投下。
他のライブでもそうだが、スリマのちゃんと対バン相手のことを調べてライブにスマートに入れ込む姿勢が好き。曲でもしっかり4人全員で感情をぶつけて、盛り上げていた。
そして今回「ポンツクピーヤはちゃんとライブを見て、挨拶してくれて、CDもくれて、誘ってくれた。好きだというのをちゃんと伝えてくれた。それって大事で行動することって大事だと思ったんですけど、僕が彼女にフラれた時「計画性がない」って理由でフラれたんです。
でも今振り返るとそんなことが理由じゃないと思っていて。付き合ってた時に「好きだ」とか全然言わなかったんですよ。言わなくても伝わるだろうと。でも行動が伴ってないから結果的にフラれたと思うんですよ。皆さんもちゃんと伝えてあげてください。伝わらないと意味ないので。そういう歌を」と『超最愛』を演奏。あえて騒がしさもあるようなサウンドの中で淡々と歌う姿が、2人の愛の現実にわざと気付かないでいる男の情景を映し出していた。
そこから「俺はゴミみたいな人間だけど、どうせゴミなら皆さんに使ってもらえるホッカイロみたいなゴミになりたいぜ!」と『社会のゴミカザマタカフミ』『整形大賛成』の強力リレーでブチ上げて終了。ライブバンドとしての実力、ユーモアのあるMC、そしてその根底にある優しさで、一緒にでっけぇホッカイロになれた35分を作ったスリマを一生リスペクトする。
<セットリスト>
1.さよならスーサイド
2.死ぬほどめんどくさい
3.サイゼ
4.底辺の恋
5.あやまれ
6.超最愛
7.社会のゴミカザマタカフミ
8.整形大賛成
3markets[ ] 公式HP:https://3markets.com/
ポンツクピーヤ
激動の1年を表すライブと伝えたいこと
登場して優しく歌い出したのはそのツアータイトルになっているとも言える『センチメンタル・ジャーニー』
徐々にテンションが上がっていき、サビの“くだらないぜ”でしっかりハンズアップが起こる。この曲の肝になっているのは“大丈夫”というワード。励ましているようで時に無責任にもなり得るこの言葉は、使い所を考えてしまい行き場なく持て余してしまうこともある。そんな“大丈夫”を抱えた、考えすぎるリスナーが今日ここに集まって心から楽しんでいると思うと、それだけでこの場所がある意味を感じた。
しっとりとしたアウトロが激しくなっていき、大石(Vo/Gt)が「ポンツクピーヤです。よろしくお願いします!」と叫ぶと『喫茶店に蔓延る』『こんにちはスーパーマン』『エモーショナル・ララバイ』とアップテンポなナンバーを迸りながら演奏!
バンドで歌い始めてからも相変わらず滅びることのない悪やくだらなさに辟易としながらも、そのポップロックでどんどん薙ぎ倒していこうとする姿は、間違いなくライブを重ねるごとに成長していて勇気をもらえる。大石のボーカルとギターからはもちろん、吉元(Ba/Cho)、中江(Dr/Cho)のコーラスや音からも、その戦う表情がくっきりと届いた。
だいぶ飛ばした大石は息切らしながら感謝し「今年最後のライブだし、出し切って帰りたいと思います」と伝えた後「中学からいろいろ音楽聴き始めたんですけど、まぁ偉くなった気分というかイキって自称評論家になっちゃってたんですよね。今、多少言われる側になって、俺らからそいつらに言えることって1つだけやなって思って。俺様はお前を許してあげるのさ」と曲中の歌詞を伝えて『らふらぶ!』へ。
無理にでも踊り狂える新曲で制御不能感を出した後、キラーチューン『19歳』をここで投入。もう手ではなく頭を叩いてクラップをして楽しんでいる方もいたりして、なんだかとても自由でラブリーな空間だった。ここから引き込まれるようなリズム隊の鳴らす前奏、そこに大石のギターも入ってきて不穏なカオスさを出して始まったのは『こんばんは暗闇』。大石は取り憑かれたように体全身で叫ぶ。出し切るとは言ったが、まだ中盤でこの迫力。タフだ。
MCでは鉄風東京、3markets[ ]、そして年末の予定をかいくぐって来てくれたお客さんへ感謝を伝える。そして「今日は京都は雪が降ってるくらいなんですけど、夏の曲を」と『それだけ』へ。
ちゃんとあの茹だるような夏の夜の暑さを内包しており、ジャケット写真のコインランドリーの女の子の姿を思い出した。少し柔らかくなった雰囲気に『愛してるって言って』を続ける。曲本来の力に先ほどの3markets[ ]の『超最愛』前のMCもあったから、より“愛してる”という言葉の尊さを堪能。そこに「普段やらない曲やります」と『僕が間違えた日々の全て』を繋げた。
CDのみの収録曲であるし、その歌詞的にも、この日だからこそ本当に奥にある秘密を共有してくれたのかなと思った。そんなミドルやバラードでもしっかり曝け出す3人に惜しみなく拍手が送られた。
『死にたい夢』でまた胸を焦がすような“それでも”という炎を灯した後、今年最後のMCへ。今年はミニアルバム発売、全国ツアー、3ヶ月連続リリースなど、大石にとって激動の1年(個人的に環境も変わった)だったとのこと。
過ごして思ったのは、「こんな毎年気を張ってはやっていけないので、みんなは肩の力を抜いて過ごしてほしいし、自分の楽しいことだけ考えようぜ。俺は曲の中で他人の曲を下げているように捉われがちなんですけど、勘違いしないでほしくないのは、そういうことするのダサいよと言ってるんですよ。だから強制ではないけど、みんなは好きな曲を好きな人と好きなように聴けるのが1番幸せだから、そうしてほしいなと思います」と伝え、「うん、いっぱい喋った!ポンツクピーヤでした!」と心なしか晴れやかに『リビング・スーサイダル』を鳴らし始めた。中江の「ワン、ツー!」も響く。
今年最後のこの曲は、この悲観と焦燥に溢れた世界で、ついつい“本当”を信じて探して人より疲れがちなあなたが、2025年も生き延びたことを褒め称えるようだった。2026年の年末もこの曲を聴くために、ポンツクピーヤと一緒に旅に出よう。適度に肩の力は抜いてね。
<セットリスト>
1.センチメンタル・ジャーニー
2.喫茶店に蔓延る
3.こんにちはスーパーマン
4.エモーショナル・ララバイ
5.らふらぶ!
6.19歳
7.こんばんは暗闇
8.それだけ
9.愛してるって言って
10.僕が間違えた日の全て
11.死にたい夢
12.リビング・スーサイダル
告知
『Xmas Baby』MV
各種リンク(ポンツクピーヤ)
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