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<ライブレポート>少年キッズボウイ 「少年キッズボウイのお楽しみ会 まだ終わらない夏休み編」@渋谷Milkyway

今年5月にメジャーデビューを果たした、メンバー全員が社会人という8人組”音楽と仕事の二刀流” バンド「少年キッズボウイ」

今年2月に行われたワンマンライブは、チケット発売開始から1時間ほどでソールドアウト。今回のライブもチケットが即完という人気バンドだ。

そんな、今まさに勢いに乗りまくっている彼らの、記念すべきメジャーデビュー後初ワンマンライブに潜入した。

開演前から始まる”お楽しみ会”

まずは開演前の様子をお伝えしておこうと思う。

開場時間直前、PAエリア前に設置されたDJブースに山岸(Gt)が立った。他のメンバーもフロアに集まり、思い思いに過ごしている。

「もう開場時間なのに、何をしているんだ…?」
そんな筆者の疑問をよそに、スケジュール通りに開場し、多くの来場者がフロアに入ってくる。

Ph. 越智芽生

そんな中で始まったのは山岸によるDJタイム。
開演まで会場内でBGMを流すライブハウスは多いが、今回フロアに流れるのは山岸による選曲、珠玉の名曲たちだ。

他のメンバーもDJブース前に集まり、自由にノッている。
メジャーデビューしたバンドが、自分たちで曲を流し、自分たちがフロアで踊る。初めて見る光景だった。

踊りながらも、来場客に声をかけられれば写真撮影にも応じ、差し入れなども受け取る。
全員がこのイベントを楽しんでいるようで、見ているこちらも楽しくなってくる。
何より、流れる曲が良い。多くの人がノレるような曲が多く、自然と体が動く。
結局、開演5分前までDJタイムは続いた。

スタッフに急かされるようにDJブースをあとにする山岸の姿が、やたらと目に焼き付いている。これが恒例イベントなのか、また、今後もあるものなのか。筆者には分からないが、できることなら今後もやって欲しいと思うし、たくさんの人に現地でこの雰囲気を感じ取って欲しいと思う。

25分の”イントロ”を終え”お楽しみ会”本番がスタート

『学園天国』をSEにバンドが登場し、アキラ(Vo)の声に呼応するようにフロアからも大きな声が上がる。

心待ちにしていた時間が始まる。そんな興奮や熱気が、弾けるタイミングを探るようにフロアの中にくすぶり始める。

オープニングナンバーは『スラムドッグ・サリー』
明るいような、どこか切ないような。未来があるような、無いような。
それでもちゃんと新しい場所を目指しているような、過去に捕らわれて足踏みをしているような。そんな不思議な印象を受ける1曲だ。

続く曲は『君が生きる理由』
インディーズ時代の1stアルバム『少年キッズボウイ 1』のリードトラックにして、少年キッズボウイの代表曲のひとつだ。人気曲ということもあり、フロアの熱気も一段上がる。
少年キッズボウイらしさのある明るいメロディーに、思わず一緒に口ずさんでしまうイントロ。

少し粗雑なようだが、包み込むような優しさと力強さを併せ持つ歌詞が不思議なくらいマッチしている。曲が、歌詞が、ボーカルが、演奏が、エネルギッシュな何かを伝えてこようとする。

“死なない理由”ではなく”生きる理由”があるということを教えてくれる。
今日ここにも、この曲に救われた人がいるだろう。そして、これからもこの曲に救われる人が増えることを願いたい。

Ph. 越智芽生

再びアキラが短く挨拶の言葉を口にした後に始まったのは『桜の木の下には』
ダウ90000の単独公演のオープニング曲として書き下ろされた曲であり、短くもおしゃれな楽曲だ。この曲は配信サービスではリリースされておらず、ライブ会場の物販で販売されているCDに収録されている。

少年キッズボウイのグッズ通販サイトからも購入可能なので、ぜひ買おう。筆者も購入した。

社会人としての経験と少年のようなわんぱくさの融合

続く4曲目は『海を見に行く』
ここは肩の力を抜き、リラックスしながら音楽を楽しむブロックのようだ。

個人的に少年キッズボウイにはパンクな印象を持っているが、この曲はかなりシティポップ色の強い曲だと感じる。

元々はEPに収録された曲だが、MVも制作されYoutubeでの視聴が可能だ。どこを探しても見つからない歌詞カードも、この動画の概要欄で確認することができる。

5曲目は『だってTake it Easy』
この曲も曲名の通り肩の力を抜いて楽しめる曲だ。
この曲は終始トランペットが輝いていると思う。ブルージーなサウンドのギターパートも非常に心地よく、聴いていると自然とリラックスできるメロウナンバーだ。

MCでは、普段はアパレル店員であるGB(Dr)が「夏休み、なかったね…」とぼやき会場の笑いを誘う。

山岸からも改めて自己紹介があった。少年キッズボウイは8人組の社会人バンドであり、メンバー全員が本業を続けたままメジャーデビューしたという稀有なバンドだ。

少年キッズボウイの楽曲やライブ、メンバーの雰囲気はバンド名通りの”少年らしさ”を感じることが多い。
それと同時に、歌詞や演奏から”人生そのもの”みたいな深みを感じる。この相反するようなふたつの特性は、メンバーそれぞれの社会経験に起因するものなのかもしれない。

“こどもみたいなおとな”は世の中にたくさんいるが、”大人として子どもを楽しめる”という人は意外と少ない。少年キッズボウイからは、そんな”しっかりとした子ども”である印象を受ける。

ところで、先程から少年キッズボウイを指すときに”彼ら”や”彼女ら”ではなく”少年キッズボウイ”と書き続けている。
男女混成メンバーであるのが一番の理由だが、こんなとき英語なら”They”で済むのに、日本語は不便だ。
“あいつら”とか”奴ら”とか、”こいつら”、”彼奴ら”なんて流石に使えないし。新しい三人称の発明が待たれる。

Ph. 佐藤明穂

6曲目は『名前をつけてよ』、7曲目は『なんてったっけタイトル』を続けて披露。
どちらもたくさんの有名曲からのインスパイアやオマージュを感じさせる要素がふんだんに盛り込まれた曲だ。

『なんてったっけタイトル』の後半に施されたゴリゴリのハードロックを感じさせるアレンジが個人的にすごく好きだった。
なお、『名前をつけてよ』のフィジカルEPには先に披露した『桜の木の下には』が収録されている。繰り返しになるが、ぜひ買おう。

続く曲は『春の子供』
クラップとベースから入り、おしゃれなギターとトランペットがラインを作る。アキラの優しくしっとりとしたボーカルと対比するように、こーしくん(Vo)の雄叫びとも言える太いボーカルが味に深みを出す。

「明るいバンド」のイメージが強い少年キッズボウイによる”自分たち、こういう曲もいけるんで”という意思表示とも取れる一品だ。

他のメンバーによる歌や演奏もそうだが、こーしくんのボーカルは特に音源よりライブで輝くように感じた。肉声も届きやすいからだろうか。

まだライブに足を運んだことがない人は、足を運んで聴いて欲しい。10月にフリーライブもあるのでちょうど良いだろう。

Ph. 佐藤明穂

MCでは過去のエピソード紹介から、”未来の話”として多くの告知があった。

10月8日に新曲がリリース。それに合わせ、10月15日に下北沢でフリーライブが行われる。
また、12月にはメジャー初CDとなる新EPをリリース予定。こちらはデジタルだけでなく、フィジカルディスクも発売予定とのことだ。詳細は公式からの告知をチェックしてほしい。

そんな下北沢にちなんだ新曲『下北沢ターミナル』が9曲目に披露される。明るさはあるがそれだけではない、どこか暗さも感じるようなミディアムバラードだ。

聴くタイミングによって印象が変わってくるような楽曲だと感じた。少年キッズボウイの楽曲やメンバーの雰囲気から明るい印象を持ちがちだが、明るいだけではない二面性こそが少年キッズボウイの魅力だと思う。

なお、この曲は作曲がこーしくん、作詞が山岸による共作になっている。これまで、少年キッズボウイの楽曲は、ほぼ全てをこーしくんが手掛けてきた。既存楽曲の中では珍しい共作だが、次のEPでは山岸が楽曲制作に大きく関わっているとのことだ。

下北沢から(おそらく吉祥寺を経由して)移動。10曲目は『中野シャンゼリゼ -麦酒大学のテーマ-』を披露。
こちらはタイトルの通り、中野のレンガ坂にある人気店「麦酒大学」のテーマソング。思わず”オー・シャンゼリゼ”と行ったこともないシャンゼリゼ通りに思いを馳せたくなる雰囲気に、ジャジーで楽しそうなトランペットが映える。
気分良くビールを飲める1曲に仕上がっている。ひとりで宅飲みするときになんとなく流してみるのもおすすめだ。

会場のみんなで乾杯をしたのが印象深く、楽しい時間を過ごせた。

11曲目は『告別式では泣かない』
こーしくんメインのボーカルが、少し物悲しい歌詞を心に押し込んでくる。

アキラがステージ上で自由に動き回って踊っていた姿がすごく印象的だった。

Ph. 佐藤明穂

“なんかいい感じ”というユルさの中に確かな”芯”を感じるバンド

MCではあらためて新EPの告知と、楽曲制作についての話を披露。山岸が楽曲制作に大きく関わったという話題もここで出されたものだ。

“普通に生活してると手放しで喜べないことも多い”と語る山岸。それでも、”なんかいい感じでやっていくことを伝えていきたい”と少年キッズボウイらしい決意表明を口にした。

一息ついて最終ブロックへと向かう。

まずは『南池袋セントラルパーク』から。某人気小説(もしくはドラマかアニメ)を彷彿とさせるタイトルだが、おそらく関係ない。
捨てきれない反骨心と現実への諦念を描いた、シティポップ風のパンクソングだと思う。

これはネットで聞いた情報だが、古くからある人気曲にも関わらずあまりライブで披露する機会がなかった元レア曲らしい。長くから聴いてるファンでも、タイミングが合わず回収できていない人もいるとかいないとか。
最近は少年キッズボウイのライブ活動の頻度自体が上がっているのもあって、聴ける機会は増えていると思うが、ここで聴けたのはラッキーかもしれない。

続くは『キスをしようよ』
メジャーデビュー後、初のシングル楽曲。初めて聴いたときに筆者のテンションが上がった人気曲だ。
サビでのダブルクラップを一緒にできたのがすごく嬉しいし楽しかった。「せーの」も好きなので言えて良かった。
あまり音楽に造詣が深くない筆者でも分かるくらい有名な元ネタから拝借した小ネタがいたるところに散りばめられている。

特に「傘を回して雨に唄えば映画みたいに街は光るぜ」のフレーズが好き。シンプルに、雨に唄えばが好きなだけではあるが。

閑話休題。

前の曲が終わり、フロアに吊り下げられたミラーボールがライトアップされ回り始める。会場全体がなんの曲なのかを察する。そう、『最終兵器ディスコ』だ。

アキラの呼びかけで、コール&レスポンスの予行演習が行われる。様々なアレンジを加えてアキラが歌う”愛とラヴを永遠にフォーエバー”に合わせて、会場も同じフレーズを返す。

まさに少年キッズボウイの代表曲。底抜けに明るい楽曲に、あんまり明るくないワードが並ぶ歌詞の二面性という”らしさ”。

Ph. 佐藤明穂

ラスサビ前のカウボーイ・ビバップみたいなトランペットソロもかっこいいアクセントとなり、曲を盛り上げる。

この日、このタイミングで会場の熱気は最高潮に達した。
間髪入れず、本日ラストとなる『ダイムバッグ・ヒーロー』に繋げられる。この曲は『桜の木の下には』と同じくダウ90000の単独公演のために書き下ろされた曲だ。

『桜の木の下には』はオープニングだったが、こちらはエンディング曲。ひたすら愉快なアッパーチューンだ。明るい曲だが、確かにオープニングというよりもエンディングっぽい曲。セトリの最後にもってこいの1曲。”戦争よりも恋をしようぜベイベ”というフレーズが筆者のツボに入り、頭から離れなくなった曲でもある。

始まりからずっと明るい雰囲気で進むのに、曲の終わりだけ急激にさみしくなる。そこで”あ、終わってしまうのか”という現実を突きつけられる感覚に陥る。それにしたって、そんな急に手のひらを返したように突き放さないで欲しい。

会場全体が”楽しかった!”という空気であふれる。観客から盛大な拍手で見送られるように、少年キッズボウイはステージをあとにした。
メンバーが去ったあと、盛大な拍手はそのままシームレスに手拍子に変わる。まだまだ帰るつもりはないし、夏休みを終わらせるつもりもないらしい。

だんだんとスピードを上げる手拍子に呼ばれるようにGBがステージに戻って来る。「早いのよ」と、あまりにも早くアンコールを求められたことにツッコミを入れ、物販の紹介も挟んでアンコールブロックに突入した。

Ph. 佐藤明穂

アンコール1曲目は先月リリースされたばかりの最新曲『エバーグリーン』
歌詞も曲調も非常に夏らしい、爽やかさを感じるネオアコっぽい1曲だ。
世の中には”そんな風景を見たことがないはずなのに、なぜか日本らしい印象を持ってしまう”ものが存在する。

例えば、”白いワンピースに麦わら帽子の少女”とかだ。現実に見て記憶に残ってるわけでもなければ、そういうキャラクターが登場する国民的作品がパッと出てくるわけでもない。それなのに、なぜか不思議と”日本の夏っぽい表現”だと感じてしまう。

それと同じような”日本の夏の風景”を『エバーグリーン』から筆者は感じてしまう。
日本に少年兵は居ないし、管制塔の通信を盗んだこともない。覚えがあるのなんて遠足と水疱瘡くらいなのに、不思議と”日本の夏”を感じてしまうのは筆者だけだろうか。

なぜかは分からない。言語化したくて何度も聴いているのだが、まだ分からない。誰かこの現象を言語化して欲しい。

アンコール2曲目、本日の本当にラストの曲は『ぼくらのラプソディー』
筆者が朝のアラームにも設定している人気曲だ。
イントロもなくいきなり飛び込んでくるインパクトあるフレーズのサビ。明るい曲調に、明るいだけじゃない歌詞。諦念や無力感に包まれ、世の中への皮肉を吐きながらも、反骨精神や行動を起こしたい気力も感じる。

ソウルのようで、パンクのようで、ポップスのような。売れ線のようでいてセルアウトではない、この辺のバランスも非常に良い。

色々なジャンルの音楽から影響を受けているであろう、少年キッズボウイらしさを感じる名曲だ。

加藤マニが手掛けたMVも素晴らしいのでぜひ見て欲しい。リッチさが際立つわけではないが、チープと言うのは憚られる。カットではなく映像全体で楽曲の世界観や魅力を伝えられるような素晴らしい作品だと思う。

以上、アンコール2曲を含む全17曲を披露し、少年キッズボウイのお楽しみ会は惜しまれつつも幕を閉じた。

Ph. 佐藤明穂

<セットリスト>
01.スラムドッグ・サリー
02.君が生きる理由
03.桜の木の下には
04.海を見に行く
05.だってTake it Easy
06.名前をつけてよ
07.なんてったっけタイトル
08.春の子供
09.下北沢ターミナル
10.中野シャンゼリゼ -麦酒大学のテーマ-
11.告別式では泣かない
12.南池袋セントラルパーク
13.キスをしようよ
14.最終兵器ディスコ
15.ダイムバッグ・ヒーロー

<アンコール>
01.エバーグリーン
02.ぼくらのラプソディー

リリース告知

10月8日(水)
新曲『下北沢ターミナル』を配信リリース!

10/15(水)の19時
下北沢にある下北線路街 空き地にて新曲リリースに合わせたフリーライブの開催が決定!
12月に発売するEPの予約受付も行われます!

配信予約👉
🔗https://lnk.to/pre_shimokitazawaterminal

下北線路街 空き地
🔗https://senrogai.com/akichi/

9月23日(祝火)の24時から
先行試聴も可能となりますのでチェックしてください!

YouTube
🔗https://youtube.com/source/ZcZ1xkY5Y7s/shorts

TikTok
🔗https://tiktok.com/music/-7550391690469656577

各種リンク

公式HP:
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