“音楽と人を繋ぐイベント”というコンセプトのもと2024年10月から始まった「UP BEAT MUSIC」
2025年6月14日(土)に下北沢の2会場「おてまえ」と「近道」にて開催された「UPBEAT MUSIC FES Supported by DigOut 」は、次世代を担うアーティストたちが、それぞれの“今”を鳴らし、弾き語りの静けさも、バンドの爆発力も、どちらも堪能できる観客の心を熱くした贅沢な日となった。
この記事では、そんな「近道」で熱く繰り広げられたバンドライブの数々の余韻と、現場の熱量を全力で記したレポートをお届けする。
フレッシュな衝動が昼の空を駆け抜けた「VANET」
トップバッターとしてステージに登場したのは、2024年9月始動の夜行性ロックバンド「VANET」
ステージに現れた4人は、まるで勢いそのものを音に変えたような爆発力で観客の心をつかんで離さなかった。
サウンドの一体感は圧巻で、それぞれの楽器がぶつかり合うのではなく、同じ衝動の波を生んでいくような流れがあった。特にリズムの推進力とボーカルの熱量が絡み合い、会場は瞬く間にVANETの色に染まっていく。
『オブヴィアス』で幕を開け、『空花』『マッチングヘッド・ホワイト』から、新曲の『ダウンタウンガール』へと繋ぐ展開は攻めの姿勢そのもの。
さらに中盤、もう1つの新曲『月下、崩れゆく夜を眺め』では、荒々しさの中にも夜の情緒が光り、儚さと衝動が交差する一瞬を感じた。
終盤、『必要悪英雄』『インフルエンサー』と畳みかけるように駆け抜けた彼らの姿は、まさに今という瞬間を生きている証明のように感じ、衝動、躍動、そして純粋に“音を鳴らしたい”という願いが重なり合ったステージとなった。
VANETは、ただ勢いがあるだけではなく、血の通ったロックバンドとしてこの日、確かにその名を「近道」に刻みつけた。
VANET 公式 X:https://x.com/vanetvanet
沈黙が揺れた「是猫」のステージ
ステージに「是猫」が現れた瞬間、会場の空気は少しだけ緊張を孕んだように感じた。
それはきっと、彼らが発する感情という名の音が、静かに、そして確実に観客の心に入り込むことを、誰もが無意識に感じていたからだろう。
『最近の事』から始まった是猫のライブは、現在地を確かめるように始まり『SECRET ACCOUNT』『^x^FATCAT^x^』『殺伐さん』へと進むにつれ、その輪郭はどんどん鮮やかに、熱を帯びていった。
衝動的なギター、切り刻むようなビート、吐き出すようなボーカル。是猫の音楽は、音以上に呼吸に近い感覚を覚える。
静かに蓄えた感情が、一瞬で爆発するような危うさと美しさを共存させている。
『BAD』『アイス』そして『ANARCHY』へと続くセットリストは、まるで感情の底に潜っていくようだった。
叫びにもならない想いが、ノイズとメロディの狭間で形を持たずに揺れていた。
ラストの『SAD』では、言葉にできない感情の影を、音が静かに照らしていた。悲しみは弱さではなく、そこに留まり続ける力であることを、是猫は確かに鳴らしていた。
“感情の出口としての音楽”
音が大きいとか、鋭いとか、そういった技術的な話を越えて、人が何かを感じるために存在する場所。
その静かで切実な時間が、確かにあった。
是猫 公式リンク:https://lnk.to/xeneko
熱と光がそのまま音になった「liquid people」
音が鳴った瞬間「liquid people」のライブは、自然に流れ出すように会場を満たしていった。それは押しつけがましい熱さではなく、心の中に染み渡っていくような熱さだった。
『Bring you the light』で始まり『Aspiration』と続く冒頭から、その“熱”はすでに会場の奥まで届いていた。
ギターの音が粒立ち、伸びやかなボーカルで空間を包むアンサンブル。一つひとつが丁寧で、それでいて迷いなく進んでいく。
新曲の『車窓』ではその視線が未来へと向かって伸びていき、過去の回想から、今という進んでいく時間を等身大で表現した。
音となって流れ出す。その心地よさと誠実さに、会場はしっかりと応えていた。
終盤、『Automation』『Goodbye youth』『Hierarchy of needs』と進む中で、音の密度はさらに高まり、liquid peopleが持つ、伝える力が際立っていく。
楽しそうに歌うその姿、音を鳴らすことそのものを純粋に愛している空気が、何よりも心を打った。
熱をそのまま音にして届けることのできるliquid peopleのライブは、飾らない感情と誠実なロックが溶け合った時間となった。
liquid people 公式リンク:https://orcd.co/ld2ogm
突き抜ける音の力を見せつけた「HINONABE」
「HINONABE」がステージに立ち『Need more Sleep』を披露した瞬間、空気が一段階引き締まった。
それは、ライブが上手いから、という言葉では片づけられない、積み上げてきた確かな経験と実力が放つ音の気配だった。
一音一音、そして一語一句に人間味が溢れ、圧倒的な歌唱力とバンドのタイトな演奏が響き合い、2曲目『裸体』を披露。瞬く間に景色が切り替わり、音の色も変わっていく。
高音も低音も、まるで呼吸するように自然で、感情をまっすぐ貫いてくる。華やかさの中にリアルな想いが息づいており、“上手い”だけでなく、“深い”と感じさせる説得力があった。
MCでは磯 敢太(Vo/Gt)が「梅雨の時期、湿気もあって、雨も降ってて、癖っ毛もでちゃう季節ですけど、今では大切な人を思い出せる季節で好きになりました。」と話し『6月12日(火)、庭』を披露した。
誰かを強く想う歌は、聴く側にそっと寄り添ってくれる暖かさを感じさせる。
一つ一つのライブに全力を注ぐHINONABEのステージは、音楽を“観る”のではなく感じるための場所だった。
確かにそこに立ち、今を生きる彼らの強さが、音になって響いていた。
HINONABE 公式サイト:https://lit.link/HINONABE
渦巻く音と熱に巻き込んだ「CozyLand」
続いて登場したのは、サイケデリックロックバンド「CozyLand」
ポップでサイケなイントロが鳴った瞬間、会場に立ちこめたのは煙のような音のうねり。重低音が足元から突き上がり、ギターが空間を引き裂く。そのすべてが鮮やかに混濁していた。
彼らの魅力は“本気”という名の熱にある。ステージの上で叫び、揺れ、時に微笑む。そのすべてが観客を巻き込むために存在していた。
全力投球のパフォーマンスに、誰もが自然と身体を揺らし、声を上げ、心の壁を取り払っていた。
“観る”から“感じる”へと変わっていくライブ。彼らの音は、決して一方的ではない。リズムのひとつ、ギターの歪みのひとつまでが、観客と交わることを前提に鳴っていた。
観客と同じ熱量でこの場を楽しむ姿勢が、バンドとしての実力を物語っていた。
サイケで超ロック、だけどそれ以上に“生”の熱を感じた。音に巻き込まれる快感、そして巻き込もうとする情熱。
CozyLandのライブは、音楽と人間の間にある距離を、すべて吹き飛ばすような一幕だった。
まだまだ魅力を隠し持っているような、そんなミステリアスな雰囲気も感じられ、今後の彼らの活躍は底知れず、と言ったところだ。
CozyLand 公式 X:https://x.com/cozylandband
誰一人置いていかない本気の「Viewtrade」
「Viewtrade」のステージは、1曲目の『レッドライト・グリーンライト』から本気だった。
キャッチーなサビとサウンドが鳴るたびに空気が震え、その真剣さに観客は一気に引き込まれていく。観る者の心をまっすぐに撃ち抜くような、真正面からのアプローチ。
バンドとしての演奏力も非常に高く、ライブそのものの完成度が際立っており、音楽に命を燃やす姿勢が、ステージ上のすべてに表れていた。
MCでは、池田リン。(Vo/Gt)が「お客さんが一人でもいたら命をかけて俺らはライブするし、全体に向けてというより一人一人に向けてって感覚がずっとあります。なので嘘はつけない。丁寧に心を込めて歌いたいと思います!」といい、8月(2025年)にリリース予定のアルバムから1曲披露した。
彼らの言葉がただの気合いや感情論ではないことは、演奏を聴けばすぐにわかる。タイトなリズム、緻密な構成、それでいて生の感覚を失わせないライブ感。
何より、観客を巻き込む力が抜群だった。煽るのではなく、本気の音で観客の心を震わせる。それに応えるように、観客の手拍子や声が広がり、ステージとフロアの熱が見事に交差する。
音楽で一つになれるというシンプルな感動を、真っ向から見せてくれたViewtradeは、ただ“盛り上げる”バンドではない。“本気で伝える”ことを全うするバンドだった。
Viewtrade 公式サイト:https://viewtrade.ryzm.jp/
混じり気のない純粋な輝きを魅せた「アスノポラリス」
“自信のない日々に寄り添う”広島発のロックバンド「アスノポラリス」のステージは『都合がいいな青春。』で始まり、段々と純情でまっすぐな熱さが満ちていき、続けて『ボーイズ&ガールズ』を披露した。
観客の心をそっと撫でながらも、同時に激しく揺さぶるような、優しくて、でも強い音が鳴り響いた。アスノポラリスが放つ熱量がそのまま音になっていくのを感じ、まっすぐな衝動が爆発していった。
柔らかなまなざしと、それぞれの音の個性を持ちながら、しっかりと寄り添い合っており、まるでバンドそのものが一つの生命体のようだった。そう思わせるだけの誠実な演奏と、一体感のあるステージを序盤から魅せてくれた。
MCでは、ゆうやたろう(Vo/Gt)が「UP BEAT MUSIC誘ってくれてありがとうございます!アスノポラリス観に来てくれてる人なんて絶対いい人じゃん?だから俺の音楽で絶対幸せにします!」といい『だんだん』を披露。
誰かを打ち負かすような激しさではなく、誰かと手を取り合うための強さがあった。だからこそ、会場にいた誰もが自然と身体を揺らした。
アスノポラリスのライブは、まるで綺麗な朝焼けのように開放的で清々しく見え、少しの憂いを帯びた夕焼けのようにも思え、心情を心地よく揺さぶった。
心の靄が払われ、暖かくも爽やかに前を向かせてくれる。そんな綺麗な時間が流れていた。
アスノポラリス 公式サイト:https://asunopolaris.wixsite.com/-site
「前髪ぱっつん少年」のライブはワクワクとキラキラの交差点
キラキラポップの秘密結社「前髪ぱっつん少年」がステージに姿を現した瞬間、観客の目と耳は一気に吸い寄せられた。
始まりは『シイクレットアンヴレラガアル』
その正体不明のムードとは裏腹に鳴らされるサウンドは洗練されており、耳と身体をくすぐるようなワクワクを助長させる。
オーシャンズ・ネ(Vo/Gt)が「はい!ここのいる全員が踊って帰れるような曲やります!」と宣言し『ハニィラヴ』を披露。
音源でもそのセンスは抜群だが、やはりこのバンドの真価はライブでこそ発揮されるだろう。自由なエネルギーが共存するそのパフォーマンスは、まさにステージの上でしか味わえない体験だった。
MCではオーシャンズ・ネが「度重なる出会いがありこのバンドができてると思うんです。だからこのバンドを途切れさせたくはない!だから今日より明日、明日より明後日っていう風に成長していきたい!そのために必要な曲をやる!聴いてください!」といい『rural』を披露。
曲が終わり「今日は楽しかった!楽しかったからみんなにも楽しく熱くなってほしい!みんなで歌おう!」と、オーシャンズ・ネが叫び『Re:Gain』が始まった。
ノンストップで楽しい空間を与え続けてくれる前髪ぱっつん少年のライブは『ですく・ぽっぷ!』締められた。はずだったが、突如、機材トラブルが発生し、演奏が叶わないという思いがけない事態に。
しかし、それすらもこの夜のハイライトのように観客を大いに沸かせた。
“ライブは生き物”それを体現するかのような一瞬に自然と拍手が巻き起こるほどで、その全てが“秘密結社”の名に恥じぬ、特別な一幕となった。
前髪ぱっつん少年 公式サイト:https://bio.to/maegami_tokyo