2025年6月6日(金) 下北沢Daisybarで開催された「イロムク pre. 夜伽」
「イロムク」の呼びかけに応じて集まったのは「ヨイズ」「是猫」「Apes」の3組。
音楽性も立ち姿もまったく異なる4組が共演を果たし、それぞれが自分たちの物語、音で“今”を鳴らし、感情をぶつけ、観客と真っ向から向き合った。
本記事では、そんな下北沢Daisybarで語られた物語、音の様子をレポートしていく。
よ:とぎ【夜✕伽】
・主君のため、病人のためなどに、夜寝ないで付き添うこと。
・通夜に死者のかたわらで夜通し過ごすこと。
踊るように鳴らした「ヨイズ」の音
イベントの幕開けを担ったのは、キャッチコピーに“良いメンバーと、良い音楽を、良い貴方と。”を掲げるバンド「ヨイズ」
軽快なイントロが鳴った瞬間から、観客の視線は自然とステージに吸い寄せられ、手拍子でヨイズを迎える。
開口一番、佐藤リョウスケ(Vo/Gt/Key)が「俺たちがヨイズ!最後までよろしくどーぞ!」と、爽やかに挨拶を交わし1曲目『愛のパラシュート』を披露。
2曲目には『smoke』が続き、景色が変わる。それこそがヨイズの魅力のように感じられた。疾走感のあるナンバーでは自然と体が跳ね、3曲目の『愛たくて』ではテンポを落とした音の隙間に感情が滲む。
曲間では「イロムク呼んでくれてありがとー!しっかりとイロムクに繋ぐためにも皆さんの協力が必要です!」と、観客を煽り『Flash!!』を披露。見事な一体感を生んだ。
「イロムクがバンド名を変えて続ける選択をしたことにすごい勇気を貰いました。形だけじゃない心にあるもの。だから、誰とやるかよりそこで何をやるかが重要だと思ってます。なので自分の表現したいことをあなたに向けて歌います!」といい最後に『ラヴロマン』を披露した。
引き込む曲と突き抜ける曲の緩急がしっかりとしており、“ただかっこいい音楽が聴けた”だけではなく、“ヨイズと一緒にこの空間を作った”という満足感が残るライブとなった。
イベントのオープニングを単なる“前座”で終わらせなかったヨイズは、トップからライブの空気を掌握し、場をあたため観客を引き込んだ。
熱のこもった最高のバトンは、確かに次のアクトへと託された。
声にならない想いを歌った「是猫」
2番手に登場した「是猫」のライブは、感情そのものだった。“声にならない想いを吐き出す”この言葉が、これほどしっくりくるバンドがいるだろうか。
1曲目『アイス』から、その熱は全開だった。轟音のなかに浮かぶ繊細なメロディ、それと荒々しい衝動が同時に鳴っており、感情が音になっているとはこういうことかと納得させられるオープニングとなった。
続く『殺伐さん』『^x^FATCAT^x^』では、リズムの切れ味とバンドのアンサンブルが研ぎ澄まされており、観客の身体を自然に揺らしていく。疾走感と重さが共存しており、会場の空気が着実に熱を帯びていくのが伝わった。
中盤の『BAD』ではゆったりと進む時間と共に、自身の弱さを吐露し、儚い時間がゆっくりと流れた。
『ANARCHY』では、より内面的な一面を覗かせ、様々な声にならない熟れた感情を、耳ではなく胸に突き刺さしてくる感覚があった。
MCではさとる(Vo/Gt)が「呼んでくれてありがとうございます。前から知ってたバンドなので嬉しいです。なんかイロムクの藤沼さんが是猫の曲を車でかけてくれてたみたいで、それでスピードの出しすぎで…ね。でも嬉しいですね。」と申し訳なさそうにだが、嬉しそうに語る。
終盤の『最近の事』『SECRET ACCOUNT』では、今という時間や、自分自身の輪郭を確かめるように音が鳴っていた。
自分自身の事を、音楽に投影し、昇華している是猫の楽曲は、素直に身体の芯に染み込んでいくようだった。
照明の下で汗を輝かせながら叫ぶ姿に、誰もが心を動かされた。
是猫のライブは、単なる“音楽の場”ではなかった。自分の心を見つめ直すきっかけになる、そんな濃密な時間となった。
公式HP:lnk.to/xeneko
自分との向き合い方を提示した「Apes」
続いて登場した「Apes」のライブは『ハイライト』で幕を開ける。序盤から明確な意志を持ってフロアの空気を掌握していき、爽やかなサウンドの中に柔らかい包容を身体いっぱいに感じた。
観客にしっかりと寄り添いながらも、自分たちらしさを決して手放さない。その姿勢が音にも言葉にも滲んでいた。
『ネバーエンド』では、”終わりのない日常”を肯定するような優しさと、少しの焦燥感が同時に混在しており、まさに今を生きるリアルな音楽だった。
MCでは坂井(Vo/Gt)が「今までライブで観客を煽るの嫌だったんですけど、楽しむ術だなと最近思い始めました。強制はしないです!周りに流されたい人は流されていいし好きに楽しみましょう!俺らも好きにやらせてもらいます!後半戦もよろしく!」と放ち『Farewell』を披露。
別れや断絶をテーマにしながらも悲壮には感じず、問いかける形で描かれる。その中には潔さも感じられた。
葛藤や自己嫌悪と向き合いながら、それでも前を向こうとする感情がリアルに伝わってくる。だが、その思いを誰かの価値観に合わせ、従う必要なんてないと、音が背中を押してくれたように感じる。
そして最後の『How are you?』では、我々が普段感じるであろう感情を繊細にコントロールしながら音楽に落とし込み、最後まで熱を絶やさなかった。
Apesのライブは、ただ上手いだけではない。技術の裏に、生き方そのものが透けて見える。
自由に、まっすぐに、自分らしく。そんな彼らの姿勢にApesというバンドの芯の太さを見せつけられた。
公式HP:https://apes-band.jimdofree.com
過去と現在を生き 未来に進む「イロムク」の物語
2024年9月に現体制となった「イロムク」は下北沢を中心にライブ活動を行っており、SNSを中心に注目を集めている。
そんなイロムクのライブは、しっとりとした滑らかなサウンドが我々に寄り添う形で『コンタクト』から始まった。
ライブタイトルである「夜伽」が示すとおり、最後の物語の、最初に語られた“物語(楽曲)”は深く、強く、そして未来を感じさせるものとなった。
続く『泡』では、激しい演奏のなかにある儚さが際立つ。目の前の衝動と、どこか消えそうな不安感が入り混じったようなサウンドだ。イロムクの曲には、“壊れそうな強さ”という矛盾が共存しているように感じられる。
3曲目『生(きてる)ゴミ』は、言葉の鋭さが胸を刺す。生々しいタイトルに違わず、自分自身の惨めさや怒りを曝け出すような歌詞に、フルスロットルで飛び込んでくるバンドサウンドと、藤沼 絢(Vo/Gt)の真っ直ぐで力強いシャウトに、観客の感情が一気に引き寄せられる。
MCでは、藤沼 絢が今回のイベントについて「自主企画は僕が好きなバンドを呼ぶ感じでして…トッパーのヨイズは喉から手が出る程欲しい声を持ってて、是猫はあれから聴いてないです(笑)気分が良くなりすぎちゃうので(笑)Apesは、色々ボロボロだった僕がApesの曲を聴いて救われたんですよね。それから一緒にやりたいと思っていたので今日叶うことができて良かったです。」と、それぞれのバンドに対しての思いを我々に伝えてくれた。
続けて「もう何曲かしかありませんが、このメンバーと最初に作った曲を聴いてください」といい『薬指』を披露。
綺麗なだけでは終われない「イロムク」の物語
2025年7月7日(月)の七夕の日にリリース予定の『夏の夜』では、夏という季節の浮つきではなく、夜の切ない静けさを感じた。その空気感をまるごと音に変換して届けてくるのは、イロムクにしかできない芸当だ。
最後の曲は2025年6月6日(金)のイベント当日に発表されたばかりの『ネイル』を披露。
タイトルのイメージを裏切るような、まっすぐで痛烈な感情のラストスパート。後悔を反芻している様子をそのままぶつけてくるかのような歌詞と演奏で、観客の熱量も一気に最高潮へと駆け上がった。
全ての感情を出し切った彼らはステージを降りたが、観客の熱はそう簡単には冷めず、イロムクの再登場を願う拍手が止まらない。しばらく経つとイロムクが再度登場。
アンコールに『恋煩い』と『他人』を披露し、過去現在未来を繋ぐようなイロムクのライブが終了した。
何度もメンバーチェンジや転換期を経てきたイロムク。それでも彼らは今、確かにここにいる。そして、これからもっと遠くへ行こうとしている。
その姿勢とイロムクの今後の物語、音に期待せずにはいられない。
セットリスト
1.コンタクト
2.泡
3.生(きてる)ゴミ
4.薬指
5.夏の夜
6.三枚目
7.ネイル
En1.恋煩い
En2.他人
イロムク ライブ情報
2025年8月28日(木) at 下北沢MOSAiC
Digital single “夏の夜”release floor live
「夏の夜」
※2025年7月7日(月) 0:00 配信開始