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オレンジスパイニクラブ、大人になって手にした自信と遊び心ーー鋭さの裏に鼓舞と信頼を隠した『好きにしろ』

歳を重ねることは、何かを諦めることなのだろうか。仕事が、家族が、守るべきものができて、自分の人生の主人公を降りなくてはならないのだろうか。オレンジスパイニクラブが2026年9月16日(水)にリリースする3rdフルアルバム『好きにしろ』は、30代を迎えたメンバー4人が「誰のために生きるのか」「何が好きで、何を鳴らすのか」と向き合った末に紡がれた結晶のような1枚である。

2017年2月。全員が20代に突入したことを記念し、アルバム『under20』を世へ放った彼らは、あれから10年の時を経て、飾らない自分たちに対する確固たる自信とその自負に裏付けされた遊び心を手にした。

彼らのディスコグラフィー史上、最も伸び伸びとした1枚を手に、話を訊いた。

取材・文:横堀つばさ

原点回帰のようで、より進化した部分も提示できる作品

(Photo by Toya)

ーー『好きにしろ』は、大人になったオレンジスパイニクラブのデビューアルバムみたいな作品だと受け止めていて。テンポが目まぐるしく変わっていく構成や、雑多だけど温かいパンキッシュな音像、〈いつかまたライブにおいでよ〉(「君とはこれっきり」)みたいな今だからこそ書けるリリック、全ての要素に背伸びがないアルバムだと思うんです。皆さんは、このアルバムがどのような作品になったと感じていますか。

スズキナオト(Gt/Cho):「大人のファーストアルバム」って言葉がめちゃめちゃしっくりきたというか、原点回帰のようで、より進化した部分も提示できる作品になりました。決して意図していたわけではなかったんですけど、メンバーそれぞれが30歳になるタイミングだったし、大人っぽさもある。「オレスパを聴くなら、これを聴いてよ」っていうアルバムになったのかなと。

ーー当初はどのようなコンセプトを描いていたのでしょう。

スズキナオト:いや、なかったんですよ。むしろ、コンセプトがないからこそ、自由に作ろうと思っていて。その時書きたいものを書いていくことを全曲で貫いたんですよね。その結果、自分が好きなミドルテンポの楽曲が増えていったっていう。

ーーこれまでの作品を振り返ると、パンクに軸足を置いた『生活なんて』だったり、音楽的なバラエティを拡大した『Crop』だったり、作品ごとのカラーが定まっていたじゃないですか。そんな中、前作の『ナイフ』はリアルタイムの自分たちを直接的に反映した1枚で。『ナイフ』のモードを汲んだ結果、今作も書きたい曲を書いていく方針になっていった?

スズキナオト:もちろん『ナイフ』あっての作品なんですけど、フルアルバムとEPという形態には、やっぱり自分の中で違いがあって。フルアルバムで自由にやる、っていう挑戦はこれまでなかった気がするんですよね。そういう意味では、全く新しい気持ちで曲を書けていました。

スズキユウスケ(Vo/Gt):そうだね……『ナイフ』や『夏服』のレコーディングが楽しかったんですよ。でも、そこで発揮できなかった力もあったりして。前作で出し切れなかった分をぶつけるように、勢いを持ってスタートダッシュを切ることができたアルバムでしたね。

ーーゆっきーさんはいかがですか。

ゆっきー(Ba/Cho):これまでは力を入れてフルアルバムを作っていたんですけれど、今回は自分たちのやれる範囲を大事にできたというか、遊び心を持って制作に臨めた気がしています。アレンジャーさんに入ってもらったわけでもないし、背伸びをしていない。「俺らができるのってこうだよね」とみんなが分かった上で、曲作りが進んでいったんです。

ーー「オレスパとしてできることをきちんとやっていこう」というモードになっていったと。

ゆっきー:自分たちの脳みそで考えられる範囲内のことと向き合っていきました。というのも、ストリングスにも打ち込みにも取り組んだし、オレスパとして一通りの挑戦ができたと思うんですよ。その結果、「俺らって、やっぱりこうだよね」という共通見解を掴んできたのかなと思います。

スズキナオト:でも、「口」には悲鳴やノイズのSEを入れたりもしていて。使い所を大事にしているというか、「本当に必要だから、色んな音色を使う」っていう考えに行き着いたんです。「Crop」や「Last Night」で挑戦もしたからこそ、『ナイフ』くらいからは4人で鳴らせる音を意識していますね。

ゆっきー:4人で鳴らせば、結局良い感じになることは間違いないので、いちプレイヤーとしての好奇心に対して素直に工夫を凝らしていきました。そういう意味でも自由度が増しましたし、年を重ねるにつれて「オレンジスパイニクラブのベースはこうあるべき」みたいな固定観念が「オレンジスパイニクラブのベースはこうあっても面白い」に変わってきたんです。

ーーよく分かりました。さて、ゆりとさんはこのアルバムに対してどのような印象をお持ちですか。

ゆりと(Dr):これまでと変わった部分を考えてみたんですけど、演奏面だけなのかなと思っていて。演奏のスキルが成長していくにつれて、曲の説得力も上がっているんですよね。ドラムにしても、ソリッドにエッジを効かせたり、逆に丸みのあるサウンドにしたり、音色の選択が上手くなった。「オレスパの音はこれだよね」っていう一つの完成系が見えてきていますし、レコーディングの文字通り、今の自分たちを記録できた感じがします。

(Photo by Toya)

ーー皆さんが想像する理想的なオレスパのサウンドは、段々と変わってきているのでしょうか。それとも、結成当時から目指している音自体は変化しておらず、スキルが追いついたイメージ?

ゆりと:僕は理想自体が変わってきていますね。昔はもっとデッドな音にしたかったというか、音を止める作業に意識が寄っていて。でも、今は音が鳴り続けるくらいにしたい。

スズキナオト:作曲の立場で考えると大きな変化はないんですけど、演奏面で言うと好きな音楽が増えたことで、やりたいことは変わったりもしていて。もちろん、自分が想像している音を形にしやすくなったという観点もありますし。どっちの側面もある気がしますね。

スズキユウスケ:理想に追いついたというより、50、60歳までずっと理想には追いつけないままなんじゃないかなと思うんです。特に僕は好きな音楽を聴き続けるタイプなんで、好きな音はずーっと好きな音で変わらないから。鬼ごっこみたいなもんなのかな。

ーーユウスケさんは、その追いつかなさに苦しくなる瞬間はないんですか。

スズキユウスケ:いや、苦しいですよ。「良い曲できた!」と思う瞬間なんて、年に1、2回くらいしかない。でも、理想を大きく持ってますし、ライブも楽しいんで。なんか、今は大きく理想を語るのは辞めてるんです。演奏は3人に任せて、僕は歌に集中する。そういうモードなんです。

30代って全員が全員幸せなわけじゃないと思った

(Photo by Toya)

ーー冒頭で「メンバーそれぞれが30歳になるタイミングだった」という話もありましたが、〈30、なんて幸せだろう 言い聞かせながら。〉と歌う「深呼吸」でアルバムが締めくくられ、〈everything gonna be alright〉と軽やかに歌う「リモン」で再びリスタートする構成が素晴らしいと思っています。「深呼吸」は30歳を迎え、どのように生きていくのかを考え直していく1曲ですが、このナンバーはどのように生まれたのでしょう。

スズキユウスケ:そもそものテーマを辿ると暗い話になっちゃうんですけど、「深呼吸」は家に引きこもって何もできないような男の歌で。正直に言うと、後からメンバーに向けた歌になっていったんです。でも、苦労しているその男の様子が、30歳になったメンバーの姿と重なったんですよ。

ーーなるほど。

スズキユウスケ:20歳になった時にリリースした『under20』から10年が経って、メンバーそれぞれが30代に差し掛かろうとしている。そんな中で、30代って全員が全員幸せなわけじゃないと思ったんです。とはいえ、この4人でやってきたバンドは楽しいことの方が多かったし、暗いままで終わりたくなかった。だから、最後の最後で〈ドアノブを回す〉とちょっとした希望を付け加えたっていう曲ですね。

ーー引きこもりの主人公とメンバーやバンドの歩みをリンクさせることで、この曲にどのようなメッセージを託したいと考えていましたか。

スズキユウスケ:このアルバムがリリースされる時に〈30、なんて幸せだろう 言い聞かせなくても。〉と歌えているのは事実じゃないですか。なので、「今やれることをやっていきたい」っていうちっちゃい願いを落とし込めた気がしています。とにかく、今を大事に。好きに、好きに生きてください、という意味を込めました。なんせ『好きにしろ』ですから。

自然と「この曲たちを越すようなアルバムを作りたい」と思うようになりました

(Photo by Toya)

ーー実は、今のお話を伺ったのは『ナイフ』のインタビューで、ユウスケさんが「曲をかかなきゃいけないという焦燥感や、バンドを続けているか分からない不安感を原動力に曲を書いている」という旨をお話されていたからで。

スズキユウスケ:めちゃくちゃ心境的に変わってるな。

ーーそうなんですよ。焦りや不安と向き合っていた1年前に比べて、「深呼吸」は「それでも生きたいように生きていこうぜ」みたいな価値観が溢れている。なので、この変化の背景を伺いたいです。

スズキユウスケ:ドラマのタイアップである「blur」のお話をいただいた時くらいから、モチベーションが大分変わっていきました。おっしゃっていただいたインタビューの時はアルバムを作ることも決まってなかったんですけど、「blur」があって、フルアルバムを作ることを決めた瞬間に、燃え上がるような感情が湧き上がってきたんですよ。

ーーいきなりギアが入った?

スズキユウスケ:「こんなに違うんだ」って思うくらい、めちゃくちゃ気合いが入りました。演奏の自由度が上がっている自覚もありましたし、メンバーとは何でも言い合える関係だし、「曲ができるぞ」みたいな絶対的な自信があって。これまでとは違うモチベーションが生じたんですよね。

ーーなぜ、その絶対的な自信が生まれたんだと思いますか。

スズキユウスケ:『夏服』を通じて昔の曲に改めて触れて、過去と現在のオレスパそれぞれを確かめられたことが良かったのかなと。『ナイフ』の時は視野が狭くなってたというか、直近のオレスパのことだけを考えていたんですよね。でも、今作は曲数も多かったし、曲作りに対する心のゆとりを持てた。しかも、再収録したことで「昔の俺ら、こんなに格好良かったんだ」みたいな自信も付きましたし。だからこそ、「今はもっと格好良くなきゃいけないな」と思うようになったんです。さらに言うと、インディーズ時代の楽曲から最新曲までを全部聴き返したんですよね。

ーーほう。

スズキユウスケ:普段はなかなか昔の曲を聴き返すことなんてないんですけど、改めて過去作と向き合って。そしたら、自然と「この曲たちを越すようなアルバムを作りたい」と思うようになっていきました。

ーー今のユウスケさんのお話は、ナオトさんが冒頭でおっしゃっていた「書きたいものを書いていくことを全曲で貫いた」「全く新しい気持ちで曲を書けた」というお話とも繋がりそうですよね。

スズキナオト:「口」や「blur」のタイアップで曲を書くキッカケをいただいてからは、「曲が書けるぞ」とさえも思わなかったんですよね。書きたいから書くというか、ダラダラしているなら曲を書きたいっていうモードになっていて。

ーーそのモードは毎回訪れるものなんですか。

スズキナオト:前作だと「ネクター」、その前だと「Last Night」はそういう気分で書いた曲なんですけど、いつもは一作品につき2曲くらいがエンジンがかかった状態の曲なんです。でも、今回は全曲そういうテンションで臨めた。ユウスケも言ってましたけど、フルアルバムという自由度の高いフォーマットの上で、なおかつ縛りがなかったので、楽しんで曲を書けたんだと思います。

ーーおっしゃっていただいた前向きな姿勢は、アルバムのタイトルにも反映されているように感じました。

スズキナオト:実は『好きにしろ』というタイトルは、何十候補もある中で、全然タイトルが決まらなかったことから思いついたもので。最初は、そこまでポジティブなわけではなかったんです。でも、投げやりに見えて愛情がある言葉にも聞こえるし、自分たちを鼓舞するようなワードでもあるし、「俺らは好きにレコーディングしたから、好きに聴いてくれ」みたいな気持ちも代弁してくれてる。そういう意味では、凄くこのアルバムにハマる題名なんじゃないかなと。

ーーまさしく。この伸び伸びとしたムードのまま、10月14日(水)からワンマンツアー2026 『Do you like me?』がスタートします。全13都市を巡る旅となりますが、どのようなツアーにしましょうか。

スズキナオト:今回はお客さんが聴きたい曲の形のままライブでも届けたいと思っています。今回のツアーを通じて、きちんと好きな曲を届け切る意識を持っていきたいです。

ゆりと:今回はシンガロングできる楽曲が多いんで、ちゃんと覚えてきてもろて(笑)。ぜひ、来ていただいて、一緒に歌いたいですね。

スズキユウスケ:全曲良い曲なんで、自信を持ってツアーに臨みたいですし、オレスパの歴史を塗り替えるようになったら良いなと。

ゆっきー:ファイナルのZepp Shinjukuまで走り抜いて、オレスパがもっともっと色んな人に聴かれたら嬉しいなと思っています。

(Photo by Toya)

リリース情報

◼初回限定盤
¥5,500(税込)(WPZL-32328/32329)

◼通常盤

¥3,520(税込)(WPCL-13810)

【収録内容】※通常盤&初回限定盤共通
1.リモン
2.おとめ座のココロ
3.blur ※MBSドラマイズム「マトリと狂犬」OP主題歌
4.無くしたピックを重ねて月に行こう
5.Fxxin’ in the Darling
6.夕暮れて世田谷
7.グッドバイ!!!!
8.52Hz
9.口 ※映画「口に関するアンケート」インスパイアソング
10.君とはこれっきり
11.なるべくそばにいるから
12.深呼吸

【PlayPASS PAKカード】※初回限定盤のみ
オレンジスパイニクラブ presentsスペシャルワンマンライブ「パイン vol.11」
(2026.08.08 at club SONIC iwaki)

リリース記念 アコースティックライブ&サイン会

<開催スケジュール>
●東京
日時:9/19(土) OPEN 12:30 / START 13:00
会場:タワーレコード新宿 イベントスペース

※ご予約者様優先で「イベント入場引換券」と「サイン会参加券」をお渡しいたします。
※「イベント入場引換券」とイベント当日に交換でのお渡しとなる「整理番号付き観覧優先入場券」をお持ちのお客様がご入場後、スペースに空きがあった場合のみ、フリー入場とさせていただきます。

●名古屋
日時:9/22(火・祝) OPEN 16:30 / START 17:00
会場:アスナル金山 1F明日なる!広場

※イベント当日14:00〜、アスナル金山会場特設ブースにて対象商品をご購入いただいたお客様に「整理番号付き観覧券」と「サイン会参加券」をお渡しいたします。

●大阪
日時:9/23(水・祝) OPEN 12:30 / START 13:00
会場:ヨドバシカメラマルチメディア梅田 1F 阪急側イベントスペース

※イベント当日10:30〜、ヨドバシカメラマルチメディア梅田会場特設ブースにて対象商品をご購入いただいたお客様に「整理番号付き観覧券」と「サイン会参加券」をお渡しいたします。

参加方法、注意事項など詳細は下記ページをご確認ください。

▼詳細はこちら
https://wmg.jp/orangespinycrab/news/92731/

ライブ情報

「Do you like me?」

10/14(水) 福岡LIVE HOUSE CB 

OPEN 18:30/START 19:00 

10/16(金) 鹿児島SR HALL 

OPEN 18:30/START 19:00 

10/18(日) 広島SECOND CRUTCH 

OPEN 16:30/START 17:00 

10/19(月) 高松TOONICE 

OPEN 18:30/START 19:00 

10/31(土) 札幌SPiCE 

OPEN 16:30/START 17:00 

11/14(土) 盛岡the five morioka 

OPEN 16:30/START 17:00 

11/15(日) 仙台LIVE HOUSE enn 2nd 

OPEN 16:30/START 17:00 

11/19(木) いわきclub SONIC iwaki 

OPEN 18:30/START 19:00 

11/21(土) 名古屋SPADE BOX 

OPEN 16:30/START 17:00 

11/26(木) 新潟GOLDEN PIGS RED 

OPEN 18:30/START 19:00 

11/28(土) 金沢AZ 

OPEN 16:30/START 17:00 

12/13(日) 大阪梅田クラブクアトロ 

OPEN 16:15/START 17:00 

12/19(土) Zepp Shinjuku 

OPEN 16:00/START 17:00 

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