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「違う世界の日常」を鳴らす――MAKKURAGEが語る、海を越えて届く“非現実・日常ロック”と新曲「水中都市」

深海に漂うクラゲは、その神秘的な体躯を、今も光の当たらない場所で揺らしている。MAKKURAGEが紡ぐ緻密な音世界は、そんな目に見えないけれど確かに在る美しさの手触りを描くものだ。2023年4月に結成された4人組は、「非現実・日常ロック」を掲げ、これまでに2作のEP、8作のシングルを放ってきた。最近では海外リスナーにも広がりを見せる中、7月初旬には新曲「水中都市」をリリース予定。幻想的な世界観とドラマチックな展開をさらに深化させている。結成の経緯や音楽的ルーツ、創作観やライブ観まで、4人にじっくり話を聞いた。

文:サイトウマサヒロ

確かな自信のもと集まった四人

首巻(Ba):そうですね。特に深い理由はないんですけど、高校生ぐらいの頃からずっと着けてて、これがないと安心して外を歩けない。

結音(Gt/Vo):基本的には寒がりなんですよ。

首巻(Ba):だから、「まだ外さなくていいか」って思ってたらそのまま一年経っちゃって、一度外して出かけてみたら、不安になっちゃって。

首巻(Ba):はい。もう、季節がなくなったみたいな感じです。

首巻(Ba):ちょうどコロナが収まってきたくらいの時期に『閃光ライオット』があって、コロナ禍の特例で年齢制限がいつもより上だったんですよ。そこで、せっかくだし思い出作りというか、応募してみないかという話を結音にしまして。

結音(Gt/Vo):深夜に通話を繋いでね。

首巻(Ba):僕もサークルでギターやってたりしたんですけど、僕が歌うよりも結音に歌わせた方が良いなと思ったんですよ。技量的にもそうですし、細々と曲を作る中で、自分の曲に自分の声が合わないなと思ってたので。で、そのままのノリで次の日のサークルのライブの時に丈と亮二を誘ったっていうのが結成のきっかけです。二人は、その界隈で一番上手いギタリストとドラマーだったから。

結音(Gt/Vo):僕と首巻、丈と亮二がそれぞれ同じ大学で、どちらも色んなサークルが集まった連盟みたいなコミュニティで繋がりがあったんですよ。そのライブでも、僕以外の三人でハンブレッダーズのコピバンをやってたりして。

首巻(Ba):それも誘った理由の一つにあったね。

結音(Gt/Vo):そのライブが上手くいけば、OKしてもらいやすいだろうし。

亮二(Gt):打算的すぎる(笑)。

首巻(Ba):あんまり決めてないよね。それぞれ好きなバンドも結構違うし、こういうバンドになりたいっていうよりも、とにかく僕と結音が作った曲をそのまま四人の形にして出力できればいいなと思ったので。今でもあんまりジャンルは意識してないです。

結音(Gt/Vo):サークルで演奏している時のノリからして、この四人で曲を作ったら絶対に良いものになるだろうっていう自信だけがあって、その想いだけが先走って楽曲はあとから付いてきたっていう感じでした。

亮二(Gt):一番最初にちゃんと聴いたバンドはサカナクションで、実際に本当の根底にあるのはゲーム音楽とかアニソンになってくるのかな。特に一定のジャンルが好きっていうのも全然ないし。ギターも、中学は運動部だったけど向いてなかったから高校では別のことをしようと思った時に、なんとなく軽音に入って、最初に触ったのがギターだったというだけで。そしたらたまたま素養があった。

結音(Gt/Vo):素養(笑)。僕は両親がギターをずっとやっていたこともあって名前に「音」が付いているし、小さい頃からピアノをやってたので、音楽に触れる機会は多かったですね。小学生の時に動画サイトの『弾いてみた』がきっかけでポップスや当時のネット音楽を知るようになって、家にあったアコギを触り始めました。中高はいわゆる邦ロックを聴いていて、大学生になって岡山から上京してきてからは、昔から好きだったRADWIMPSやSEKAI NO OWARIのライブを初めて見たり、ライブハウスで色んなバンドを知ったりして、もっと聴き込むようになりました。UNISON SQUARE GARDENも、その頃にすごく好きになりました。

結音(Gt/Vo):コロナ禍でサークル活動ができない時期には、ボカロ曲を作って投稿したりしてましたね。

首巻(Ba):バンドを聴くようになったのはandropのおかげですね。中学生の頃、親が録画していた『Mステ』でandropが「Voice」を演奏していて、すごく興味が湧いて。ちょうどそのタイミングで、親戚からアコギを貰ったんです。だから高校では絶対に軽音に入るぞって感じで。そこからはジャンル関係なく色々聴いてきたんですけど、最終的にはマスロックやポストロック、エモ、オルタナにハマったんですけど、ポップなものからの影響が軸にはあると思います。

首巻(Ba):もう3、4回くらいは。再結成してから最初のライブも行ったし、先週も北海道でcinema staffとのツーマンを観て。

丈(Dr):スカートとか、星野源の昔の楽曲とか、ちょっとアコースティックっぽい音楽が好きです。多分、中学生の時からすごく好きなMr.Childrenの「水上バス」っていう曲がそのルーツにあるのかな。で、高校生になってから軽音部の先輩にハヌマーンを教えてもらって、その辺りのバンドも聴くようになりました。その二軸ですね。

結音(Gt/Vo):確かに。なんでドラムなの?

丈(Dr):多分、父親の影響なんですよ。ずっと「おやじバンド」みたいなのをやってて、パーカッションやドラムを担当してて。小学生の頃にそのライブを観たり、見様見真似で叩いてみて楽しんだりっていう記憶があるからだと思います。

海を越えて届く「非現実・日常ロック」

写真:@shuta_photo

結音(Gt/Vo):元々どっちも根底にはあるんだけど、作品として形にしやすいポップなものが自然と初期には多くて、だんだん込み入った音楽ができるようになってきたっていうことなんだと思いますね。1st EP(『落ちた色の記憶』)に入ってる「花と銃」は、もう「よくわからないことをやろうぜ」っていうコンセプトで作った曲なんですけど、そこから根幹の部分はあんまり変わってないんじゃないかなと。その時の自分が持ってる引き出しから、ハマってるものを持ち出してきている。

首巻(Ba):僕もあんまり変化は意識してないですね。僕、あんまり考えながら曲を作れないんですよ。だから初期から今まで、思いついたものをポンと出してる。

首巻(Ba):昔は、王道でポップスに寄った楽曲の方が、ライブで反応が良かったりYouTubeで再生回数が伸びたりしたんです。だけど最近、インスタを中心に海外のリスナーから見つけてもらうようになってからは、マスロック的な曲も別軸で評価してもらえるようになってきて。ちょうど今、「こういう方向を前面に押し出しても良いんだな」って気付けたところですね。表はポップスに見せて、より深いところで込み入ったことをやるっていう捉え方をしてた節が僕ら自身にもあるんですけど、そうじゃなくてもいいなって、考え直してる感じ。

結音(Gt/Vo):そうですね、この4月ぐらいから。インスタのリール動画が評価してもらえて。

結音(Gt/Vo):いや、スタジオの映像ですね。むしろライブの映像はほぼ上げない。ライブ映像は、暗いからなんとなくスキップされちゃうんですよ。スタジオの画だと、これから演奏がパッと始まるんだなっていうのがわかりやすいから、離脱率が低いのかなと思ってます。

首巻(Ba):そもそも向こうの方が明らかにポストロックやマスロックのリスナーの母数が多いですよね。People In The Boxもリスナーが一番多いのはアメリカらしいんですけど、僕らもそうなってきてて。単純な人口の差もあるけど、やっぱりそのジャンルの土壌が広いのかなと。

結音(Gt/Vo):アニメ文化の広がりも影響してるかなと思ってて。J-POPだとアニメの主題歌に使われてもどうしても日本語の歌詞を前面に出さなきゃいけないから、英語圏の人に響きづらいかもしれない。それに比べポストロック、マスロックは音色の美しさやフレージングに重点を置いてるから、アニメと一緒になった時に広がりやすいっていう側面があると思います。羊文学やキタニタツヤのヒットの恩恵を、僕たちも受け取っているんじゃないかと。

亮二(Gt):結構、必死でひり出したやつ。

結音(Gt/Vo):何かのオーディションに応募するときに、「あなたのバンドを一言で表すなら」っていう項目があって、ちょうどその時制作してた「目玉焼き、カフェオレ、透明。」に引っ張られてきた結果、そのフレーズが出てきたんじゃないかな。

首巻(Ba):僕は、あんまり歌詞で現実のことを書くのが好きじゃなくて。現実から逃避するために音楽をやってる節があるから、辛いことをわざわざ書く必要はないという意味で、「非現実」。それと、People In The Boxに影響を受けて風景描写や綺麗な言葉選びを意識してるんですけど、意味自体よりは詩としての一節の流れが美しいかどうかだけを考えているので、非日常的すぎることは書かないという意味で「日常」。

首巻(Ba):そうですね。どの曲も大体、違う世界の日常のことをイメージして書いてます。

結音(Gt/Vo):基本的には僕か首巻のどっちかが歌詞とメロディの原案を作る、ないしはギターのフレーズとか、曲の種になるようなものを持ってきて、二人で相談しながらある程度固めてから、全員でスタジオに入ったり、簡単なデモを作ったりしてメンバーに聴かせます。そこからそれぞれのフレーズが決まってきたら音源作りに入るんだけど、そこからは基本的に僕が主導してて。レコーディングの取り仕切りやミックス・マスタリング、細かいアレンジや全体のバランスは僕が調節しています。

丈(Dr):首巻は歌詞で難しい言葉を使わないようにしてるって話してて、確かにと思って。各単語は難解なわけではないんだけど、その組み合わせがちょっとおかしいみたいな。日常的に使う言い回しじゃないからこその良さがあると思います。逆に結音の詞は、普通の人間が使わないような単語がバンバン出てきて、それがクレバーな世界観として出力されてる。そちらも結果としては似てるんだけど、そこまでのプロセスは違うんじゃないかなというのが個人的な見解です。

首巻(Ba):メロディに関してはあんまり違いがないかも。元々、0→1を作る役割は僕が多かったんですけど、今は同じくらいの割合になってきて。セクションごとに作り分けたりしてるし。

結音(Gt/Vo):初期の数曲は、投げられたメロディをそのまま頑張って歌ってたんですけど、「いや、ここは低すぎるぞ」「高すぎるぞ」っていうフィードバックを返すようになってからは、結果的に作曲の傾向が統合されてきて、お互いの要素が組み合わさった楽曲になることが増えてきたと思います。

結音(Gt/Vo):実は、作詞自体に結構苦手意識があるんですよね。自分の言葉にあまり自信が持てなくて、しっかり推敲したものじゃないと納得できない。色々な類語がある中で、音韻やリズムを考えながら、どの単語が一番合ってるかを比較検討して決めたいんですよ。だからスピーディーさはないけれど、一つ一つの言葉の緻密さは練られているんじゃないかと思っています。パズルをやってるみたいな感覚ですね。(首巻に対して)歌詞は思い立った時に書いてるの?

首巻(Ba):メロディに合いそうな言葉を一つ見つければ、そこを起点にガッと世界を広げることができるから。大体1時間あれば出来るかなって感じですね。

音源で練り上げる世界、それを破壊するライブ

結音(Gt/Vo):当時プレイしていた『The Planet Crafter』っていうゲームから着想を得ました。主人公の乗った宇宙船が砂漠だらけの惑星に漂着するんですけど、そこには昔、人類が居た形跡があって。その謎を解き明かしながら、惑星を地球と同じような環境に変えていくっていう趣旨のゲームなんです。そのビジュアルをイメージしながら、裏のコンセプトとしては、恐怖っていうものの美しさを意識していました。「水中都市」に限らずずっと思っていることなんですけど、綺麗なものを見て美しいと思うってことじゃなくて、人知を超えた存在や自然の災厄、自分の制御下に置けないものに触れた時に、それを怖いと思うと同時に美しく感じるっていう感覚を大事にしてて。

結音(Gt/Vo):もちろんそれは、自分に危険が降りかかってこない、身の安全が守られている前提の感情ではあるんですけど。この「水中都市」っていう曲は、水中にある古代都市を目にした時の美しさや、そこにかつて存在した人たちに思いを馳せる時の感情を表現しようと思って作りました。

首巻(Ba):Cメロの一部分くらいだけ、僕が歌詞を書いてるんですけれど、9割くらいは結音が書いてて。このパターンは初めてかもしれない。

結音(Gt/Vo):いつもは5割ずつくらいなので、一本スラッと僕が書き上げて持っていったのは新しかったかも。

結音(Gt/Vo):シューゲイザーで使われるようなフィードバック音をちゃんと音源に入れたのは初めてだと思います。持ち込んだアンプで上手くハウリングを起こせなくて、色々工夫しました。

亮二(Gt):この曲はギターが4本とか、それ以上に重ねてます。原案の時点で結構固まってたけど、さらに違うアイデアが思い付いたから足してみたりとか、ライブでも、ギター2本だけど8本ぐらいの演奏を表現できたらいいなと思います。

亮二(Gt):音源ではできないことをやる場所だし、ある意味何をしてもいい場所だと思ってて。

首巻(Ba):(亮二は)一番楽譜を守らない。

亮二(Gt):きっちり原曲を演奏するのはこの3人がやってくれるので、自分は破壊しない程度に好きにやらせてもらってます。

結音(Gt/Vo):たまに破壊してるよ(笑)。

亮二(Gt):たまにね(笑)。それも含めて、再現性のないものを出していければなと思うし、それこそがライブに来てもらう価値なのかなって。

亮二(Gt):3人のフレーズが緻密で遊ぶ余地がないから、僕にそれが求められてるというか。伴奏を弾いてるこの人(結音)の方が、僕より3倍はギター上手いんですけど(笑)。

結音(Gt/Vo):初めてのライブで「『MAKKURAGE』っていう別のバンドのコピーバンドをやってるみたい」と言われて、緻密に作った音源を再現しようとするのはライブの本質じゃないなと気付いたんです。そこからはみ出す要素が一つでもないといけないって。僕は音源先行で考えちゃうところがあって、規律を守ろうとしちゃうんですけど、それを亮二が壊してくれてるんじゃないかなと思います。

首巻(Ba):音源よりもライブの方がフリーキーっていうのは結構言われますね。

亮二(Gt):どっちが上っていうより、別物だよね。音源だけでも楽しめるし、ライブを見に来たらまた別のものを味わえるんじゃないかなって。

結音(Gt/Vo):それぞれのメディアに最適化していった結果、違いが生まれるようになりました。僕は地方出身だから、一回一回のライブへの思いが大きかったんですよ。音源を聴いて楽しみを溜めてきた分、ずっと聴いてきた曲をライブで初めて聴けた時の感動ってすごいじゃないですか。MAKKURAGEのライブもそれを体感できる場所にしたいと思ってて。だから、音源制作もサボらないけど、ライブならではの仕掛けもちゃんと作りたい。ライブでゴールするっていう一連のリスニング体験を意識してますね。

丈(Dr):個人的には、野外で演奏してみたいです。シンプルに気持ち良さそう。

首巻(Ba):もちろん好きなバンド……それこそthe cabsやcinema staffとかと対バンできたら嬉しいですけど、何より音楽をやめずに続けていくことが一番ですね。中学生の頃から音楽を聴いてきて、僕の好きなバンドは9割以上解散か活動休止をしている状態なので、そうならないことを最大の目標にしたいです。

各種リンク

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