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<インタビュー>月と徒花は、まだ言語化されてない感情を歌う――「熱り」バイラルヒットの先、東京での新章へ

音楽は不器用な僕らを繋いでくれるけれど、言葉にしなきゃ伝わらないことは、ちゃんと言葉にしないとダメだ。月と徒花の歌、とりわけ柔らかなメロディとサウンドの上に乗る歌詞には、そんなしたたかな意志が宿っている。兵庫・三ノ宮で結成され、2025年4月に現体制となった彼ら。同時期に発表された楽曲「熱り」は今年に入りSNSで大きな広がりを見せ、ライブハウスの外側にもリスナーを獲得した。東京に拠点を移した彼らは、7月15日にはニューシングル「密か」をリリースし、同月27日に二部制の無料ワンマン、そして9月6日に東京での自主企画を控える。確かに掴んだその手を、ぐっと引っ張り音の鳴る方へ。

文:サイトウマサヒロ

日本語でしか表せない「徒花」

冨岡竜之介(Gt/Vo):高校の時から僕がギターでバンドをやっていたんですけど、19歳か20歳くらいの時に、ボーカルが急に抜けちゃって。それからライブハウスで弾き語りの活動をしてたんですけど、やっぱりバンドをしたいなということで結成したのが月と徒花です。当初は大学の軽音部の同じ学年の子と、地元のライブハウスで出会った後輩がサポートで入っていました。

冨岡竜之介(Gt/Vo):そうです。徒花は実を結ばない花のことなんですけど、他の国の言語で一つの単語に訳せない言葉なんですね。当初から日本語を重視したバンドにしたいと思っていたので、日本語でしか表せないバンド名にしようと思って、NAVERまとめの『綺麗な日本語50選』みたいな記事から見つけました(笑)。

でぐち(Dr):五十音順の「あ」で見つけちゃった(笑)。

冨岡竜之介(Gt/Vo):やりたいバンドの理想像がふんわりとあって。My Hair is Badがめちゃくちゃ好きだったので、スリーピースのザ・ギターロックで、歌詞を大事にして、インパクトのあることを歌おうっていう感じでスタートしました。ただ、元々J-POPも大好きだったので、メロディはとにかく歌えるもの、っていうイメージがありました。

でぐち(Dr):メンバーの趣味はバラバラだと思うんですけど、根本的にポップスが好きなところは一致してるかなと。僕が一番影響を受けてるのはONE OK ROCKなんですけど、小さい頃から家で嵐やスキマスイッチ、スピッツがずっと流れている環境で育ってきたので、根幹はポップスなところがあります。

冨岡竜之介(Gt,Vo):僕はL’Arc-en-Cielが一番好きで。90年代のJ-POPやJ-ROCK、ラルクとかJUDY AND MARY辺りを高校生の時にずっと聴いてました。BUMP OF CHICKENとかも好きなんですけど、基本的に時代ごとのJ-POPトップチャートに入ってるようなものをずっと聴いてたので、ジャンルは違っても大事にしてる根幹は一緒なのかな。

アサダ(Gt):僕はギターを始めたての高校生の頃にずっとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのコピバンをやってました。あとはサカナクションとか好き。

でぐち(Dr):大学の軽音楽部で、冨岡が僕の3つ上の先輩で。コピバンも2、3回ぐらい一緒にやってました。My Hair is Badやthe pillowsのコピーをしてる時に、すごい良い歌声だなと思ってたんですよ。

冨岡竜之介(Gt/Vo):照れる(笑)。

でぐち(Dr):それで、彼が4回生の時の追いコン(追い出しコンパ)の時に、「バンドを一緒にやってみいひんか?」って誘われて、即決しましたね。ぜひ挑戦してみたいっていう気持ちが強くて。

冨岡竜之介(Gt/Vo):当時、ウチのバンドのドラムはサポートだったので、軽音部に入ってくる後輩はみんなメンバーとして誘えるかどうかという目で見てたんですよ。実際に声をかけたのは追いコンですけど、その前の何回かのコピバンの頃から、もう誘う前提で見てました。

でぐち(Dr):全然気付かんかった。

冨岡竜之介(Gt/Vo):コロナ禍以降、地元・神戸の太陽と虎っていうライブハウスで、アサダが以前やっていたofuloverとよく対バンしてて。「ギター上手いよな」っていう話をずっとしてたんです。で、僕とでぐちがどっちも11月生まれだから、各メンバーが主体となってコピバンをやる生誕イベントを開催したんですよ。その時に、最近よく会うからっていう理由でアサダくんをメンバーに誘ったのがきっかけでした。

でぐち(Dr):そうですね。打ち上げで喋っててもすごい波長が合うし、なんかよくツーショット撮ってるな、みたいな。

アサダ(Gt):……よく会うバンド。

でぐち(Dr):全然印象に残ってない(笑)。

アサダ(Gt):基本、僕は打ち上げっていう場に馴染めないんですけど、そんな僕にでぐちが構ってくれるっていうイメージでした。

冨岡竜之介(Gt/Vo):いくつか思い浮かぶんですけど、一番大きいのは2023年の『COMING KOBE』に出演したことですかね。地元のフェスで、バンドを始めた時からこれだけは達成しようってメンバー共通で掲げていたので。そこから色々と大きいライブが決まったり、それこそ打ち上げでofuloverと仲良くなったりもしたので。

冨岡竜之介(Gt/Vo):活動に対する意識も大きく変わって、前のメンバーが脱退するきっかけになったりもしたんですけど、やっぱりここがターニングポイントかなって。

研究の末に生まれたバイラルヒット曲「熱り」

冨岡竜之介(Gt/Vo):結構変わったかもしれない。

でぐち(Dr):変わってるな。

冨岡竜之介(Gt/Vo):ジャンルもガラッと変えて、歌ものに寄せていってる感じ。そもそも3ピースから(サポート含む)4ピースになっているので。

冨岡竜之介(Gt/Vo):新体制が始まるまで活動休止してた期間があって、その間にSNSを頑張って復活までに少しでも認知してもらおうと思ったら、ラブソングが自ずと増えていったというか。ライブで勝負するための熱量がSNSでは出せないので、そこで色んな人に聴いてもらうために、メロディの良さにフォーカスしていきました。

冨岡竜之介(Gt/Vo):再始動の日に一番「ザ・月と徒花」みたいな曲を出そうっていうのが「熱り」で。でも、リリース直後はあんま伸びんかった。

冨岡竜之介(Gt/Vo):伸びたのは今年の2月末くらいでしたね。

でぐち(Dr):はじめにインスタのリールが伸び始めて、「これはもしかしたら来るかもしれない」っていう流れを感じました。それからどういう風に動いていこうか考えるようにしたら、思ってた以上に数字が良くなっていって。

冨岡竜之介(Gt/Vo):毎日TikTokとインスタの再生数をめっちゃチェックしてた(笑)。

でぐち(Dr):歌詞のテロップの大きさはどうしたら再生数に繋がるんだろうとか。クリエイター目線すぎますけど。

冨岡竜之介(Gt/Vo):プレッシャーはあまりなかったですね。結構、苦節というか……結成して以来、楽曲が伸びるっていう経験がなかったので、ようやく芽が出たっていう。なんとかしてこれを絶やさないように、っていう思いだけがありましたね。

冨岡竜之介(Gt/Vo):僕だけ、上京してから既に一年くらいたってるんですよ。

でぐち(Dr):先に上京したから。

冨岡竜之介(Gt/Vo):再始動のタイミングで、本腰を入れて上京したいっていう話をしてて。で、アサダも東京に来た直後にSNSで火がついたから、良いタイミングやった。

冨岡竜之介(Gt/Vo):背水の陣ですね。地元だったら猫背のネイビーセゾンが圧倒的に一位で、その後ろで二位争いをしてるみたいな感じやったんで、ここでやってもどうにもならんな、みたいな。先ほど話した『カミコベ』(『COMING KOBE』)に出たり、大阪のBIGCATで自主企画をしたり、外側は精力的に活動してるように見えるけど、中身が伴ってなかったりとか。

冨岡竜之介(Gt/Vo):スキルもやし、実際に入ってる人の数も。

冨岡竜之介(Gt/Vo):そうですね。試行錯誤したけど、「これだ!」みたいなものを見つけられてない状態だったんで。年齢的にも、すぐに勝負できるところに身を置きたいなっていう。アサダの加入に際しても、「上京しようと思ってるし、今までの月と徒花像とは違うものをやろうと思ってるけど、入ってくれへんか」って話しました。

アサダ(Gt):全然、「あ、いいっすよ」って。

一同:(笑)。

アサダ(Gt):冨岡さん、めっちゃやる気あるんですよ。それは信用できますね。スタジオに遅れることがないし。こんなちゃんとした人間がいるんだ、ってくらい。

冨岡竜之介(Gt/Vo):アサダは遅刻多いけどな……(笑)。

冨岡竜之介(Gt/Vo):メンバー二人の人生を巻き込んでるんで、やらなあかんなっていう気持ちにはなりますね。あとは、SNSでの反響があったタイミングで、色んな人に相談できたんですよ。バンドマンに「今こういう感じなんですよ」って話したら「じゃあこういうイベントをやったらいいんじゃない?」ってトントン話が進んでいくのは、東京ならではやなと思います。

「カラオケで歌われたら『もしかして?』ってなる曲」

冨岡竜之介(Gt/Vo):僕がメロと歌詞のストックを作ってて、毎週日曜日にワンコーラスを「今週の曲です」みたいな感じで送るっていうのを、2、3年ぐらい続けてて。

でぐち(Dr):その中で良さそうなものを、宅録ができる僕が完成に持っていきます。アレンジは大体僕がメインで考えて、みんなからOKが出るまで何回も作り直したり、一緒に集まってレコーディングをしたりして。

でぐち(Dr):バンドでやってますけど、シンセやピアノの音は逆に積極的に入れたいっていうのがあって。ピアノの編曲やシンセの音作りを勉強して、バンド以外のサウンドを表現できるようにしています。

でぐち(Dr):確かに。DTMを始めたのはバンドに入ってからなんですけど、パソコンとかが大好きなので、どんどんハマっていった感じです。

アサダ(Gt):まったくこだわってなくて。

冨岡竜之介(Gt/Vo):あんまりインタビューでそんなこと言わん方がいい(笑)。

アサダ:「もっとこっちの方がいいよ」「こうしたら聴いてくれる人が増えるんだよ」っていう意見に全部沿います。みんながやりやすい僕でいたい。

でぐち(Dr):大事やもんな、それは。

冨岡竜之介(Gt/Vo):なるべくシンプルなワードにすること。あとは、自分の中のまだ言語化されてない感情をなるべく言語化して、同じ経験をしたことがない人にも通じるような「あるある」を書くようにしていますね。

冨岡竜之介(Gt/Vo):そうですね。エピソードはフィクションが多くて、だけど根幹の感情は自分の中のもの、みたいな。物語の主人公と自分で重なる部分が絶対にどこかにはある。

冨岡竜之介(Gt/Vo):それはありますね。J-POPって、明日にはもう古くなってるくらいの方がいいと思ってて。

冨岡竜之介(Gt/Vo):たとえば「ポケベルが〜」っていう歌詞が「スマホが〜」になっていくような変遷がある方がいい。メロディが普遍的な分、歌詞はなるべく今っぽくしたい。「TikTok」とかも使いたいくらいですね。

冨岡竜之介(Gt/Vo):これもめちゃくちゃ作り溜めていた中の一曲で、なんやったらちょっと忘れかけてたような曲なんですけど……「熱り」が伸びたから、それを聴いた人が次に期待するような曲を作ろうっていうことで、メンバーみんなで集まった時に選びました。Aメロからピンと来る感じやったし、サビをめっちゃストレートに書いてたんで、この曲かな、みたいな。

冨岡竜之介(Gt/Vo):書き始めた時から、サビをめっちゃシンプルにして、「好き」っていう感情だけにフォーカスしようとしていました。色々な表現ができる中で「好き」って3回言う人って意外とおらへんし。思ってるけど言えない感情を伝えようと。

冨岡竜之介(Gt/Vo):ありますね。惹きつけられるようなワードを散りばめながら歌詞を書くので、そこは狙いつつ。あとこの曲は、気になる人にカラオケで歌われたら「もしかして?」ってなる、っていうシーンを意識してて。インスタのノートに乗っけてたら思わず気になっちゃうとか、そういう曲を作りたかった。

でぐち(Dr):さっきアサダが言ってたことと重複するんですけど、自分だけが良いと思うようなアレンジのこだわりはもう捨ててますね。やっぱりポップに、聴きやすくするにはどうしたらいいか、歌のメロディが引き立つアレンジにするにはどうしたらいいかに焦点を絞ってます。

アサダ(Gt):曲の雰囲気を邪魔しないことだけを考えてました。

でぐち(Dr):もしアサダがめちゃくちゃこだわり強かったら、俺とぶつかってたかもしれない。

「知ってる」を「好き」に変えていく夏に

冨岡竜之介(Gt/Vo):「熱り」が伸びてから、いわゆる邦ロックというか、僕たちがやってきた客層の外のリスナーが増えてきて。「ライブに行ったことないです」っていう中高生だったり、逆にもっと上の世代の年齢の人も聴いてくれるようになったんです。で、僕らは9月に自主企画をやるんですけど、そこにたくさん来てもらうために、まずはきっかけを自分たちで作らんとダメだなと思って。

冨岡竜之介(Gt/Vo):中高生でまだバイトができなかったり、チケット代のハードルが高かったり、「対バン」っていうものが何かわからなかったり。そういう、普段ライブハウスに行かない人にもアプローチしたいということで、きっかけ作りの日として挑戦することにしました。

冨岡竜之介(Gt/Vo):僕らが知られるきっかけになった曲にバラードが多いし、他のバンドにあまりできないことをやりたくて。あと、二部あるとどうしても曲の偏りがあるし、どっちも見に来た人が飽きちゃうじゃないですか。それに、「私はこの曲を聴きに来たのに!」みたいなことも避けたくて。僕はライブでもアコギを弾くことがありますし、路上ライブもやってるから、どちらでも盛り上げられると思ったんですよ。

冨岡竜之介(Gt/Vo):月と徒花が本当に東京で勝負していくんだっていうのを示す日にしたくて。「熱り」がまだ広がってなかった去年の12月ごろ、ライブ本数も月1、2本くらいであまり活動できてなかった時期だったので、結構周りに反対されたんですよ。だけど企画をやらんとバンドが進まない気がしました。ここに月と徒花あり、みたいなイベントをやりましょうってことで。出演者はまだ発表されてないんですけど、想定よりも豪華なラインナップになったし、絶対にソールドアウトさせようっていう意気込みで臨みます。

でぐち(Dr):自主企画をやるって決めてから自分たちの熱量が変わったと思いますし、そこから流れがどんどん良くなってきてるという実感もあるので、大成功させたいです。

冨岡竜之介(Gt/Vo):来年が結成10周年になるので、気合いを入れた活動を展開していきたいですね。そのためにも、今年は無料ワンマンや自主企画はもちろん、色んなイベントに出演して、曲を知った人がバンドを好きになるためのきっかけ作りの一年にして。来年、勝負を賭けたいと思います。

でぐち(Dr):僕は「熱り」がこれだけたくさん届いていることがすごく嬉しくて。もっと多くの人にとって月と徒花の曲が身近な音楽になったらいいなと思いますし、誰に聞いても「月と徒花、知ってる!」ってくらい広がるのが夢です。

でぐち(Dr):お茶の間、絶対に目指します。

冨岡竜之介(Gt/Vo):僕も、メジャーデビューしたいですね。それはずっとずっと目標なんで。

アサダ(Gt):僕は……アフリカツアーとか。

でぐち(Dr):なんで(笑)。どこから出てきたん。

冨岡竜之介(Gt/Vo):何で回るん(笑)?

アサダ(Gt):売れすぎてアフリカでもお茶の間レベルになりたいです。

告知

月と徒花 pre. チケット無料ライブ

『MADE IN YOU』開催

日程:2026年7月27日 (月)

会場:下北沢MOSAiC

チケット:無料 (各部+1drink代700円) 

livepocket.jp/e/laetl

1部Acoustic

OPEN / START 16:30 / 17:00

2部Band

OPEN / START 19:30 / 20:00

月と徒花 自主企画

「青春は鳴り止まない vol.2」

日程:2026年9月6日(日)

会場:下北沢MOSAiC

チケット:livepocket.jp/e/isjyo

act

月と徒花

606号室 

PURPLE BUBBLE

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