エレキギターを選ぶとき、まず候補としてあがりやすいのがフェンダー社の伝統的モデル「ストラトキャスター(Stratocaster)」です。
本コラムでは、ストラトキャスターの特徴やどんなジャンルで使われるのか、そして似た存在であるテレキャスターとの違いにも触れつつ、初心者がストラトキャスタータイプを選ぶメリットを3つの観点で解説します
最後には初心者でも購入しやすいおすすめメーカーもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ストラトキャスターはどんなギター?
ストラトキャスターの特徴・使用されるジャンル
ストラトキャスターは、フェンダー社が1954年に正式リリースしたソリッドボディ・エレキギターです。
それまで存在していたテレキャスターをさらに進化させたモデルとして誕生し、近代的なルックスや複数のピックアップ搭載など革新的な設計が多くのギタリストを魅了してきました。
ボディシェイプ
大きくえぐれたダブルカッタウェイと、ボディの裏側に施されたコンター加工(曲線的なくびれ)が特徴的。
これにより、左手ハイポジションでの演奏や右腕の当たりがとても快適になっています。
ピックアップ構成
ストラトキャスターの代表的な仕様はシングルコイルを3基搭載した「S-S-S」レイアウトです。
5wayスイッチでピックアップを切り替えでき、センターとブリッジ、またはセンターとネックの“ハーフトーン”と呼ばれる独特のサウンドも生み出せます。
ガラスのように透き通ったクリーントーンから、勢いのあるカッティングまで幅広い表現が可能です。
使用される主なジャンル
ストラトキャスターは、主に以下のような幅広いジャンルで使用されています。
■ブルース:トーンノブの操作とシングルコイル特有の粘りあるサスティンが相性良く、ブルージーな表現が得意です。
■ファンク/R&B:ハーフトーンのシャキッとしたカッティングは、ファンクやR&Bでも欠かせない要素。
■ジャズ/フュージョン:太めの音色や柔らかい音色が必要なときは、フロントピックアップを使いこなすことでしっとりとしたジャズ系サウンドも狙えます。
テレキャスターとの違い
ストラトキャスター以前に生まれたテレキャスターは、同じフェンダー社を代表するソリッドボディ・ギターです。
両者は一見すると似た部分もありますが、明確な違いがいくつか存在します。
ピックアップ数
■テレキャスター:基本はシングルコイル×2基
■ストラトキャスター:シングルコイル×3基(標準的なS-S-S)
→ この差によって、ストラトキャスターの方がピックアップの組み合わせが多彩で、より幅広い音作りができます。
ボディシェイプ・コンター加工
■テレキャスター:ほぼフラットな板状のボディにシングルカッタウェイ風の角ばった形状
■ストラトキャスター:ダブルカッタウェイとコンター加工(体に沿う曲線加工)
→ ストラトは「人間工学的なデザイン」ともいわれ、抱えたときに体が当たる部分が比較的楽にフィットします。
トレモロユニットの有無
■テレキャスター:多くの場合、固定ブリッジ(ブリッジを動かさない構造)
■ストラトキャスター:シンクロナイズド・トレモロが標準搭載で、アームバーを使ってビブラート効果を出せます。
これらの違いにより、ストラトキャスターはよりモダンで汎用性の高い演奏スタイルを提供してくれます。
もちろんテレキャスターにも魅力は多くありますが、初心者が“どんなジャンルでも対応できるギター”を探しているなら、ストラトキャスターの幅広いサウンドバリエーションは大きなアドバンテージとなるでしょう。
ストラトキャスターが初心者におすすめな理由
それでは、本題の「ストラトキャスターが初心者におすすめな理由」を3つの視点から解説します。
ギター選びで迷っている方、楽器屋さんでストラトキャスターを見て「どこがいいんだろう?」と思われる方の参考になれば幸いです。
幅広いジャンルで活躍する
ストラトキャスターを象徴するのは、3基のシングルコイルピックアップと5ウェイのピックアップセレクターによる、多彩なサウンドバリエーションです。
クリーントーンでのアルペジオやカッティング、歪みをかけたパワフルなリフ、ソロ時には甘く伸びのあるメロディライン—こうしたすべてを1本のギターで対応できるのは、初心者にとって非常に心強いメリットと言えます。
■ポップス/J-POP:クランチ~クリーンの明るい音色がメインになりやすいジャンルでは、ストラトのキラキラ感が映えます。
■ブルース/ジャズ:フロントピックアップを使えば、意外なほどウォームで深みある音が得られ、ブルージーな表現にも問題なし。
練習する曲のジャンルがまだ定まっていない初心者こそ、汎用性の高いギターを選んでおくと後々まで使い回せて便利です。
幅広い音に対応できるストラトキャスターは、まさにうってつけだと言えるでしょう。
軽量なため扱いやすい
ストラトキャスターは一般に、同じエレキギターの中でも比較的軽量な部類に入ります。
もちろん木材や個体差によって数百グラムの差は出ますが、レスポールのような厚みあるマホガニーボディを使用するギターと比べると、総重量で1kg近く軽い場合も珍しくありません。
長時間の演奏や練習では、1~2kgほどの差が大きく影響します。
特に初心者の場合、慣れないストラップで立ったまま弾くと肩や腰が痛くなりやすいもの。
軽量なストラトであれば、疲れにくく演奏に集中しやすいです。
■持ち運びのしやすさ
スタジオや学校にギターを持ち運ぶ際も、やや軽めの重量は大きなメリットです。
初心者時代はとくに移動の機会が多いこともあるため、軽くてストレスが少ないギターは助かります。
人間が最も弾きやすい形
先ほどテレキャスターとの違いでも触れましたが、ストラトキャスターのボディにはコンター加工と呼ばれる人体にフィットする曲面加工が施されています。
右腕をボディトップに当てたとき、手前側がえぐれていることで肘が角に当たりにくくなり、体にフィットする構造になっています。
■ボディバックの曲線(バックコンター)
体側に当たる裏側も湾曲しており、身体への負担を和らげてくれます。
この「人間工学的デザイン」が、初心者が練習をするときに構えやすく長時間弾いても疲れにくいという大きな利点をもたらしているのです。
また、テレキャスターと比べてダブルカッタウェイになっているため、高音域にアクセスしやすいという点も見逃せません。
初心者であっても、ハイポジションでソロを弾くといったシチュエーションが出てきたときに、ストラトのありがたみを感じるはずです。
おすすめのメーカー5選
次はストラトキャスタータイプを展開しているおすすめのメーカー・ブランドを、初心者でも選びやすい視点から紹介します。
定番のフェンダーだけでなく、手ごろな価格帯や独自のアレンジを盛り込んだモデルも含めてチェックしてみましょう。
Fender(フェンダー)
本家本元のフェンダー社製。USA、メキシコ、そして近年は日本製(Made in Japan)など多彩なラインナップを持ち、初心者でも手に取りやすい「Player Series」(メキシコ製)なども人気。
王道のトーンと外観を求めるなら、まずフェンダー製のストラトキャスターを検討するのがベストです。
Squier(スクワイヤー)
フェンダー傘下のエントリーブランドとして有名。比較的安価でありながらもストラトキャスターの基本構造をしっかり押さえたモデルを多数リリースしています。
初心者セットとして、アンプやケーブル付きのパッケージも多く販売されており、予算が限られている方には特におすすめ。
Fender Japan Exclusive / Made in Japan Series
かつてのフェンダー・ジャパンが展開していた「Japan Exclusive」が、現在は「Made in Japan」シリーズとして継続中です。
国内生産のため、造りが丁寧で品質が安定しているのが魅力です。USA製より多少安価なラインナップもあり、中級者~上級者にも支持されるモデルが多数展開されていることが特徴的です。
Yamaha(ヤマハ)
パシフィカ(Pacifica)シリーズなどで、ストラト風のボディシェイプを持つギターを展開。H-S-S配列(リアピックアップがハムバッカー)など、初心者にとって使い勝手の良い工夫がなされています。
国内メーカーの強みとして、コストパフォーマンスが高く、初期不良も少ないことで定評があります。
Ibanez(アイバニーズ)
いわゆる“スーパーストラト”と呼ばれる形状を数多く製造。フェンダーのストラトをベースに、フロイドローズ型トレモロやハイパワーピックアップなどモダンな要素を取り入れたラインが充実しています。
アグレッシブなロックやメタル志向でも、軽くて弾きやすいモデルが多い点が魅力。
まとめ
ストラトキャスターはエレキギターの歴史を変えた大定番モデルですが、その魅力は単に「昔からあるギターだから」だけではありません。
3基のシングルコイルによるバリエーション豊かなサウンド、軽量かつ体にフィットするボディ形状、そして幅広いジャンルをカバーできる汎用性が、初心者にもおすすめしやすい大きな理由となっています。
■クリーンから歪みまで、ポップス・ロック・ブルースなど何でもこなせる
■初心者セットやミドルクラスまで多彩な価格帯があるため、予算や好みに合わせて選択可能
ストラトキャスターは、世界中の名プレイヤーが愛用してきた伝統的モデルでありながら、今なお新しい音楽を切り開くポテンシャルを秘めています。
エレキギター初心者であっても、その素晴らしい歴史と機能性をじっくり楽しみながら、ぜひ音楽の扉を開いてみてくださいね。